「今回の報告書です」 「ご苦労だった。して、様子は?」 「特に変化は。・・・あぁ、けど肉が喰いたいとは言ってましたね」 「どう思う?我々の脅威になりえるか?」 「脅威にはならないでしょうよ。あの力がなければこの館にいる獄卒になんて勝てませんよ」 「ならばいい。なるべく手懐けろ。万が一、脅威となるのならば―――・・・牢獄に閉じ込めろ」 「はい」 ** ここの館には食堂がある。天海を喰ってから、肉が食べたくて仕方ない。食堂で朝と昼のご飯を作っている半人半蛇のキリカさんに頼んで作ってくれた牛丼。ご飯の上に乗っている肉を食べる。 望んでいる肉とは違う味。けれど、美味しかった。 田噛が言うには天海はあの異界にあった建物内の怪異を喰らっていたのだそうだ。喰らい粗食しその力を吸収していた。もともと狂っていたが、怪異を吸収したことにより更に狂い化け物となった。金吾はくわれてしまった。 結果としては私が食べたわけだが、怪異も共に食べたせいか妙にそわそわしてる。不眠で一日過ごしたようなそんな感じ。 「あれぇ、君・・・」 あまり他人に合わないように時間をずらして食堂に来てた私だったが一人の獄卒がやってきた。緑色の目で穏やかな顔の獄卒だった。そんな彼の手には一升瓶。 「こんな時間にごはんー?さみしくないの?」 そうやって近づいてくる獄卒からはお酒のにおい。顔に変化は見られないが完全な酔っ払いだった。酔っ払いはめんどくさい。それが前の世界で学んだこと。私はそっけない態度で返事を返した。 「別に」 「あー、なぁにそれ?おれつかさちゃんにそっけなくされてさみしい」 「そうですか。お仕事はいいんですか?」 「いーのいーの、おれ今日おやすみー、へへへ」 隣の席に座り始めた。一升瓶が彼の口に行きそのままゴクゴクと飲んだ。ダン!と一升瓶が机に置かれる。 私は最後にとっておいた肉と少ないご飯粒を口にかきこみ完食。水で無理やり飲みこんで片づけを始めた。酔っ払いと付き合うのはめんどくさい。見た感じ絡み酒するタイプのようなのですぐにおいとましよう。椅子から立ち上がり、そこを離れようとした私の袖をつかんだ。 「つきあってよー」 「・・・遠慮します」 「どうしてだい?そんなにおれ達、信用ならない?」 「・・・何故?」 「だって避けてる。わざわざ食事の時間をずらしてるのはどうして?雑用こなしてくれるけど気配感じたらそそくさと去るのはなんで?」 「たまたまでしょう」 「たまたま?今もこうして去ろうとしてひきとめたおれを見ようともしないのもたまたまかい?」 「・・・」 どんなに引っ張っても離してくれない手。それは、私がそれに対する答えを口にしない限りきっと話してはくれないんだろう。 「・・・信用は、してませんよ。だって、貴方たちも信用してはいないでしょう。こんな得体のしれない物を信用したって得なんて何一つない。現にあなたたちの監視という仕事が増えただけで得なんてしてない。・・・回答をいただき、満足しましたか?いい加減袖をはなしてください」 「うーん・・・やだ」 「!ちょっ、まっ!!」 袖を引かれる。やはり力が強く逃げられない。 私はそのまま引っ張られ脇腹をつかまれた。そして何をするか理解した瞬間高く持ち上げられた。視界が一気に広がり食堂全体が見える。下では緑の目の獄卒が楽しそうに笑っていた。 「思い込みは視野を狭めるよ?誰も監視なんてしてないし、得体のしれない物でもない。それに!おれから見たらつかさちゃん、小さい子供みたいなもんだもんー」 「離してっ、高いっ高い!おろしてこの、酔っ払い!」 「背もちっちゃいし、歳もおれ達からしてみたらまだまだ子供!肋角さんは世話好きだから君をここに置いてるんだよ?契約なんて関係ないよ!それに、おれも独りで頑張ってるつかさちゃん助けてあげたくなるし」 高くあげられた体がおろされた。しかし手離されることなく宙にぶら下がったまま。足は床につかない。目の前にはにっこりとほほ笑む男。 「ねえ、情事以外ならなんでもしてくれるんでしょ?一緒にお酒飲もう!それで信用できるように質問しあおう!」 「誰が、お前なんかと・・・っ」 「おれ、木舌ね。一緒に飲んでくれないならしつこく君に話しかけちゃうよー?」 「〜〜〜・・・これ、っきりだからね!」 「ふふふ、やったね!」 「よくない」 そこから木舌の部屋に行くことになって、酒を飲む羽目になってしかも凄い度数の高い酒でいつのまにか口がくるくるとまわっていてついでに視界もまわっていて暗くなってしまった。 佐疫の怒鳴り声にはっと目を開ければ、酒だらけの中で肌蹴て寝ていた。 扉の前で木舌が正座して怒っている佐疫に頭を深々と何度も下げていた。 「・・・・・・・・・なんで酒のんでたんだっけ」 わからん。そう重い頭を起こしてぼけっと見ていたら今度は私が佐疫に怒られてしまった。 ぼけーとした頭では彼の言葉もあまりはいってこない。 とりあえず木舌と同じように正座して深々と頭をさげておいた。 [*前] | [次#] |