まず一言。 「暑いよ幸村の馬鹿!!」 「ふぐっ!?」 九月にはいり残暑の熱に悩まされる日々。八月もそうとう暑かったけれども残暑のこの日の日差し、暑さもかなりのものだ。だから私は午後の授業中、隣席の幸村へと平手打ちをかました。私以上に汗をかいている彼の頬に当たった。 ビチリってなんか滑った。 え?なに?魚の表面のような濡れた感触なんだけど?どんだけ汗かいてるのお隣さん。いやだ、手の甲が幸村の汗で濡れてるんだけど。 「幸村、サイアク」 「ぐ・・・突然、頬を叩いておいて何を言うのだつかさ殿」 「ウッサイなー。いや、こっち見ないで、暑苦しい。その汗だらだらの顔を向けないで今度は拳で殴りたい、やっぱ殴りたくない!」 「いったい殴りたいのか殴りたくないのかどちらなのだ・・・」 汗だらだらと私に言われて、彼自身もそれを理解しているらしく肩に乗せていた赤いフェイスタオルで今にもこぼれ落ちそうな汗を拭き取った。あ、少しすっきりした顔してる、なんてちょっと横目で見てたり。 「ああああー・・・、なんでこの学校には教室に冷房が設置されないの?ねえ、なんで?なんでなん?教えてーおじいーさんー」 「某に言われても困るでござる・・・。そしておじいさんではない」 「だってさー、おかしくない?こんなに暑いのに冷房どころか扇風機の設置もしてくれないってどんだけケチな学校なのよ。ケチすぎるよ!ケチケチケチケチ、幸村のケチ暑苦しいんだよ!」 「某、関係ないでござる・・・」 いつのまにかまた汗だくだくとなっている幸村。こいつみてると本当に暑苦しくて暑苦しくて・・・。冬だったら暖か、くなかったわ、こいつ冬だと逆に半袖で寒いわ。体温おかしいよね幸村。血圧たかいの?それとも実は体内に暖房埋め込んでるの?温暖化?なんなの?コイツ、なんなの? 「・・・・・・つかさ殿、口に出ているでござる」 もう一度タオルで汗を拭き取りながらも、暑さに制御の効かない私を半ば呆れた表情で見てくる幸村。そこで無視しないで構ってくれるのは幸村のいいところだ。 暑苦しいけど。 「・・・そんなことよりも、黒板の文字が消されていくのだが、ノートに記入しなくてよいのか?」 「暑くて、もう、いい、めんどい」 シャーペンを握る手も汗で滲んでいてそれが気持ち悪くて書く気が起きない。どうせ、猿飛のノートを写せばいいことだし。あいつ、チャラチャラしてるくせに授業だけは真面目に受けてるからなあ。 チラリと斜め後ろの席の猿飛を見れば、何故か口元を痙攣させたすんばらしい笑顔でこっちを見てた。アレ?バレた?? 「思ってる事が口にでていれば嫌でも理解してしまうぞ、つかさ殿・・・」 「これも幸村の陰謀だ・・・。猿飛こっちみんな、向こうむけ」 「もう一度言うが、某には関係のない事ゆえに責任をなすりつけないでくだされ・・・」 幸村の溜息に、更にやる気をなくした。 幸村って私となんだかんだで話してくれて嬉しいんだけど、溜息聞くと一気に萎える。イラつきはしないんだけどなあ。なんか、こう、しょぼーん的な? 暑さでやられていたテンションが落ち着いて、片倉先生の声が子守唄に聞こえてきた。誘うように熱気よりも涼しい秋風がそよそよと吹き始めてきて気持ちがいい。 「くっ・・・私、寝る!幸村なんか・・・幸村なんかあああ、放課後アイスおごって」 「・・・断るでござる」 拒否をしたくせに、なんだかんだでアイスをおごってくれた幸村に感謝。 『嫌よ嫌よもyes!』 (その幸村は、私と本人のアイスを買うために佐助から半ば無理やり財布を奪っていた) [*前] | [次#] |