羊の受難
ダチとカラオケに行ったんだ。
トイレから戻ってくると、部屋を間違えたことに気がついた。ひとつてまえの部屋に入ってしまったんだ。そこで、ひと昔前のアニメソングを歌う美女、特大パフェを食べている黒髪ショートの美少女に遭遇した。忘れもしない。俺をさんざんにもてあそんだ、女神みたいな悪魔たち。
絶句している俺をよそに、美女が軽やかな声で言った。
「や。こんな偶然もあるんだねェ」
そして、この魔の巣窟には、もうひとり、女の子が座っていた。
背中まで伸びた長い黒髪の、モデルのような色白美人だった。背が高くて華奢な体つきをしている。人形みたいに整った顔立ちだ。無表情なせいで余計に人形めいている。
三人とも、同じ学校の制服を着ていた。
「ヒソカの知り合い?」
「前に話した、公園の子だよ」
「あー、彼がのぞき魔?」
「うん」
ちょっ……いきなりバレてんの? この調子だと、黒髪ショートの彼女も話しちゃってるのかな。ところが、青くなってる俺になんぞ見向きもせず、彼女は三・四人用の特盛パフェをひとりで食っていた。
すると、美女――ヒソカさんが、
「イルミもちょっと遊んでみたらどうだい?」
にやにや笑って言った。
「んー……そうだね」
ヤバい。
なんかヤバい。
本能の警鐘に従い、すぐに逃亡を試みたが……。
「うぎゃっ」
ドアにかけた手は、黒髪ロングの美人――イルミさんに打ち払われて、あれよあれよという間にソファーに仰向けに押さえつけられてしまった。
「あだだだだだ!」
なにこの腕力! この細い腕のどこに、こんな怪力が隠されてるんだ!?
しかも、こんなに俺を痛めつけといて、イルミさんは変わらず無表情だ。ほかのふたりは、俺をいじめてる時、それはそれは楽しそうだったのに。アレもトラウマ寸前の恐怖だったが、イルミさんのこの無感動な反応も、彼女たちとはまた違った意味で怖い。
そして……。
「むぶっ」
突如、顔面を覆う、柔らかく、ぬくい感触。
……!?
こ、これはもしや……!
そう、美人が股間を俺の口もとに押しあてるように乗っかってきたのだ。密着してるせいで、ラズベリー色の下着の布越しに、割れ目の感触がダイレクトに伝わる。遠目だとわからなかったけど、この人も、あのヒソカさんと同じくらい、引き締まった身体だ。細い下肢に、無駄の無い、しっかりした筋肉がついている。それでいて、お尻には女の子特有のムチムチした柔らかさがちゃんと備わっている。
密室にカラオケの音楽が流れる。
知ってる。これ、ゲームのエンディング曲だ。
イルミさんが歌いだした……って、アンタが歌うんか!!
なんというマイナーな選曲。しかも上手い。つーか、顔騎しながら歌いだしちゃったよこの子!
「うぶぶぶ……」
股下でフガフガしている俺の顔面に、イルミさんは容赦なくアソコを擦りつけてくる。
理不尽に襲われた俺は、苦しかったし、みじめだったし、くやしかったけど、興奮してしまっていた。
このままじゃいけない。なんとか逃げないと。
逃げるため、そうあくまでこの窮地から逃げるために――俺は下着の上からスジへと舌を伸ばした。よくよく考えてみれば、彼女の方から弱点をすべてさらしてるようなもんじゃ……う、うそ、よどみなく歌ってる!? まさかマグロ!?
う、うおお負けるかーッ!
折れそうになった心に活を入れ、懸命に舌をまわした。
そして、ちょうど歌が一番盛り上がる、ラストのサビの部分にさしかかった時。探り当てた窪みを、舌先に力をこめて、グイッと突いた。
「ひゃっ」
上擦った可愛い声がマイクによって増長して、部屋に響いた。
めげずになめまわしたのが報われた瞬間だった。
ところが。
「ふぅー……うぶぅ!?」
溜飲がさがったと思ってたら、ズンッと、尻が顔面に強く深くのしかかってきた。ちょ、あの、これはご褒美とかそんなレベルじゃないちょっとシャレにならない。
ぐ、ぐるぢい……!!
