日も沈み、同僚たちも自室に戻っている夜。 女性ということもあり、他の獄卒と部屋の距離がある私の部屋でそわそわとしていた。 時刻はそろそろ日が変わる頃合い。約束の時間まであと少し。頭の中はごちゃごちゃとしていて、木舌が何度も浮かび、あの言葉も浮かび、それが恥ずかしくて何度もクッションに顔を埋めたりもして。 扉をノックする音に、心臓が跳ねた。 「水咽、はいるよ」 「う・・・うん・・・っ」 どこかに隠れたい。そんな風に思いつつも、扉を開けて入ってきた彼の姿に身体は動かなくなる。恥ずかしい。クッションに顔を埋めた。木舌の笑い声が聞こえる。扉が閉められる音。彼が近づいてくる音。彼が隣に座りベッドが軋んだ。髪を撫でられる。熱い。 「はずかしい?」 「・・・・・・うん」 「俺も、はずかしい」 「・・・ほんと?」 「ほんとほんと」 優しく髪を撫でられ気持ちがよくなる。優しい指は私を抱き寄せ、ベッドに転がった。大きな身は私の女の身体をたやすく包み込むことができて、ほら、と胸に押し当てられた。彼の胸から聞こえる鼓動はいつもよりも大きく早い。私と同じだった。 私も腕を彼の背に回す。より密着する。暖かい。 たまにするのに、今日はいつもとは違う。今日は。ただ、抱きしめられるだけで終わらないから、だから私はこんなに緊張して恥ずかしがってそれで・・・今か今かと待っている。 「明日、大丈夫?」 「ん、おやすみです」 「よかった。・・・水咽」 「・・・ん」 耳元で囁く声に顔を上げれば接吻を味わう。角度を変え何度も口づけを交わしていく。次第に舌を交じわらせ激しいものへと。熱い。彼の熱い手が頬を撫でて首筋を下がり衣類に手をかける。前のボタンが外され、衣類はスルリと肩を滑っていく。 外気に触れた肌。まだ、直接触れられたことのない肌へと手が伸びていく。胸へ。膨らみをなぞり優しく触れてくる。大切に。大事にと。 「ん・・・っ」 「水咽・・・俺を好きになってくれて、ありがとう」 「きのした・・・っ、私も、好きになってくれて、ありがとっ・・・」 ブラジャーをずらし、先端に触れる。そこを転がし摘まめば固くなっていく。更に弄れば私の身体はビクリとその甘い刺激に震えた。恐怖は、ない。ただ、好きな人に触れられるということがこんなにも甘くて蕩けるものなんだと再認識する。 「あ・・・っ・・・っ、」 木舌の口が首筋へ。鎖骨へ。胸へ。鳴らす音と感触が柔らかい。くすぐったくて身じろぎをすれば笑ってくる。彼の手が私の秘部をなぞる。羞恥、緊張がまた高まり木舌のシャツを強く握った。 「怖い?」 「・・・、う、ん」 「大丈夫。俺がいるから怖くなんかないよ」 生前の記憶は思い出せないからわからないが、獄卒となってからはこういう行為は初めて。性行為をするのがどういうことかの知識はあっても実際にやったことのない私は、不安に駆られてしまう。 それでも木舌は何度も大丈夫と優しく身を寄せながら、秘部に触れている指をゆっくりと動かしていく。最初は表面をなぞるように。くすぐったさとはまた別の痺れるそれに私自身の息も荒くなっているのがわかる。 何度としていると、彼の指がグッと中に入り込むのがわかった。身に力がこもる。それでも傷つけないようにゆっくりと肉壁を伝い中に埋まっていく感覚に次第に安心感を感じ快感を感じるようになる。 奥へと埋まり、また抜かれていく。それを何度と繰り返すと秘部から濡れる音が聞こえてきて羞恥に目を瞑ってしまう。 