にじゅう


「"長年"一緒にいたんだから・・・ね?」


手渡されたボール。

中にいるコアルヒーは外に出たいのかボールを揺らした。

開けてあげたい。けれど、決心が、つかない。

親指が開閉ボタンの寸前で止まる。

コアルヒーは、"こんな"私でも一緒にいてくれるのだろうか。

ひどい言葉を言った。拒絶した。コアルヒーが悪いという訳でもないのに、この子にまで責任を押し付けて裏切り者だと拒絶した。本当に悪いのは、私だったのに――――。

「けど・・・、けど、私・・・」

「コアルヒーはつかさの事をずっと探していたんだ。餌を食べてる時も庭で遊んでる時もつかさがいないって事に"違和感"を感じていたのかいつも周囲をキョロキョロ見渡すんだ。呼んだりもしていたよ?だから、」


―――会ってあげてよ。






「!」


コアルヒーが・・・。

コアルヒーが私を探していた。私の姿が見当たらなくてどんな時でも探していた。呼んでいた。それで。それで私がいなくて"諦めて"過ごすしかなかった。"だって、待っていることしかできない"から―――――・・・

震える指が開閉ボタンをやっと押した。解放音と共に出てきたコアルヒーは「くあ!」と一鳴きしてつかさを見上げる。コアルヒーの瞳が大きく開かれる。

「っっっっくあぁあぁぁぁ!!」

「ひぎゃう!?」

「つかさちゃん!?」


突然、翼を広げ宙に飛んだと思ったら急上昇しはじめ、天井ギリギリまで上がると今度は急降下してつかさの胸元へと突っ込んできた。たとえ小型のポケモンといえど急降下で衝突されれば踏ん張りなど意味もなく倒れてしまう。

つかさはコアルヒーと共にベッドへと沈んだ。

「くあぁぁ・・・」

腹の上で胸の上に頭を預け翼を広げた状態で頬をすり寄せる。頬付近の水色の羽毛がぐしゃぐしゃになっても止まらない。

「よほど会いたかったんだね」

デントは椅子に腰掛けて、コアルヒーに押し倒されて目をまん丸としているつかさと嬉しそうにはしゃぐコアルヒーを見ながら優しく嬉しそうに笑みを浮かべる。

「・・・――――」

抱き上げて乱れた羽毛を整えてやると嬉しそうに目を閉じてなるがままになるコアルヒー。それがなんだか無性に嬉しくてつかさもついつい笑みをこぼしてしまう。涙と一緒に。

「・・・!」



「――・・・ありがとう、ね・・・ごめんね、コアルヒー」

「くあ、くあっ」

もう言葉なんてわからない。随分昔にコアルヒーの言葉はわからないけれども。今まで一緒にいててよかった。一緒にいてくれて嬉しかった。言葉はわからないけれどわかる。ずっと一緒にいたからわかる。今更気付くなんて変だけども、確かに私とコアルヒーは"通じ合ってる"んだってわかった。


本当に今更だけど、それがとても嬉しくて"生きてて良かった"って思えた。




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