○凍える夜に甘い熱を(新荒)

白い息が暗闇を微かに染める。
冬の日は短くて、辺りはもう暗くなっていた。

さみィと思わず声が漏れる。
自然と家路に帰る足が早まってしまう。
早く帰ろうと思っていたら後ろから声をかけられた。
その声で誰が後ろにいるか分かる。
ついさっきまで練習で一緒にいたし、毎日の様に顔を合わせている相手だ。
俺が振り帰るとそこには新開が缶コーヒーを持って立っていた。

「飲むか?」

「お、気ィ利くじゃねェか」

差し出された缶コーヒーを手にとろうとしたら急に暗かった周りが更に暗くなる。
そして仄かに感じる甘味。

「コーヒー代はこれで」

重なった唇が離れた時、新開がそう囁く。
暗くなったのは新開が近づいてキスしてきやがったから。

甘いのはー…

「お前何飲んだ?」

「ん?ココア。こう言うのもたまにはいいかと思って」

「あほ。つぅか場所考えろ!」

外だって言うのに人目を憚ろうとしない新開に釘を指す。
開いた口には甘みと僅かに残るココアの香り。
冬の寒さに甘みがやけに鮮明に残る。

まぁ、これはこれで……



「…悪くはねェな」

「だろ?」



凍える夜にあまい熱を。

もう一度唇が重なった。








〈終〉






お題元→休憩さま

→冬にちなんでビターな甘さを目指す…はずが結局甘甘?(苦笑)





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