「目、つぶらないで水咽」 「けど、」 「俺に、全部見せてよ」 「・・・ん」 そう言われたらしないわけにもいかない。ゆっくりと目を開けて彼を見れば、酷く優しい目でみている。緑の瞳が綺麗だ。それに惚れてベッドに寝ころんでいた手を動かし彼の頬に触れる。首を上げて彼に口付けをすれば彼もそれに答えてくれる。 「―――ぁっ・・・ん、ぁつ」 優しかった指が徐々に激しさを増し快楽の波に身をゆだねるしかできなくなってきた。衣類を脱ぎ捨てた木舌はその筋肉質の身を見せつけてくる。そんな中、激しい動きと幾度とやってくる感電するかのような快感に何も考えられない。なのに熱い口がたくさん落ちてくる。どこか飛んでしまいそうな意識で必死に、木舌に抱き付く。 「きのし、た・・・木舌っ!」 「うん・・・っ」 「ひ、う・・・ぁ、ぁ・・・あ!!」 滲んだ涙がこぼれた。一気に押し寄せてきた波に飲まれ目の前がパチパチと何かが瞬くかのような感覚。すべてが白くなって、下腹部が震える。それが少しの間続くと脱力し木舌にしがみついていた腕もシーツの上に力なく落ちた。 撫でてくる手がきもちい。 「水咽、いれるよ」 「っ・・・ぁ」 思考がまとまらない。それでも木舌の声は気持ちがいい。優しい。熱い。もっと、熱がほしい。秘部にあてられた手と違う熱。私はそれを受け入れる。 中に埋まっていく。 指と違う大きさに、中が大きく拡がっていく苦痛に震える。 「あっ・・・あっ・・・き、のした、ぁ・・・!」 「っだいじょうぶ・・・もう、少し・・・」 「ひ、あ、ぁ・・・!」 木舌が覆いかぶさり私を抱きしめてくる。彼の苦しそうな息。私の圧迫されて苦しむ息が混ざり、私たちの身も、ひとつに。 「いたく、ない?」 「・・・だい、じょうぶ・・・」 「よかった・・・動くよ」 「っ・・・んあっ!」 指とは比にならない身に走る快楽という衝撃に声が漏れる。それでも止まらないゆるい動きはだんだんと早くなっていき、また思考が働かなくなってくる。落ちないように、どこかにいってしまわないように彼にしがみつき、閉じない口から今まで出したことのない甘い嬌声を吐き出す。 揺れる。熱い。気持ちがいい。あ。あ。あ。木舌。熱い。 「水咽・・・、好きだよっ・・・大好きだよっ」 声が気持ちい。甘い砂糖水におぼれている私は、木舌を抱きしめながら私も、と返す。 「わ、たしもっ・・・ひっあ私も!好き・・・っ大好き、大好き!」 「水咽・・・!」 「ぁっ・・・はげしっ・・・!木舌っ・・・木舌っっ・・・・!!」 二度目の波――絶頂。木舌の動きも止まり、奥に埋まったままの熱とそこから吐きだれてる新たな熱。甘い。あつい。木舌の身体も熱い。重なる身体。 薄れていく視界の中で口を重ねて愛の言葉を囁いて――――意識を手放した。 「―――・・・ん」 次目を覚ました時は、日が昇っていた。同じ裸の状態で眠る木舌の姿が隣にいて昨日の情事を思い出し顔が熱くなる。 私が身じろいだ事により彼も目を覚ました。緑色の日が浴びて輝く綺麗な瞳が私を捉える。 微笑む。 「おはよう・・・水咽」 「・・・おはよう」 ドキドキと早くなる胸。やっぱり恥ずかしい。 羞恥で起き上がろうとした私を留まらせ身を寄せてくる彼。 「もう、すこしこのままで・・・」 「・・・ん」 大きい身体は私を簡単にもすっぽりと被い抱きしめることができる。伝わる熱に微睡み目を閉じる。暖かい。こみ上げてくる愛しい気持ち。私は、大好きなのだ。彼が。 「これからも、ずっと・・・よろしくね水咽」 「、うん」 「愛してる」 「私も、愛してる」 これからもずっと。 |