甘々でいいのです(今坂)

「小野田、ネクタイ曲がってるぞ」

今泉が小野田の斜めに曲がったネクタイに手をかける。
真っ直ぐに直してやると小野田が少し恥ずかしそうにお礼を告げる。

「あ、ありがとう!」

真っ直ぐに直したネクタイを見て今泉はふと思った。

「…お前ネクタイ結ぶのヘタそうだな」

「そ、それは最初の頃はね!もう慣れたよ」

必死に否定すればするほど、顔が赤くなっていくので図星なのがまるわかりだ。
その様子が面白くて今泉は更にからかってやりたくなった。

「じゃあやってみろよ」

今泉がネクタイを弛める。

「え!?…分かったよ」

言われた瞬間は小野田は驚いていたが、売り言葉に買い言葉の要領で、今泉のネクタイに手をかけた。
最初こそ戸惑う事なく結び始めたものの、だんだんと手つきがたどたどしくなっていく。
必死になってネクタイを結ぼうとしている姿から見て、上手く結べてないなと言うのが一目瞭然だ。

「あれ?うーんと…ごめん、ちょっと待って」

「いいよ、別に」

見下ろす小野田の頭が小さく首をかしげている。
可愛らしいという想いと、ずっとこのままでいい、と言う言葉を今泉はククっと喉を鳴らしながら笑って飲み込んだ。





〈終〉

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