じゅうご
背中の傷で寝込み三日。
遅いながらもこの部屋の主がデントだということを知り申し訳ない気持ちになる。"申し訳ない気持ち"だなんて考え思ってしまう己が別人のようで嫌になる。
しかし、だけど、嫌なのにやはり申し訳ないだなんて彼を見るたびに思ってしまうのだからどうしようもない。つかさは本日三回目となるデントとの再開に顔を軽くしかめてしまう。
彼の両手には薬箱が治められていた。
「つかさ、傷を消毒するから背な、」
「いや」
彼が全てを言い終わる前に拒絶する。
通常なら一日に一回は消毒しなければならないのだがつかさは今まですべて拒絶していた。つかさの性別が女だということで彼等も困った顔をしながらも見逃してくれた。が、流石に三日と放置するわけにはいかないらしい。
「けどそれ以上放置するとばい菌が、」
「いやっていったら嫌。自分でもできるからそこおいといてよ」
「背中なんだからひとりだとできないよ」
「できる」
「・・・困ったお嬢さんだね」
「うるさい」
・・・裸を見られるから恥ずかしいという訳ではない。
つかさ自身にそんな乙女的羞恥を持ち合わせているとは思ってはいないし、女らしく生きてきた試しもない。脱ごうと思えば脱げる。けれども他人に見せるのが嫌で嫌で嫌で嫌で、仕方ないのだ。
まるで己の心を曝け出しているようだから。
二人だけのにらみ合いの空間に落ち着いた声が加わった。
「・・・消毒しませんと治るに治りませんよ」
「コーン」
コーンはつかさをチラリと見やり深い溜息を吐いた。その溜息が嫌がるつかさを叱っているように見えたのかつかさは眉を寄せ布団のシーツを握り締めた。
「べ、つに・・・貴方には関係ないでしょう?」
「関係ありますよ。ここはコーン達の家であり店でありジムです。"本来ならば"貴女は警察にお世話になっている身です。それをコーン達が通報せずしかも、置いているのですよ?」
「コーン・・・」
兄弟だからこそコーンの言葉の厳しさの裏には優しさがあるのを知っているが、つかさからしたらそれらは傷口を開くに等しい痛み。彼の名を呼んでいさめるデントだが、薬箱を奪われてしまう。
[ 16/55 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]