撫でてみる?(今坂)

練習が終わってロードバイクから降りると金城さんが僕に近付いてきた。

「お、お疲れ様です」

金城さんには妙な迫力があるって言うか、金城さんと話す時は緊張してしまう。

「小野田、今日はよくやったな」

そう言って金城さんは僕の頭に手を置いた。
ポンポンと軽く頭を撫でられる。
まさか誉められるなんて思わなくて、顔が緩んで照れてしまう。

「ありがとうございます!」

僕がお辞儀をすると金城さんはこの調子でな、と言って巻島さんと田所さんの所に向かっていった。

「うわー、変な顔してなかったかなぁ?」

上手く笑顔がつくれてたかな?もしかしてガンつけてたりとかしなかったよね?
そんな事を考えていると、今度は今泉くんがやってきた。
お疲れ、と声をかけたのだけれど、今泉くんは何も言わない。
思案気に僕を見たかと思うと、今泉くんはさっきの金城さんと同じく僕の頭に手を置いてきた。
あまりにも唐突で現状に理解出来ない。

「どうかした?今泉くん」

「違う」

「え?」

「金城さんの時と随分態度が違うじゃねぇか」

苛立った様に言われるのだけれど、僕としてはそんな事言われても、としか言いようがない。
すると今泉くんはいきなり、のせていた手に力を込めて、力強く僕の頭をグシャグシャと撫で出した。
髪が今泉くんの手の動きに合わせて暴れる。

「わわっ、なに?いきなり…」

「なんかイラッとする」

な、なぜ?全く意味が分からないでいる僕を尻目に、今泉くんはしばらく僕の頭を撫でていたのだった。




〈終〉

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