淑女の遊戯












 とあるラブホテルの一室。
 イルミとクロロが見下ろす先には、まな板の鯉よろしく、下着姿でベッドに拘束されているヒソカの姿があった。
 彼女は、「特製」の革ベルトによって、両手をベッドの背もたれに、両脚はM字に開いた卑猥な恰好で固定されている。薄地のショーツの下では、クリトリスに押し当てられているローターが、せわしなく振動していた。
「そんなにジロジロ見ないでくれよ」
 ヒソカは甘えた声で言って、腰をもじつかせる。
 この上もなく恥ずかしく、不利な状況であるにもかかわらず、彼女の態度には、羞恥もなければ、緊張感のカケラもない。むしろ楽しんでいるようにさえ見える。
 もっとも、この奇人とそれなりに長い付き合いとなるふたりは、最初から殊勝な反応など期待してはいない。
 クロロは、空の小びんをゴミ箱へと放り投げた。中身は、数分前、ヒソカの秘所に塗りこんで使い果たした。
「そろそろ効き目が出てくる頃だ。普通の女なら、10分ともたない代物らしい。流石のお前でも、こたえると思うぞ」
 そう冷たく告げると、クロロはイルミとともに、部屋から出ていってしまった。
「……」
 ひとり残されたヒソカは、薄く笑って、高い天井を仰ぐ。
 彼女が何故、このような仕打ちを受けているのかというと……。








