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最近おかしい。
誰がって俺が…だと思う。

小野田が可愛く見えるなんて。






「うーん…駄目だ。分からないー」

頭を抱えて小野田が机に突っ伏す。
放課後の教室。
俺は小野田に勉強を教えていた。
教室が夕焼け色に染まっていく中、教室には俺と小野田しかいない。
教える側と教わる側、机を挟んで向かい合って座っていた。

二人っきりだ。
いや、普通そんな事を考える事自体やっぱりおかしいだろう。
俺も小野田も男じゃないか。

なのにこいつの眼鏡の奥にある大きな目や小柄な身体、言動がいちいち気になってしまう。

「あの…今泉くん?」

小野田に呼ばれて現実に引き戻される。
どうやら分からない箇所を聞きたい様だった。

「あぁ…なに」

なんでもないように装って小野田に分からない所を教えてやる。
小野田は教えてもらって何とか問題が解けたみたいだ。
ずっと困った顔をして教科書を見ていた小野田が顔を挙げる。
そこにはいつも見せる明るい笑顔があった。

「ありがとう!やっぱり今泉くんが居ると頼りになるね」

「……!」

思わず息が詰まる。
やっぱり可愛いと思った自分がいたからだ。
何も反応しない俺に小野田は焦った様に付け加える。

「え、と。なんて言うのかな。決して全部頼ろうとかって訳ではなくて…」

どうせまた悪い事言っちゃったかな、とかネガティブに考えてるんだろう。

「いいって、そんなお世辞」

「お世辞じゃないよ!今泉くん格好いいし、僕憧れ……」

あぁどうしてだ。身体が勝手に動く。
その一方で理性が切れるって言うのはこう言う事を言うのかと冷静に感じている自分がどこかにいた。

一瞬の事のはずなのに、まるでスローモーションの様だ。
俺は小野田に口付けていた。
お互いのぬくもりを感じ、触れ合った唇が離れる。

「え…え??」

小野田の目が点になって混乱しているのが分かる。
あー、やっちまったと焦る気持ちはあるのにキスを理由付ける言葉はスラスラ出てきた。

「まだ言うならまた口塞ぐぞ」

「えぇー!?」

小野田の困惑した叫びが教室にこだまする。
キスした瞬間は真っ赤になったと思えば今は青くなったり、クルクルと変わる表情は見ていて飽きない。
そしてそんな些細な事にいとおしさを感じる。



最近おかしい。

誰がってそれは、きっと俺なんだろう。





〈終〉


→あとがき




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