じゅういち
「―――・・・はは、惨め」
惨めだ。けども、きっとそれが私なのだ。惨めに手に入るはずのないものに縋り、それでもそれを手に入れようと全てを投げ捨てる。惨めで愚かでしかない。
今の今までだってそれはわかっていた。わかっていたのに認めたくなかった。今更それを認めたところでなんにもならない。そう、なんにもなりはしない。
手持ちのポケモンにもお父様にも見捨てられて、ここで独り寂しく惨めに汚く死ぬんだ。
死んだほうが、楽だろう。
そのほうが、良いんだ。
「ヤナップ、薬草を探してきてくれっ!」
暗かった。なのに声だけははっきりと聞こえた。
やけに温かい手がつかさの肩を揺すり、たたき「返事をして!」と言う。
このまま寝てしまえば死ねたかもしれないのに、そんな事を朦朧とした意識の中思っていたつかさだったがその手と声に何故か縋りつきたくて重いまぶたを開けて頭をあげた。
「・・・放っておいてよ」
"本当は、放っておいて欲しくないくせに"
地面が何処だかわからない。空が上に広がっていないような。自分の輪郭さえ把握できない。そんな感覚の中ではっきりと暗く静かに聞こえた声。それが自分の声なのだと気付くことはなかった。
いや、その"本音"という存在を信じたくなかったから、それが誰の声なのかわからなかった。
泣いていた名残が目尻からひとつ零れた。
「・・・どうせ、アンタも私の事、あいし・・・て、くれ、な・・・・でしょ?」
私の、つかさの周りにあるものすべてが嘘。
誰も私を愛してはいないし、誰も私の事などどうでも良い。
―――――私も、もう、自分のことなんてどうでもいい。
死んでしまえればいいのに。
そう思いながら気を失った。
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