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A finger is licked. Side Hakogaku


「舐めて」

こいつは時々おかしな事を言う。
俺は舐めたい訳じゃないが、それでも舐めないとこいつは動かない。
この熱くなった身体を鎮めてくれるのは今目の前にいる奴だけだ。
俺は差し出された指に舌を絡めた。

「んっ、早く…動けって…」

「了解」

舌を絡ませつつ、せっつけば緩く、そして時折深く律動を繰り返してくる。

口と身体の奥に新開を感じながら待ち望んだ感覚に身を震わせた。





ヤっている最中ってのはお互い夢中だけれど、終わってしまえば淡々としたものだと思う。
脱いだ服を着て、俺は隣に座っている新開を見た。
新開もシャツを着ている所だ。
鍛えているのだろう、身体は程よく筋肉がついている。

「お前さぁ、指舐められるの好きな訳?」

俺はなんとなくそう口にしていた。
別に深く知りたいと言う訳でもないが、そう、ほんとうになんとなく気になったからだ。
ただこの事後の妙な雰囲気の間を埋めたかったのもある。
尋ねられた新開はと言うと、一瞬驚いた様な顔をしたけれど、すぐに俺の言っている意味を理解したようだった。

「いや…舐められるのが好きっていうか、舐めてる靖友を見るのが好き」

まさかの予想外の答えに今度は俺が驚いた。俺はこいつの言っている意味が理解できない。

「エロいから」

「な……」

間髪入れずに新開が口にした言葉に対して声が詰まる。
こいつの言った意味があまりにも唐突すぎるのと、それ以上に新開の目が、雰囲気が、本気っぽいからだ。
こんな質問をした自分が急に気恥ずかしくなって、バカじゃねぇのと吐き捨てる様に言った。
そんな俺を新開はジッと見ながら、間近に寄ってきた。

「靖友」

名前を呼ばれてギクッとなる。
なんとなくこの雰囲気は不味い気がするからだ。

「舐めて?」

爽やかともとれる様な笑顔で差し出される指。
やっぱりだと思った。
さっきと同じ声と差し出される指。

まだ快感の余韻が残る熱い身体がつい数分前の情事を思い出させる。

わざわざ俺の意思を聞いてくる新開の言い方と、自分自身への苛立ち。

舐める必要なんかねぇのに、どうして口が開くー…




〈終〉

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