羊の受難









 パーカーとジーンズとスニーカーを黒で統一。大きめのマスクをして、真夜中の公園の小さな雑木林の中をうろつく俺は、ハタから見れば完全に不審者だろう。
 だが、俺は不審者ではない。善良で健全な男子高校生だ。
 そんな一般人たる俺が、どうして不審者のスタンダードスタイルみたいな恰好で、真夜中の公園をウロウロしているのかというと、ズバリ、青姦をのぞくためである。
 この公園は、知ってるヤツは知っている青姦スポットなのだ。
 周囲を警戒しつつ、しばらく散策していると……。
「ンンン……あっ、ぃっ、いいッ……!」
 若い女の喘ぎ声がきこえてきた。
 はやる気持ちを抑えながら、腰を屈めて、声のする方へと進んだ。
 草むらに身を隠して、のぞきこむ。
 思った通り、若いカップルが「真っ最中」だった。今夜は月が冴えているおかげで、数メートル先の彼らの姿が、けっこうよく見える。
 周りの安全を確認してから、俺はズボンの中から息子をとりだして、マスターベーションを開始した。
 リアルな喘ぎ声、あちらさんに見つかるかもしれないというスリル、見ちゃいけないモンを見てるという、このなんとも言えない背徳感――本やDVDでは、決して得られない興奮だ。
 ……犯罪だって? 俺は誰も傷つけてないぞ。盗撮もしてないし。あのカップルの青姦だって、ヤりたくなるのは生き物として仕方ないこと。この程度でいちいち通報するのは馬鹿げている。第一、あのふたりの明るく輝く未来はどうなる。あと、仮に通報したとして、やって来た警官に、
「ところで君はどうしてそんな恰好でこんな真夜中の公園にいたのかな?」
 と、もれなく俺まで職務質問されるのはわかりきっている。だからこうして、みてみぬフリをして視てるのが、一番かしこい選択なのだ。
 ちなみに、たとえ「同志」に出くわしたとしても、慌てず騒がず、お互いのテリトリーを侵害することなく、若い男女が愛をはぐくむ姿を見守るのが、俺たち紳士の不文律のルールだ。
 だから、今まで、こんな風に後ろから、肩をツンツンつつかれたことなんか一度だってなかった。
 ……。
 だ、誰だよ! いまいいとこ……!
「べッ!」
 背後の不埒者に文句を言ってやろうとふり返った矢先、いきなり押し倒された。
 え゛?
 まさか警察!?
「あわわわわおまわりさんごめんなさいちがうんですこれはほんのできごこ……ろ?」
 俺を押し倒した犯人は、なんと女だった。
 しかも、青姦真っ最中の彼女よりも断然キレイでセクシーな美女だと、うす暗くても確信できる。
 派手な色の髪を後ろに流れるように固めている。
 服装をみるに、どこかの学校の制服のようだ。前のボタンをかなりキワドイところまで外しているので、胸もとが大きく開いている。
「のぞきなんてイケないなァ」
 と、美女は言うと、俺のマスクを剥ぎとってしまった。
「ん〜」
 彼女は俺のマヌケ面を見、露出したアソコを見。それからニコッと笑い、
「よし、オシオキ決定」
 と、俺の下腹に跨がって、首筋にキスをした。
「ちょっ、ちょちょちょ! いや、あの、その……!!」
「騒いだらバレるだろ」
 魅惑の闖入者は、草むらの向こうを軽くあごでしゃくった。忘れていた。カップルの存在。
 しかし、彼らはセックスに夢中なようで、こちらには未だ気づいていないようだ。相変わらずな女の喘ぎ声が聞こえてきて、ホッと胸を撫で下ろした俺の上に、美女がのしかかってきた。むっちりした大きな胸を押しあてられる。柔らかく、それでいて弾力のある豊満な乳が、胸板いっぱいに乗っかったのだ。
「あの、おお、お、おっぱいが……」
 どうしても、胸上の深い谷間に視線が釘付けになってしまう。こればかりはどうしようもない。雄の業だ。
 息子は、彼女の股の下敷きになっている。
 息子が俺に向かって叫んだ。このひと、パンツはいてない! ……と。
 ノーパン美女は、俺の耳朶に唇をよせて、小声で囁くようにたずねた。
「キミ、童貞じゃないだろ」
「え!? ……あ、ああ、ハイ、一応……!」
「彼女いるの?」
「い、今はッ、いませんッ」
 赤裸々な質問内容にも、気づけば律儀にこたえてしまっていた。耳の穴の奥まで熱い吐息がふきこんでくる。下半身に熱が蓄積しているのが痛いほどわかる。アタマは麻痺していた。嘘をつくことも、無視をすることも、まして拒絶することもできない。されるがままだ。
 キワドイ質問ぜめは続いた。
「別れた彼女が筆下ろしの相手かい?」
「ち、違います」
「キミって、自分でするより、他人のをみてる方が楽しいってタイプなの?」
「ええっと、そのー……コレは趣味というか……単純に好きというか」
「そう。……ところで、ボクとしたくはならない?」
「ええ……ッ!?」
「したくないならいいよ。キミに断られたら、向こうのひとたちに交ぜてもらうから。安心しなよ。キミが此処からのぞいていることは、彼らには黙っておくから」
 と、言って、美女が起きあがろうとする。
 俺は慌てて彼女の腕を掴んで叫んでいた。
「し…しししししたい! したいです!!」
 3P鑑賞もたしかに魅力的だが、こんな美女と実際にセックスできることに比べたら比較対象にすらならない。そもそも、のぞいていること自体がバレてるわけだから、のぞきの醍醐味ははじめから無いようなもんだ。いや、そもそも、据え膳喰わぬは男の恥。
