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最近二人が変、だと思う。
二人って言うのは今泉君と鳴子君の事。





学校からの帰り道。
僕、今泉くん、鳴子くんの三人はいつも通り一緒に帰っていた。
夕日に照らされて三つの影が揺れる。
友達と一緒に帰る事も僕の憧れだったから、こうやって帰れるのは素直に嬉しく思う。
けれども少しおかしく感じる所があって…

僕の家に向かう曲がり角が見えて僕は二人と別れようと、足を家の方向へ向けた。

「じゃあ僕ここで…」

どうか、なにもありませんように。そう祈りながら、そそくさと二人から離れようとした。

「小野田、ちょっと待て」

そんな僕の願いも虚しく、今泉くんが僕を呼び止める。
言いながら今泉くんは僕に近付いてきた。
もうここまでくると、何をされるか分かっているから制さずにはいられない。

「ま、待って!」

「なんだよ?」

両手を前に出して今泉くんを止めると、今泉くんはあからさまに不機嫌な顔付きで問う。
今日こそ言わなくちゃいけない…
僕はぐっと唾を飲み込んで思いの丈をぶつける。

「いや…あの…変じゃない?その、男同士で…キス…とか」

ぶつける、と言う割りにはしどろもどろになってしまったけれど、それは恥ずかしさもあるからで。
とにかく僕が言いたいのはこの事だった。
おかしいと思っているのは僕が二人と別れる時、二人は僕にキス…してくる事。
普通、キスとかしないよね?
それとも僕が友達がいない期間が長すぎて世の中の常識が変わってしまった…いや、そんな馬鹿な。
僕がそんな、ある意味不毛な事を考えていたら今泉くんが口を開く。

「別に。変じゃないだろ。なぁ、鳴子?」

今泉くんはさも普通の事、と言う感じに言って話を隣に居る鳴子くんにふった。

「そうや。変やないで!ワイら小野田くんの事好きやし!」

鳴子くんは相変わらずの高いテンションだ。
でもそんな力説されても困るよ。

「それは…僕も二人の事好きだけど…」

僕が言うや否や今泉くんが僕の頬に触れて、その整った顔が近くなってー…

「っ!」

あっと思った時には、今泉くんの唇が僕の唇に重なっていた。

「じゃあ問題ないな」

重なっていたのは一瞬だったけれど、確かにこれは『キス』と呼ばれるものな訳で。
どこか満足気に言ってくるけれど、その台詞ってキスする前に言う事じゃ?
やっぱりこう言うのって普通の事なのかな?
混乱している僕をよそにすぐ隣で批難の声が飛ぶ。
鳴子くんが今泉くんを指差して喚いていた。

「あー!スカシ、何唇にしとんねん!ワイお前と間接チューになってまうやん!」

「だったらしなきゃいいだろ」

「うっさいわ!」

「え!?わっ」

面倒臭そうに返事を返す今泉くんを鳴子くんは一蹴してから、急に僕の襟を引っ張った。
何、と思っている内に今度は鳴子くんの唇が僕の頬をに触れる。
頬と言ってもそれは限りなく唇に近い場所。
かすめる様に触れて、離れた、その唇が言う。

「ほな、またな小野田くん」

「じゃあな」

その口調はいつも通りの明るい鳴子くん。いつも通りのクールな今泉くん。
まるで何事もなかったかの様な、むしろ普通の流れとでも言った二人の態度に、僕の方がおかしいのかとさえ思えてくる。

「うん…ばいばい」

僕は力なく手を振って二人を見送る。
結局上手く流されてしまった気が…
二人の姿が小さく見えなくなって、思わず心の中の声が漏れた。

「ー…こんな展開ってありなの?」

ない、と誰かに言って欲しい。
細く長く伸びた僕の影一つがユラユラと揺れていた。






〈終〉
→おまけ





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