▼ ○凍える夜に甘い熱を(新荒)
白い息が暗闇を微かに染める。
冬の日は短くて、辺りはもう暗くなっていた。
さみィと思わず声が漏れる。
自然と家路に帰る足が早まってしまう。
早く帰ろうと思っていたら後ろから声をかけられた。
その声で誰が後ろにいるか分かる。
ついさっきまで練習で一緒にいたし、毎日の様に顔を合わせている相手だ。
俺が振り帰るとそこには新開が缶コーヒーを持って立っていた。
「飲むか?」
「お、気ィ利くじゃねェか」
差し出された缶コーヒーを手にとろうとしたら急に暗かった周りが更に暗くなる。
そして仄かに感じる甘味。
「コーヒー代はこれで」
重なった唇が離れた時、新開がそう囁く。
暗くなったのは新開が近づいてキスしてきやがったから。
甘いのはー…
「お前何飲んだ?」
「ん?ココア。こう言うのもたまにはいいかと思って」
「あほ。つぅか場所考えろ!」
外だって言うのに人目を憚ろうとしない新開に釘を指す。
開いた口には甘みと僅かに残るココアの香り。
冬の寒さに甘みがやけに鮮明に残る。
まぁ、これはこれで……
「…悪くはねェな」
「だろ?」
凍える夜にあまい熱を。
もう一度唇が重なった。
〈終〉
お題元→休憩さま
→冬にちなんでビターな甘さを目指す…はずが結局甘甘?(苦笑)
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