○これから先も、ただ一途に愛してる(新→荒)

これから先も。





「俺もお前も一途だよな」

部室の傍らで雑誌を読む靖友に声をかけた。
急に脈絡もなく話し掛けられた靖友が怪訝そうに顔を向ける。

「んだよ、いきなり」

問われて、それと雑誌を指差す。指を指したものはロードバイクの雑誌の事だ。
そしてそれは寿一が靖友に貸した本である事を俺は知っている。

「別にィ。ただ暇だから読んでるだけだっつーの」

「そうか?」

食い入る様に雑誌を読んでいる靖友の姿は暇だから読んでいると言う感じには見えない。
その姿はどこかいじらしくもあり、そんな風にさせる寿一の存在を羨ましくも感じる。

「おめーこそ、一途ってなんにだよ?」

俺もお前もと言う言葉を疑問に思ったのか、靖友が俺に聞いてきた。

「教えない。にしてもお互い報われないよなぁ」

「はぁ?ンだそれ。教えろ!」

訳が分からないとばかりに靖友が詰め寄ってくる。
そんな姿や会話する事自体、嬉しいと感じてしまうのは惚れた弱みなのかもしれない。
靖友が寿一を好きな限りは報われない想いだけれども…

それでもこの嬉しく思う気持ちがなくならない限りは、好きでいる気持ちは変わらないんだと思う。

「本当、一途ってのは厄介だ」

言葉が宙を彷徨い、好きと言う気持ちと共に溶けた。






〈終〉


お題元→秋桜さま

→お互い片想いの新荒で



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