 先週の出来事だ。
 放課後の教室に、三人はいた。
「ああ……ずっと、この日が来るのを待っていたよ」
 イルミに背後から拘束されているクロロを前にして、ヒソカは淫蕩な表情を浮かべ、そう呟いた。
 単純な腕力ではイルミに敵わないことを知っている聡い処女は、拘束された時点で抵抗をやめた。
「イルミ。ヒソカに頼まれたのか」
「うん」
「有料だろ?」
「もちろん」
「なら倍の金を払う。手を離してくれないか」
「んー……ダメ」
「何故だ?」
「オレもさ、ちょっと見てみたいんだよね。クロロの恥ずかしいとこ」
 ヒソカによって、クロロは制服のブラウスのボタンを外された。ブラジャーをずり上げられて、形の良い白い乳房と淡い色の乳突起があらわになる。
 スカートもずりおろされた。
 黒のレースという下着姿に、イルミは、
「なんかイメージ通り過ぎて、面白みがないなぁ」
 と、評した。
 その「イメージ通り」なショーツも、ヒソカの手で脱がされてしまう。
 クロロの両脚の間に割りこんだヒソカは、切れ長の瞳を半月に細めて、初々しい秘所をみつめた。申し訳程度に生えている黒い柔毛を指先で撫で梳いて。陰唇を左右に広げて肉襞の内側をのぞきこみ、
「んん〜〜、美味しそう」
 と、紅い舌で上唇を舐めた。
「どこもかしこも綺麗で、なんだか妬けちゃうなあ。あと、同じバージンでも、クロロの方が小柄だからかな……こっちもイルミより小さい」
 女性器の感想をストレートに述べてくるヒソカに対して、共犯者は、
「比べなくていいよ」
 と、特に感情のこもってない声でこたえた。
 ヒソカが、シェービングジェルをクロロの恥丘に塗りたくり、剃刀をそっとあてる。
「じっとしててくれよ。イルミとお揃いにしてあげるからさ」
 刃が恥丘の上をすべり、黒い柔毛を剃り落としてゆく。
 クロロは抵抗しなかった。
 ヒソカが、クロロの下着で、肌に残ったジェルを丁寧に拭い取った。
 無毛となった陰唇を見て、イルミは言う。
「クロロってもともと童顔だから、こっちの方が似合ってる」
「満足か、イルミ。オレはもう、十分辱められたと思うんだが」
「何言ってんの。これからだよ」
 協力者が冷淡に告げるのを聞いて、主犯もわらう。
「くく、そうだよ。イルミの言う通り、これからが本番」
 と、クロロの股間に顔を近づける。ぴったり閉じている桃色の縦スジにキスをすると、
「楽しませてくれよ」
 と、告げて、よだれをたっぷりとまぶした舌先を伸ばした。
 縦スジをなぞるように上下にねぶる。舌腹全体で、ねっとり、大胆に舐めあげたりもした。
「……ねえ、ヒソカ。ちゃんと真面目にやってる? クロロ全然感じてなさそうなんだけど」
「痩せ我慢してるだけだよ。ちゃんとおつゆも出てきてるから」
「そうなの? あーよかった」
 ヒソカは両の親指で陰唇を左右にめくり拡げて、処女の肉襞を丹念に舐めほぐした。
 それから、舌先を膣口へとつっこみ、円を描くようにぐるりと回転させた。
「んっ」
 クロロが身じろいだ。
 触れられたことも触れたこともない場所を我が物顔で這う、温かく、湿った柔らかい感触。
 執拗で官能的な刺激を受けて、陰唇の先で肉の粒が芽吹いた。
「こっちも、ちゃんと可愛がってあげるよ」
 ぷっくりと膨れたクリトリスをヒソカが舌先であやすようにつついた。舌腹で撫であげ、たまに、前歯を軽くあてたりもする。
「クロロって着痩せするタイプなんだ。思ってたよりも胸、大きい」
 器用に片手だけを使ってクロロの両腕を押さえつけたまま。イルミは、自由になった方の手で、クロロの剥き出しの乳房を鷲掴んだ。
 瑞々しい乳肌は、滲んだ汗でしっとりと濡れていた。
「乳首だって、こんなにかたくしちゃってさー……」
 と、イルミは指腹で乳首を挟んで引っ張ると、ぐりぐりと揉み潰した。指戯に遠慮がない。
「くぅ……うっ、う……」
 イルミの乳首責めに合わせるかのように、ヒソカがクリトリスを前歯で甘噛みする。綻んだ秘裂から粘っこい愛蜜がとろりと溢れた。
「くくくく、本気汁が出てきた」
 嬉しそうにわらうヒソカ。
「あぁ……クロロのおつゆ、濃くって美味しいよ……」
 ヒソカは甘蜜の味に陶然としながらも、身悶える処女の腰はしっかりと抱きかかえて離さない。溢れ出てくる愛しい甘蜜をこぼさぬよう、クリトリスに鼻先を押し当て、処女の甘露をわざと音をたてながら貪欲にすする。
 一方、イルミはクロロの耳元に唇を寄せて、こう囁いた。
「オレ、クロロの今の気持ち、わかるよ。……ただアソコを舐められてるだけなのに、自分の身体が思うように動かなくなっちゃってさ、ムカついてるんだろ?」
 イルミの言葉は半分当たっていた。
 クロロは、膣内を蠢く舌の動きに翻弄されていた。予測不能の行動をとる小さな軟体動物。力が入らない。イルミの片手で押さえつけられているザマだ。逃げようにも二人にスキは無い。状況を打開しようにも、思考が途切れ途切れになってしまう。いいようにされている。
「い……か、げん……ぃ、はぁ、あっ、あ……」
 イルミの台詞に反論もできず、嬌声まじりの吐息ばかりが唇から洩れて。
「……は、ぅ……」
 その、微かな動揺を、ふたりが見逃す筈がない。
「こんなにスキだらけなクロロ、初めて見た」
「もう諦めて、ボクらに全部、委ねてくれよ」
 ――ちゅうううううううッ!
 ヒソカは秘裂を強く吸いあげた。
「みぁあッ、ぃいぃ……ッ!」
 クロロは白い喉をのけ反らせながら、初めて甲高い嬌声をあげた。
「はは、猫みたい」
 イルミが抑揚のない声でわらう。
 自分のからだを制御できないことに、クロロは焦れた。二人に触れられている部分が熱くてしょうがない。
 そして、彼女が自身の肉体の火照りを自覚したのを見透かしたように、ヒソカの愛撫が苛烈さを増してゆく。
「んく、ぅっ……う……ッ」
 膣内を舌でねちっこくねぶられて。クロロは喘ぎそうになる唇を噛み締めた。
「我慢しちゃ、あなたがツライだけだよ?」
 ヒソカのわざとらしい優しい声音。気遣うようなそぶり。吐息、声の振動にさえ、肉襞が悦んでしまい。下肢の火照りがどうしようもなくなっている。秘裂がひっきりなしにひくついていた。
「……は……ッ…!」
 背筋をかけるものが絶頂の兆しと、本能が処女に悟らせる。
 ヒソカの口唇と舌先の動きが、その執拗さは変えずに、よりはやく、小刻みなものへと変わっていった。
 イルミが、乳首をひときわ強く摘んだ。
「んンンン……ッッ!」
 迫る絶頂の濁流に、クロロは唇をひき結び、瞼を強く閉じた。
 内腿がビクビクとわなないた。
 ヒソカは溢れ出るイキ汁を口で受けとめ、すべて飲み干してしまった。
「ふふ……」
 身を起こし、スカートの中をまさぐり、ペニスバンドの留め具を外すヒソカ。
 処女のふやけた縦スジへ、黒い亀頭をあてがう。
「ちょっと大きめの穿いてきちゃったけど、入るかな?」
 にちゅにちゅにちゅと、潤んだ肉唇を上下になぞり撫でる。よだれと愛液でぐっしょり濡れた秘裂を軽く拡げて、掻き回し、勃起したクリトリスを押しつぶす。
「ふぁ……ぁぅ……っ……」
 硬い切っ先で刺激されて、処女は甘い吐息を漏らした。
 その蕩けた、無防備な姿にあてられたのか、ヒソカはすっかり発情しきっていた。
「ああ! いい! かわいいクロロ!! もう入らなくても挿れる!! イルミ、しっかり押さえててくれよ!!」
 ところが……。
「いや、オレの仕事はここまで」
「え?」
 イルミが、クロロの腕の拘束を解いてしまった。
 依頼人が睨む。
「ちょっとイルミ……。お金はちゃんと払っただろ?」
「うん。でも、これから先は、キミに依頼された“ちょっとした悪戯の手伝い”じゃ済まなくなるだろ? クロロがイクとこも見れたし……それにもう、今のクロロに触るの、リスクが高過ぎる」
 指摘されて、ヒソカはクロロへと視線を移した。
 下肢はしっかりホールドしているし、黒い亀頭は陰唇にピタリとついている。もう少し前に腰を動かせば、処女の秘裂を貫ける。
 しかし、クロロはいつの間にか、例の剃刀を握っていた。学校の近くのコンビニで買った3本セットで200ジェニーにも満たない安物だが、クロロが持つとベンズナイフと同じだ。表情も、数十秒前のそれとはまるで違っている。少なくとも、今まさに犯されようとしている処女の顔ではない。
「そんな怖い顔しないでくれよ。さっきよりも気持ち悦くなれるから」
「遠慮する」
 睨み合うふたりの傍らで、
「誰かこっちに向かってるね」
 と、イルミが他人事のように言った。
「四人かな」
 十中八九、クロロの親衛隊、もとい仲間だ。
 いつ連絡をいれたのか、もとから何かしらの指示をしていたのか……。
 いずれにせよ、中断は必須。
 極上の果実は、誰にも邪魔されず、じっくり味わいたい――そう判断したヒソカは、クロロを解放した。
 ふたりは窓から外へと抜け出した。
「……ハァー……」
 クロロは、床に背中をあずけたまま、天井を見上げた。





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