「油断したねェ、イルミ」
「知らない」
「ところで、その子、タップしてるケド」
「知らない」
あ……やばい……なんかきれいな小川とお花畑がみえ……。
「ぅぐぶ…っぷっ、ぷあっ!」
昇天しかけた時、間一髪、解放された。肺いっぱいに新しい空気を吸いこんだ。臨死体験なんぞしてしまった。
「さっきのはイルミの負けだよ」
「は? 負けてないし」
そもそも勝負なんかしてましたっけ俺たち……と、死の危機から脱出した直後で朦朧としている俺の顔面に、
「ぉぶっふ!」
美人の尻が再びのっかってきた。しかも、今度は、下着まで脱いで。すべすべの感触。イルミさんのアソコには、毛が生えていなかった。つるつるのアソコが、ダイレクトに俺の口もとを覆っていた。
「ヒソカ、ゴムちょうだい」
「今持ってるのは……いちご、レモン、りんご、チョコレート、メロンソーダ、プリン」
「りんご」
「キミこればっか」
イルミさんは俺のズボンから愚息をとりだすと、ヒソカさんからもらったコンドームをつけた。
「ぅお…!?」
熱くて湿った感触にカラダが跳ねあがった。
強制的なシックスナイン。
イルミさんの舌が俺の亀頭の上を這いまわる。その上、十本の細い指で、口に入りきらない竿を扱いたり、玉袋を揉みこんだりしてくる。
今までしてもらったフェラチオの中で、一番気持ちがいい。それに、口もとを覆う、無毛の恥丘のすべすべとした感触と、前後に行き来する熱い肉のヒダ、甘酸っぱい匂いが心地好くて。
すぐにでもイッてしまいそうだった。
そのとき、
「ンくぅ…!」
イルミさんが呻いた。
え? なにが起こったんだ? お尻しか見えないからわからない!
「ちょっと、ヒソカ、なにするんだよ」
「だって、彼、防戦一方だろ。ちょっとくらいハンデあげないとフェアじゃないからさ」
「だからって、お尻に指いれないで」
「一本だけだから」
「いや、なんだよその先っぽだけならいいだろみたいな言い方」
中断されてかなり切ない状況だったが、文句を言える立場じゃないのを本能で理解していた俺は黙っていた。
「……しょうがないなァ」
イルミさんがフェラチオを再開した。
ヒソカさんの指使いがよっぽどスゴイのか。イルミさんの変化は一目瞭然だった。尻がなやましげに動いている。アソコからも愛液がしたたってきた。フェラの合間に、甘えた吐息が亀頭にかかった。
「ぅや……ひそ……ぅりゅぃ、っへ……」
俺のを咥えながらしゃべるイルミさん。なに言ってるのかわかんないけど、おそらくはヒソカさんへの文句だ。声の振動が響いて、これはこれで変則的な気持ちよさがある。
認めてしまうのは男としてはアレだけど、俺だけじゃ、彼女はこんなに濡れなかったろう。
とにかく、ヒソカさんという強力な味方(?)を得た(と思わなくてはやるせない)俺は、目の前のアソコにむしゃぶりついた。ぷっくりふくらんだクリトリスを舌先でつついて転がした。愛液をちゅうちゅう音をたてて吸った。尻の筋肉がヒクヒクッと引き攣っていた。
「ぷは……だい、たい、2対1なんて、それこそフェアじゃないだろ」
「じゃあ、キミは、クロロに手伝ってもらったらどうだい?」
「あ……そうか。クロロ」
美少女――クロロさんの怪訝な声がきこえた。
「オレを巻きこむなよ」
「プリン奢るから」
「仕方ないな」
クロロさんの即決具合はむしろ清々しい。
「要はコイツを、お前より先にイカせればいいんだろ?」
「うん。だから一緒に舐めてよ」
「……舐めるのか? これを?」
「オレが先っぽ舐めるから、クロロは下の方よろしく」
オ、オオ…!?
ダブルフェラチオへの期待から、俺の胸と息子は弾んだ。
みんなかわいいなァ、エロいなァ、なんておめでたいこと考えていた。
……ところが、そのときだ。
「イギィッ!?」
ズブリッ、と、あらぬところ――肛門に、突き刺さったのは。
長さと感触的に、コレは……指だ!
