男主の友情までにはいかない話 「お客さんが来てくれるのは嬉しいかぎりだけど、やっぱり料理を三人でやりくりするのは疲れるなぁ…」 「ウェイターの中から抜粋すればいいんじゃないの?」 「そうなんだけど…時間がね…」 「君の所は最初のジムだけあってバトルマネーが入りやすいんだから、資料を渡して材料費を出して個人練習やらせればいいよ。」 「…大丈夫かな?」 「大丈夫だよ」 ――――デントの隣で野性のマメパトにパン屑をあげているつかさとは相談仲だけれども、彼は突然現れて話を終えると帰って行く。 そんなまるで幻のような人物だった。 「コーンとポッドにその案を話してみるよ。」 「うん」 「いつも相談事聞いてくれて助かるよ」 「どういたしまして」 柔らかい表情を浮かべながらパン屑を食べるマメパトを眺めるつかさ。 そんなつかさを自然と眺めてしまうデント。 数少ない会話、共にいる時間が短い中。それでもデントはそれで満足していたし、つかさも見た目からして満足している様子だった。 だからだったかもしれない。その優しい雰囲気に甘えて口を開いたのは。 「―――――…つかさは何か悩みはないのかい?」 パン屑を放り投げようとしていたつかさの手が止まった。 んー、と首を傾げてしばらく唸ったつかさは控えめに笑って手持ちのパンを放る。 数匹のマメパトが集まってパンをつついていく。 「あるけど………どうしようもない事だから」 「どうしようも…ないことって…?」 「どうしようもないことってこと」 手持ちのパンがなくなると手に付いたものを払い落として立ち上がった。 それに驚き警戒心を浮かび上がらせたマメパト達は小さな翼をひろげて逃げていった。 「じゃあ、ね」 「…………うん、さようなら」 つかさはいつもと同じ微笑を、寂しさをちらつかせる瞳を向けて昼の人混みに紛れて行ってしまう。 ―――――…きっと彼とはもう会えないだろう。 その証拠もなにもない確信だけが強くデントの心の中に残る。 彼の心を、悩みを知らないままでいればこの先 まだ会えていたのだろうか。 すでに温もりを亡くした現在にそれを知る権利はなかった―――… 踏み込めない街並 [*前] | [次#] |