甘々なのでいいのです(新荒)

「ぜってぇいやだ」

荒北が眉を潜めて抗議の声をあげる。
その抗議の相手は別に気に留めるでもなく、しれっとした態度で帰り道を歩いていた。

「えー、いいじゃん」

「やだ」

もう何度目になるか分からないこのやり取りを繰り返して、荒北の隣を歩く相手、新開がはっきりとした口調で話す。

「靖友の奢りだろ。チョコレートパフェを食べる」

「奢りだからヤなんだよ!俺も食べれるやつにしろ。大体よくそんな甘いの食べれるな」

「ビターチョコだから大丈夫」

「…そう言う事を言ってンじゃねェよ」

荒北が呆れて力なく言い返す。
今日練習で負けた方が帰りに何か奢ると言う事になった。
荒北はそれをのんだ自分を今更ながら後悔していた。
負けると言う事も悔しいし、まさかパフェを食べたいと言い出すとは思わなかったからだ。

「疲れた身体には甘いものがいいって言うだろ?」

「肉を食わせろ」

俺は肉がいいんだよ!

「えー…じゃあ」

そう意味深に言葉を含ませながら、新開が近付く。
靖友が何か言う前に口は塞がれていた。

「っ、お前…!」

「甘いものはこれでいいや。肉でも食べよっか。靖友の奢りで」

新開が満足した爽やかな笑顔で言い放つ。

なんかこいつだけが美味しい思いしてるだけじゃねぇの?

何処か腑に落ちない思いと財布の心配が靖友の心をよぎっていた。








〈終〉


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