「あっ、ひっ、ひぃ……ッ!!」
クロロさんの指が俺の尻穴をグニグニとほじくってくる。そして、ある部分に指先があたると、今まで感じたことのない強烈な刺激に襲われた。
とても堪えきれるモノじゃなかった。
俺はなす術なく、呆気なく、イッてしまった。
ヒソカさんがクロロさんに言った。
「前立腺責めなんてズルイ」
「お前だってイルミの尻穴に指を挿れてるだろ」
「ボクは、クロロがフェラチオするとこ、見たかったのに」
「それは残念だったな」
部屋を出ていく音がした。
おそらくクロロさんだ。
あまり考えたくないけど、多分、手を洗いに行ったんじゃないかと……。
頭上からイルミさんが、
「オレの勝ち」
と、腰をあげた。
「……ちょっと。指抜いてよ」
イルミさんが背後のヒソカさんに向かって言った。彼女のアナルには、いまだヒソカさんの中指が埋まったままなのだ。
「だって、イルミはまだイッてないだろ。イカせてあげる。勝者へのご褒美だよ」
そう言うと、ヒソカさんはイルミさんを後ろから羽交い締めにして、アナルをほじくった。俺の顔面の上でだ。
「ご褒美なんていらないし、イケなくても、いいから、はなせよ」
「やだ」
ヒソカさんは片手でイルミさんの胸を揉んだ。
長い指が、小ぶりなアナルを行ったり来たりしている。縦筋の割れ目がピンク色の口をうっすら開けて、とろみのある蜜をしたたらせていた。
「ね、もう、まいったから、はなせってば」
「彼に大事なトコと、お尻の穴をほじくられてるのを見られながらイクのは嫌?」
「それ、わざと、言ってるだろ」
「うん」
「そ……嫌、だって、わかってるならさ、はなして」
イルミさんは声こそ切迫しているが、その表情は眉をほんの少し寄せているだけだ。声と表情がどうにもアンバランスだった。
「ボクさぁ……イルミが初対面の男の子の前でイクとこ見たいんだ」
ヒソカさんはイルミさんの唇を奪った。
「ん……いい加減に、してよ、怒る、よ…ヒソカ……」
「くくく」
言葉とは裏腹に、イルミさんのアソコはひっきりなしにぱくぱくしている。とろっとした蜜粘液が俺の頬へと落ちてくる。美味しそうにひくつくピンク色のそれを目に焼きつけながら、俺は息子を扱いていた。
「ほら、彼も、キミがあんまり可愛いから、自分でシちゃってる」
「知ら、ない……こんな奴……」
クロロさんが戻ってきた。
「せっかくだから、クロロにも見ててもらいなよ。キミがイクとこ」
「いやだ、やだって……クロロも、見てないで、コイツ、どうにかして」
「無理だ。諦めて派手にイッてくれ、イルミ」
「お前ら、ほんと、最低……」
俺の目の前で、イルミさんの下腹部がガクガクと波打って、割れ目からは小便のように潮が噴きあがった。
顔面に生あたたかい潮のシャワーを浴びながら、俺も二度目の射精を遂げた。
――その後、怒った(無表情だったけど)イルミさんが先に帰ってしまい、彼女におごってもらう気だったらしいふたりの緊急会議が始まった。ぐったりしている俺のことは、もちろん放置だ。
「ボク、イルミに期待してたから、何も持ってきてないんだけど。クロロ、お金ある?」
「ないな。オレも思いっきりイルミの財布をあてにしていた。……そもそもお前がイルミを怒らすのがいけないんだろ!」
「だって、興奮しちゃったんだもん」
すごいこのひとぜんぜん反省してない。そもそも悪いコトしたなんてちっとも思ってなさそうだ。
苦虫をかみつぶしたような顔をするクロロさん。
「クロロだって、イルミのことあっさり見捨てたじゃないか」
「あそこで下手にお前の邪魔をすれば、オレが危ないからな。それに、イルミも本気で嫌がっていたわけではないだろう」
「そう思うだろ? ああいうところが面白いんだよねェ」
「話が逸れた。……で、金の件だが」
悪魔がふたりして俺を見下ろした。
終
2012/07/21 pixiv掲載
2012/11/09 加筆