あれから一週間たった。 最初の内は、そのうちなれるかなーって思って過ごしていたけどとんでもなかった。そう、とんでもなかったよ。思っていた以上に水咽の事が好きだったみたいでさ。 いつも顔を合わせて手を握ったり抱き付いてみたり、表情が固い水咽のわずかな変化が楽しくて面白くてちょっとだけ見える照れが好きで構いすぎて逆に構われてるんじゃないかってほど。 いや。 今、心の中で宣言する。 「俺の方が構ってチャンだった!」 「全部吐き出てんだよでくの坊!」 「ほぐうっ!」 食堂のテーブルを叩いて椅子から立ち上がり、高らかに叫んでしまった俺を背後を歩いていた田噛に背中をぶん殴られた。いたい。ひどいなあ。 ジンジンする背中をさすりながら着席しなおす。 前方の椅子に座っていた佐疫が苦笑しながら、平腹の隣に座った田噛に言葉を投げる。 「田噛、少しは優しくしてあげてよ。重症患者なんだから」 それに見下すように嗤う田噛。隣では手が止まることなく平腹が飯を食べている。 「水咽大好きすぎて構ってチャン症候群か?はっ、きもちわりーんだよ」 その言葉にうなずいたのは佐疫の隣に座る斬島。 「気持ちが悪いのは今に始まったことじゃあないな」 「そうだな」 真面目で嘘がつけない奴だけど、今だけは俺の敵だ。せめて気持ち悪いぐらいは否定してほしかった! そして隣でさして興味なさそうに返事を返す谷裂。 「みんなして酷いなあ・・・。はあ、水咽はやく帰ってこないかなー」 「おお!水咽だ!!」 「えっ、どこ!?おかえり水咽!!!」 「うっそぉ―――!!!ばーか!!」 「平腹、あとで話があるから裏庭に来いよな!!!」 平腹に騙された俺って、俺って! げらげら笑う平腹に腹が立つ。 そこで静かに食べていた斬島の手が止まり俺を見た。 「そういえば木舌はどうして水咽が好きなんだ?」 その言葉に誰もが俺の方へと視線をむける。笑っていた平腹でさえ興味深々といった様子でこちらをじっと見ていた。 「胸がねーからだろ?」 と田噛。それ、本人が聞いたらだいぶショック受けるよ。 それに実は、意外と並の大きさはあるんだよね、とは口が裂けても言いたくない。俺だけの素敵な秘密にしたい。 「ふぉ?そりゃー木舌ロリコンだからじゃねー?ちいせえの好きだろ?」 「平腹くーん、俺ロリコンじゃない。俺を犯罪者みたいに扱わないでくれる?」 小さいの確かに好きだけど、水咽とは獄卒としての歳はかなり離れてるけど関係ないでしょう。やっぱこいつ本気で裏庭に呼び出そうかな。まじとかいて本当と読むよ。 「ああ、こいついつもセクハラしてるもんな」 「そう思うだろ田噛ー。きっもちわりー」 穴掘りコンビの厳しいお言葉に俺涙滲んできた。 「もういい加減にしなよ二人とも!それで、木舌は水咽のどこが好きなの?」 ううっ、佐疫ってば優しい。 俺は食後の紅茶を一口飲んでから話す。 「水咽ってさ、時々すごい寂しくなるんだ。自分だけの温もりだけじゃあその寂しさを埋められなくて誰か温もりを与えてくれる存在を目で探すんだよ。今は俺のスキンシップのおかげで少なくなってるけどね!」 「スキンシップじゃなくてセクハラだろー!」 「うるさい平腹!」 「自覚はあるのか」 「田噛も喧しい!――んでそれのせいなのか寂しくなると俺を探すんだよね。それがとっても可愛いし、俺を求めてるってのが嬉しいんだ。だからつい悪戯しちゃうしスキンシップとっちゃったりするし知らないふりとかもしちゃうんだよね」 俺を見つけた時の顔は、無表情に近いけれど口が少しだけ緩んでる。水咽なりの無自覚の笑みだって瞬時に理解して、自分だけがそれを視れるんだって考えたら、もう、好きになるでしょう。そんなに求められたら可愛くもなるでしょう。でしょ? 「あれ、感想は?感想はないの?」 俺の言葉に無言になった同僚たち。何か悪いこと言ったかな。おかしいな。 目の前の佐疫と視線があった。 彼はなぜか頑張って固い笑みをこぼしてへえ、そう、と返事をかえしただけだった。 切り替えるように斬島の冷静な声。 「で、木舌は告白しないのか?」 「っえ。あ・・・えっと」 「?」 「あはは・・・恥ずかしいから水咽が告白してくるの、待ってぐふっ!!」 男のくせに情けない、と同僚たちから拳をいただきました。 身も心もいたいよ!!! |