 俺の、「やりたい!」という魂からの返答に、美女が肩を揺すりながら笑った。
「くく、キミは正直者だなァ」
 彼女が再びのしかかり、俺の手を握った。
 つかまれた手は、そのまま、彼女の尻へと導かれた。
「触ってごらん」
 たどり着いた先には、かたい感触。
「……なッ!?」
 なんとこのお姉さん、何かかたいモノをお尻に挿れていた。その正体もわかってしまった。
「コレ、まさか……ディルドっスか……?」
「そ。……ねェ、キミ。コレをさ、動かしてくれないかな?」
 男たるもの、美女からのお願いは断るものじゃない。断れない。
 美女の尻からほんの少し顔を出しているかたい突起――ディルドの端を掴んだ。アナルセックスはおろか、大人のオモチャも初体験な俺には、本やDVDで養ったエロ知識だけが頼りだ。とりあえず、デリケートなところなんだから、あまり激しくしちゃダメだよな。ゆっくり、出し入れすればいいんだよな? ……と、おそるおそるピストンを開始した。
 このディルドはとっかかりのある造りなのか、ちょっと引くたびに、ヌル、ヌルッと、腸壁のささやかな抵抗を受けた。
「は……ふぅ……」
 美女が艶のある息をもらして、くびれた腰を前後に揺らした。
「ゥオオ……!?」
 そうされると当然、股下の息子は擦られるワケで。あまりの気持ちよさに、ピストンまで中断してしまった。
「手を止めちゃダメだよ」
「あっ、すみません!」
 お叱りを受けて慌てた俺は、つい、極太ディルドを尻穴の奥めがけて、強めに突いてしまった。
「くぅうッ」
 美女が喉を軽く反らして甘いうめき声をあげた。
 息子に密着している割れ目がピクピクとわなないて、温かく濡れた感触が伝わった。
 これは、もっとはげしくしてもよさ気? ――そう調子づいた俺は、ディルドを握る手に力をこめて、遠慮を捨てて、美女の尻穴を徹底的にいじめることに専念した。抜けるか抜けないかのギリギリのところまでゆっくりと引き抜いてゆき、開放感にゆるんだ腸肉を抉るように素早く突きいれた。
 どうやら、さっきの嬌声で、俺のタガは外れてしまったようだ。もう片方の手で、太ももを撫でたり、尻を鷲掴んで揉みしだいたりするという大胆な行動に出ていた。直に触って気づく。美女の太ももには、引き締まった筋肉の硬さと弾力が漲っていた。かなり鍛えられた身体なのがよくわかった。一方、尻の方は、彼女の肉感的な印象に相応しく、弾力がありながらむっちりとしてやわらかい。手のひらに吸いつくようなスベスベの尻肌の感触がたまらない。
「ちょっ…と、キミ、はげしいよォ……」
 そう咎める美女だが、腰の動きは完全にディルドの抽送と連動していた。ぬめりのあるツユがたっぷり絡んだ、厚く柔らかな肉の谷間でグチュグチュ扱かれて、愚息は射精街道一直線だった。
「んん…っはぁ……そんなに乱暴にされたら、ボクのお尻、めくれちゃうから……もっと、やさしく……」
 なんて嘘つきなお姉さんなんだろうか。尻たぶの動きはそうは言っていない。むしろ、もっとはげしくシテと、前後左右に打ち揺らしながら訴えている。
 彼女の貪欲で卑猥な腰使いに、俺の我慢も限界だった。
「くぉおおっ……そろそろ、イキそうです……ッ!」
 叫んだ直後、頭のてっぺんから足のつま先まで、鋭い快感が電流となって駆け抜けていった。腹の上に精液が飛び散った。
「ちぇっ、もうイッちゃったのかい?」
 頭上から、あからさまにがっかりしたトーンの声がふりかかってきた。え、俺、けっこうガンバったんスけど……。
「はうう!」
 みっともない声をあげてしまった。
 美女が素股を再開したのだ。ぬれぬれの股に、俺のくたっとしている息子をしっかりホールドして。
 現金な我が愚息は、むちむちの股で扱かれた結果、瞬く間に息を吹き返した。
「さて、と」
 美女が腰を軽く浮き上がらせて、尻穴に埋まっていたディルドを自分で引き抜いた。ソレは俺の顔のすぐとなりに置かれた。目の端でとらえたディルドは、やっぱり相当デカイやつだった。大きさといい、長さといい、形状といい、コレ、アナル用じゃないだろ。こんなん挿れてたんかこのお姉さんは。
 馬乗りスタイルになった彼女は、臨戦体勢に入った俺の息子をアナルにあてがうと、腰を落として沈めていった。ディルドによって拡張済みのアナルは、ペニスを根元までやすやすとのみこんでしまった。けど、あんなにぶっといディルドを銜えこんでいたにも関わらず、腸壁は息子を苦しいくらいに締めつけてくる。
「大きさは及第点。あとは持久力だ。キミは一回出したんだから、今度はボクが満足するまで、我慢してみせてくれよ?」
 美女は肉食獣の眼をして舌なめずりした。
 いつのまにか、草むらの向こうが静かになっていた。ていうか、目の前の美女に夢中になりすぎていて、カップルの存在をすっかり忘れていた。
 てか、ぶっちゃけそんなのもうどうでもいい。
 今さらながら、ヤバい予感がしてきたのだ。眼を見て悟った。このひときっと、多分、絶対、俺みたいな一般市民なんかが関わっちゃいけない類のひとだ――と。
 だが、時すでに遅し。
 哀れな草食動物たる俺は、数時間にわたって貪られてしまったのであった。







2012/07/13 pixiv掲載
2012/11/09 加筆
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