▼ 撫でてみる?(今坂)
練習が終わってロードバイクから降りると金城さんが僕に近付いてきた。
「お、お疲れ様です」
金城さんには妙な迫力があるって言うか、金城さんと話す時は緊張してしまう。
「小野田、今日はよくやったな」
そう言って金城さんは僕の頭に手を置いた。
ポンポンと軽く頭を撫でられる。
まさか誉められるなんて思わなくて、顔が緩んで照れてしまう。
「ありがとうございます!」
僕がお辞儀をすると金城さんはこの調子でな、と言って巻島さんと田所さんの所に向かっていった。
「うわー、変な顔してなかったかなぁ?」
上手く笑顔がつくれてたかな?もしかしてガンつけてたりとかしなかったよね?
そんな事を考えていると、今度は今泉くんがやってきた。
お疲れ、と声をかけたのだけれど、今泉くんは何も言わない。
思案気に僕を見たかと思うと、今泉くんはさっきの金城さんと同じく僕の頭に手を置いてきた。
あまりにも唐突で現状に理解出来ない。
「どうかした?今泉くん」
「違う」
「え?」
「金城さんの時と随分態度が違うじゃねぇか」
苛立った様に言われるのだけれど、僕としてはそんな事言われても、としか言いようがない。
すると今泉くんはいきなり、のせていた手に力を込めて、力強く僕の頭をグシャグシャと撫で出した。
髪が今泉くんの手の動きに合わせて暴れる。
「わわっ、なに?いきなり…」
「なんかイラッとする」
な、なぜ?全く意味が分からないでいる僕を尻目に、今泉くんはしばらく僕の頭を撫でていたのだった。
〈終〉
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