アヘアヘ





ジャラリと首輪付きの鎖をぶら下げてみる。
片腕には手錠をぶら下げてみる。

「肋角さん、首輪と手錠どっちがいいですか!?どっちがいいですかね!?」
「・・・要らん。お前はさっさと任務に行きなさい」

表情一つ変えることなく、書類に目を通す上司のなんという冷たさか!
あたしはフルリと身震いをして生唾を飲み込む。首輪も手錠もいらないって言われたから軍服の胸ポケットからチリンチリンと鈴のついた赤いヒモの首輪を取り出す。

「じゃあじゃあ!こんな可愛らしい首輪なんてどうですか!?このヒモには呪が込められててですね、飼い主の血を一滴にじませると完成なんです!!さあ、肋角さんん!指を拝借!血を!!」
「だから、要らん。いい加減にしないと災藤を呼ぶぞ」
「ぎゃん!さいとーさんは勘弁してください!!」
「なら早く行きなさい」
「はいいい!!!」

災藤さんは怖いのですよ。なぜかって?
というよりあたしはオトナな肋角さんに飼われたいのであって、妖艶な災藤さんに飼われたいわけじゃない。というか一回、飼われそうになって肋角さんに真面目に泣きついた。
監禁とかさ。夜な夜な愛撫とかさ。おいしいけど・・・おしいけど、それは無敵気味に微笑む災藤さんじゃなくて無情に見下ろす肋角さんにやってほしいことなんですよ!わかりますか!?わかりますよね!?わかって!!!!


特務室を飛び出した。
するとちょうど谷裂がいて、任務の前に勧誘をしようと小走りで近づく。あたしに気付いた谷裂が盛大に顔を歪ませた。ひどい。なんて顔をするんだ。

「谷裂谷裂!」
「断る!!!」
「何もいってない!!」

首輪をみせる。手錠をみせる。どうよ、どうよ。

「谷裂もどよ?どーよ?二人で肋角さんに頼み込めば・・・」
「俺にそんな趣味はない!!!」
「意外とはまるかもよ!?」
「はまらんわ!!!」

バキン!と到底女に向けるこぶしの力じゃない衝撃音にぐらぐらと頭の上で星を回す。まあ、ひどい。自虐趣味はあれど、誰彼構わずアヘアヘするほどあたしのプライドは薄っぺらくないのよ!

あたしは!肋角さんだけに!!鞭で叩かれたり、足で踏まれたり、唾を吐かれたり、切り刻まれたり、喰われたり、解剖されたり、犯されたり、孕まされたり、その他もろもろとした事をされたい!肋角さん限定でね!!!

「痛いなあ・・・」
「お前もいい加減肋角さんに迷惑をかけるのはよせ!!」
「迷惑かけてないもん!一回も嫌な顔しないもん!!」
「それはお前が喜ぶからだろうが!!!」

きゃんきゃん。ぎゃんぎゃん。騒ぐあたしたちの空気の中に、混じる気配にハッ!と猫のように目を見開いてその方向をむく。

そこには災藤さんが、内側に棘のついた足枷手枷を見せつける様に手に持ちこっちの様子をうかがっている。あたしと交わった視線はにっこりと笑みを浮かべて――――――あたしはニ”ャァァアア!と威嚇声を上げて逃げる様に任務にでかける。


監禁する気満々だよあの人ぉ!!!
内側に棘のついた枷って・・・あたしを一生身動き取れないようにするための仕組みじゃないっすかあ!!!!

こええええ。



・・・肋角さんなら、喜んでとりつけるのに!



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