狂淫の特効薬
ウボォーギン×クロロ


※注意点
・調教パラレル
・モブ×クロロ描写
・旅団員×団長(クロロ)を示唆する描写
・スカトロ(小)描写












 今から2年前、凄腕の調教師に捕えられた団長は、苛酷な性調教を受けた。
 旅団員が知る限り、団長の調教に関与し、現在生存している者は、調教師ただひとりである。
 旅団員は、団長を奪還するために、さまざまなことを知らなければならなかった。彼が、捕らえられた2ヶ月間に、何をされてきたか。どんな念能力を、魔物を、魔獣を、魔具を、魔薬を使われたか。
 団長は、男の精液なしでは生きていけない身体にされてしまった。定期的に精液を摂取しなければ、発狂死してしまう身体に。
 自分のそれでは、意味がない。
 外部の人間と長期間接触できない場合は、仲間に頼らなくてはならなかった。


 今回の仕事で集められたメンバーは4人。
 その内のひとり、ウボォーギンが、その日の“協力者”こと“処理役”となった。
 団長は、協力者に顔を見せないように角度を調整しながらフェラチオをする。ジェルでとろとろに濡らした両手で、陰嚢を揉み込み、根元を扱く。これが、驚くほど気持ちいい。唇も、舌も、指も、男の性感を知りつくしている。
 ウボォーは男を抱きたいと考えたことは一度もない。それに加えて、相手が相手だ。綺麗な顔立ちをしているとは思うが、性の対象として見たことはもちろんない。
 ……そんな条件下でも、ウボォーが無理に勃起させる必要がないほど、団長のフェラチオは、よく仕込まれていた。
 射精のタイミングを熟知している彼は、協力者が声をかけるより前に、口唇で精液を受けとめる準備をする。
 ウボォーは、彼の口の中へ精液を吐き出す。そのペニスの逞しさにふさわしく、射精量も人並み以上だ。
 団長はペニスから唇を離すと、口許をおさえ、かたまりを噛み潰しながら、少しずつ、ゆっくりと、のみ下していく。
 ――これは、義務だ。
 こんな身体になった団長を、あわれむ必要はない。あわれむのは彼への侮辱になると、ウボォーは考えているからだ。
 団長が体験したのは、喜んで死を選ぶような地獄だったはずだ。死を選べなければ、人格が崩壊するような地獄だったはずだ。
 それを、心身ともに耐え抜いてみせたからこそ、彼は“団長”を続けているのだ。








 “処理”から数日が経過した頃。
 ようやく外部との接触も可能となった。
 アジトである廃ビルには、ウボォーとシャルナーク、そして団長がいた。
 団長の指示を受けたマチとパクノダは外へ出ている。彼女達は、明日の午前9時に戻ってくる予定だ。
 隣の部屋から戻ってきた団長は、黒のスーツ姿になっていた。髪のセットは解いて、額の十字は包帯で隠している。
 団長は、
「明日の午前8時までには戻る」
 そう言って、出て行ってしまった。
 ウボォーは、シャルへと話しかけた。
「どうする?」
「何が?」
「匂い、やばかったぞ。ありゃさすがにお前も気付いたろ?」
 “処理”の前、あるいはその最中に、団長からかすかに漂う独特の甘い匂いがある。
 常人はまず気付かない、極めて微量なそれは、旅団内でもウボォーだけが嗅ぎ当てていた。処理を担当したことがある他の団員に訊いてみたことがあったが、シャル以外には、不思議な顔をされただけだった。
 情報収集と分析を得意とし、立場上、団長の経験した“調教”の内容を誰よりも深く知ることになったシャルだからこそ、匂いの正体に心当たりがあったのだ。
「え……そんなにすごかった? ごめん、オレにはわかんなかった。――じゃあ、出かけたのも、きっとそれが原因だろうな」
 シャルはそう言うと、携帯電話をいじり始めた。
 ウボォーは頭を掻いた。
「……こないだ、ヤったばっかなんだが……」
「オレ達とのは、団長にとっては応急処置のレベルなんだ。気付いてたと思うけど、アレの最中、団長、かなり我慢してるだろ? オレ達とじゃ、最後までできないから、なんだろうけど」
 シャルの言葉に、ウボォーは目をまるくした。彼が気付いていたのは匂いだけだ。団長が我慢していたなんて、これっぽっちも気付かなかった。
「我慢って、何をだ? 最後までって、何だよ」
「ウボォーって童貞だっけ?」
「殺すぞ」
「じゃあ、わかるだろ? 子どもみたいに最後まで説明を求めるなよ。疲れるからさ」
(おっ……珍しくイラついてんな)
 しかし、そこで怯むようなウボォーではない。
「つまりあれか、野郎に抱かれに行ったわけか」
「人がせっかく、オブラートに包んだのに……」
 シャルが苦い顔をして低い声でつぶやくと、どこかあきらめたような口調で言葉を続けた。
「団長は、オーラで心身をコントロールしてるけど、本当なら、一日セックスしないだけで発狂するような身体にされてるんだよ。こんな言い方したくないけど……いくら団長でも、いつかは“充電”が必要になってくる」
「……で、その“充電”とやらに行ったわけか」
「マチとパクを出かけさせたのも、そのためだったんだろうな。そう言えば、マチも、団長の様子がちょっと変かもって言ってたっけ……」
「マジか。……ところでよ。シャル、お前、団長の行き先に、心当たりはねェか?」








 まず、ウボォーは団長の上にのしかかっている男の頭をわし掴んで、彼から引きはがした。
 腐ったトマトのように簡単に頭を潰された男の様を目撃し、恐慌を来した他の男達も逃げようとしたが、手遅れだった。
「……」
 ベッドの上に残ったのは、服を乱した団長だけだ。
「どうしてここがわかった」
 団長の問いに、ウボォーが答える。
「匂いだ。他の連中は気付いてねェがな」
「……お前の鼻の良さを甘くみてたよ」
 団長は低く笑う。
 それから、笑みを消して、質問を重ねた。
「それで? なんで来た」
 言葉の響きに、冷たさと鋭さがぐっと増す。
「誰彼構わずケツ貸して、ビョーキもらっちまってもつまんねーだろ」
「こいつ等は、セクシャルマイノリティーサイトに登録してる連中で、性病の検査も済んでいた」
「だとしても……あ〜……なんだその……」
「とりあえず、一人にしてくれないか」
「いや、そりゃダメだ」
 匂いで追ってきたと話してしまった。今度逃げられたら、間違いなく追えなくなる。
「ちゃんと時間には帰る。頼む」
「断る」
「さっきから……どうしてお前がそんなムキになってるんだ?」
「オレが相手になってやるよ」
 団長の表情が変わる。驚いている。
「ケツなら何回か使ったことあるしな」
「……」
 聡い彼は、表情や声音から、ウボォーが本気であることを知った。
「使ったことあるって、女性の、だろう?」
 と、苦笑してから、
「断るべきなんだろうが……言葉に甘えていいかな」
 訊いた。
「おう」
「場所を変えよう。血の臭いは、今は欲しくない」




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