あたしはね、我慢がとっても強いの。 同僚達や肋角さん災藤さんはあまりいい顔しないけれどあたしの我慢強さは誇りで一番自分でも凄いって誇らしいって思える事は、この我慢強さがちゃんと役に立ってる事。 みんな無茶するなっていうから。みんなの為に頑張りたいのにそれを取り上げるから。頑張りたいのに。認めてもらいたいのに。みんな、見てくれない。 けど、抹本に頼まれたの。 誰もやりたがらないけれど、とても役に立つ仕事。 肋角さんは渋い顔をしてたけど、獄卒は死なないし何よりもその内容を聞いて、まるであたしのためにあるかのような仕事で。これをこなしていけば、みんなと同じ立ち位置に立てる気がして。 だから、この仕事はあたしの唯一の自慢なの。 プス。 腕に刺さる注射器の針。液体が体内に流し込まれて少しすると異物を察知した身体は力がはいりビクリと震える。 長い息を吐く。はー。はー。そうして目の前でこちらをみている抹本をみる。弱気に下がった蛍光緑がどこか心配そうにけれどそれ以上にこの身に流した”クスリ”の効力がどれほどなのか。失敗なのか。成功なのか。どういう効能となったのか。どれぐらいの威力なのか。それらを知りたくて知りたくて仕方なくて気になっている目。口。 少しすると、血が煮えてるんじゃないかっていう全身に沸き起こる激痛に一瞬呼吸が止まる。唇を噛みしめる口から漏れる震える呼吸は、熱くて吐くたびに吸う度に激痛が体内を侵食していく。 「つかさ・・・どんな感じかな?」 「・・・・・・・・・、体内に大量の針が突き出てくるみたい。呼吸をするのも凄い激痛がっ・・・く、る、っ・・・!」 中身が破裂するんじゃないかという痛みに、声も詰まる。耐えるために服を強く握りしめる。どんどん膨れ上がる痛みに椅子から転げ落ちた。 床にぶつかる衝撃がさらに痛みを。肉を捻じり取られたかのような。はたまた火であぶられてるかのような。 目の奥が痛い。目じりに浮かんできたのは涙じゃなくて血。血が視界を赤くさせポタポタと零れ落ちていく。 「どんな感じ・・・?」 「っ・・・、・・・」 気力を振り絞り口を開けば言葉の代わりに血が器から満杯の水を溢すように溢れる。とまらない。 抹本はそれでも聞いてくる。 どんな感じ? どんなかんじ? どんなかんじ? 口をつりあげて、ほっぺを赤くして、苦しいわけじゃないのに胸を抑えて何度も何度も繰り返し同じ言葉を訊ねてくる抹本に。 口を開いて。 「―――――。」 そこでしんだ。 [*前] | [次#] |