「きりっ・・・し・・・っ」 「なんだ」 「ひ、ふっ・・・ヤダっ」 壁にその華奢な身を押し、逃げられぬ様に両脇に腕を壁に。 そうしてやれば純粋な彼女は身を縮ませ俺を見上げる。彼女は、つかさは知らない。上目遣いでみる、ということが好意を持つ男にとってどれだけ興奮するものなのかを。下から見上げる視線は、男の支配欲を刺激する。 俺はつかさの耳に口を寄せて耳たぶを唇で加える。震えているのが唇越しに伝わり、声は甘い。甘い声も良い。 「やっ・・・ぁ・・・」 「お前はいつもここが弱いな」 「ひっ・・・っ・・・!」 ぐらり、と立っていられなくなったつかさをこの身で支える。壁についていた両腕の一つを彼女の腰に回し支える。そして愛しいつかさの弱点である耳を堪能するのだ。 耳たぶを食み、息をふっと吐き、舌先で舐める。 それらが触れるたびに彼女はまるでそこが性体感のひとつであるかのように震え、跳ね、息を、声を荒く吐き出す。 「つかさ、」 「ひぁ・・・ぁ・・・」 「つかさ」 「やぁ・・・、きり、しまあ・・・っ」 崩れ落ちてしまわないように、強く背中にしがみつくその仕草も、必死に我慢している様も、その身を俺に預けている体勢もすべてが男の支配欲を刺激し、興奮させ、更なる欲を生み出していく。 このまま純粋な彼女を組み敷いてしまおうか。 このまま欲のままに愛しい彼女を染めてしまおうか。 このまま、彼女の心も恥部も処女もすべて、すべて喰らってしまおうか。 純粋を、穢してしまおうか。 「――――・・・つかさ、」 「っは・・・っ」 つかさを抱いたまましゃがみこむ。耳をいじるのをやめれば彼女の荒い息だけが聞こえる。続いた刺激に疲れたつかさはそのまま俺に身を預けたままで生理的にきた涙がぽろぽろとこぼれ肩の部分に染み込む。 「大丈夫か、つかさ」 「・・・っ・・・」 声をかけても、意識が曖昧としているらしく返事はない。 このままきっと眠ってしまうのだろう。 つかさを抱き上げる。 「・・・」 つかさを抱く事はやろうと思えばできる。それをしないのは、本当に愛しているからなのと。つかさが純粋なのにこんなにも敏感だからだ。快楽も強すぎれば毒になる。 一度、事をはこぼうとしてあまりの敏感さにつかさは呼吸困難になったことがあった。前戯でそれなのだから本番になれば死んでしまうだろう。死んでも生き返りはするが、あいにく死体を犯す趣味などなく、快楽に溺れた表情から一変して苦痛の表情になる顔を見るのは嫌なのだ。 ――その時から、少しずつ、少しずつ、慣らしてきた。 、のだが。 まだまだ先らしい。 「・・・惚れた弱み、というのは厄介なものだな」 長く長くじらしてくる彼女の頬を撫でて触れるだけを口づけをそっと落とし、彼女の部屋へと足を進める。 愛しい者の温もりをしっかりと感じながら。 [*前] | [次#] |