イルミの人生相談









 ある晴れた日の昼下がりのコーヒーブレイク中……。


「こないだの仕事で、親父とじいちゃんがそろって腰をやっちゃってさー……って、うわっ、クロロ汚い。ヒソカ、タオル」
「はい。クロロもタオル、はい。……それにしても、大変だねー」
「うん。でさー……ねえ、クロロうるさい笑いすぎ。ウチの大問題なのに、何がそんなにおかしいんだよ」
「大問題って、そんなに重症なの?」
「あれはしばらく動けないね」
「それは大問題だ」
「いや、問題なのはソコじゃないんだ。なんかさ、ふたりとも急に弱気になっちゃってさー……、後継者について、いよいよ真剣に考えるようになったみたいで」
「あれ? ソレってキミ的には良い傾向なんじゃないの? ふたりともその問題にルーズ過ぎるって、前に愚痴ってたじゃないか」
「オレが問題視してるのは、その後継者のコトなんだ。オレはキルアがいいって言ってるのに、あのふたり、キルアのコトはもう諦めてるのか、はやくも“次の代”に期待しちゃってるんだよ」
「え、つまり」
「孫。もしくは曾孫に」
「それはそれは……これまた随分と飛躍したねェ」
「たしかに、オレもキルアの子供なら、立派な後継ぎになれると思うけどさ」
「でも、キルアだってまだ子供なんだから、彼の子供に期待するのってどうかと思うなあ。そもそも、キルアって付き合ってる娘(こ)とかいるの?」
「……これは親父から聞いた話なんだけど、オレの留守中に、キルアが見舞いに来たんだって。で、その時に、三人で真剣に話し合ったんだって。親父はキルアに言ったんだ。“俺はもう長くない、せめて孫の顔を見てから死にたい”、って。そしたら、キル、なんて言ったと思う? “親父、アルカはまだ子供なんだぜ”……だってさ。なんでそこでアルカの名前が出るわけ? 意味わかんない。それについて兄ちゃんちょっとキルに問い詰めたいんだけど、連絡が取れなくって困ってるんだよね」
「ボクでさえ疑った時期があったけど……キミら、間違いなく兄弟なんだね」
「は? 当たり前だろ。……大体、アルカは、キルアには相応しくないよ」
「……はぁ……笑った……」
「あ、クロロ。もう大丈夫なのかい? ボク、あなたがあんなに笑うトコ、見たことないよ」
「オレもここ数年で一番笑った気がする。……だが、話は聞いてたぞ。――で、イルミはどうしたいんだ?」
「オレはキルアに家を継がせるって意志に変わりはないけど……今回のことで、たしかに“次”も問題だなって思いはじめてるとこ」
「というと?」
「子供、つくる気あるのかな、キル」
「あるでしょ、アルカと」
「ヒソカってばオレの話聞いてた? アルカはダメだって言ってるだろ」
「孫や曾孫に期待しているなら、イルミや他の兄弟の子供でもいいんじゃないか?」
「は?」
「そうだね、イルミならすぐにでも子作りできるしね」
「あーダメダメ。親父やじいちゃんにも頼まれたけどさ、オレは嫌だよ。結婚なんてめんどくさい。子供は欲しいけど」
「え、意外」
「カルトはまだちっちゃいし、ミルキは二次元の嫁たちを裏切れないとかなんかワケわかんないこと言ってたみたいだし」
「“みたいだし”?」
「親父が言ってた。じいちゃんがミルキにも相談したみたいでさー」
「相当追い詰められてるな、イルミの親父さんとジイさん……ッ」
「ちょっとクロロ、またコーヒーふき出したりしないでよね。あと、後でクリーニング代、請求するから。……てゆーか、前提として、まず相手じゃないの? いくらこっちの遺伝子が良くたってさ、相手が大したことない奴じゃ、生まれてくる子供だって期待できないだろ?」
「イルミ、お前には当分結婚は無理だ」
「なにそれ、なんで」
「イルミはどんな相手ならいいの?」
「とりあえず、試しの門は最低3くらいまで開けられなくちゃ話にならないね」
「ハードル高いな」
「えー? そうかな?」
「キミん家の門が開けられそうな女の子ってなかなか……あ。マチならきっと余裕そう」
「マチ?」
「ああ、そうだな。マチならイルミの条件クリアだ」
「だよね。可愛いし、強いし、可愛いしね」
「だから、オレそのマチってコ、知らないんだけど」
「ほら、こないだ、オレに手作り弁当を持ってきてくれた……。お前にも分けただろ」
「……あ! あの毒入りの」
「毒なんか入ってなかったぞ。……多分」
「ずるいなァ、ふたりとも。ボク、マチの手料理なんて食べたことない」
「じゃあ、今度オレから、マチに頼んでやろうか?」
「ホントかい?」
「ああ」
「……うーん、やっぱり遠慮しとくよ。いつかマチが、自分からボクのために手料理を振る舞ってくれる日が、来るかもしれないし」
「おそらく、千年待ってもそんな日は訪れないぞ」
「ねえクロロ、そのマチってコ、気が強いだろ」
「強いぞ」
「やっぱり。そういうコってキルの好みじゃないんだよね。性格は、まあオレの針で矯正できるけど、うーん……あ、でもミルキにならちょうどいいかも! ミルキってちょっと奥手だし、ああいうタイプの女の子に引っ張ってもらった方が良さそうだと思ってたんだよね。そうだきっと彼女はミルキにピッタ…」
「ダメ」
「駄目だ」
「なんだよふたりとも。彼女をウチに紹介してくれるって話なんじゃなかったの?」
「マチならあくまで試しの門が開けられそうだという話であって、ゾルディック家の花嫁候補として挙げたわけじゃない」
「そうそう」
「そうだったの。紛らわしいな」
「すまん」
「ゴメンね」
「……やっぱり、ここはキルアに家を継がせてから、オレがキルにぴったりな花嫁を見つけてあげるしかないね」
「そうだよイルミ」
「ああ、それがいい」
「ゾルディック家に相応しい花嫁か……難しいだろうなあ。いっそ、オレがキルの……」
「……」
「……」
「……ふたりとも、話聞いてくれてありがとう。おかげで素晴らしい解決策を見つけたよ」
「お役に立てて光栄だ」
「そうと決まれば作戦立てないと。クロロ、なんかいい作戦ない? アルカやその他大勢に邪魔されずに、確実にキルを攫う方法」
「あ、そう言えばクロロってクラピカにまんまと攫われちゃったことあったよね? どうやって攫われたんだっけ?」
「……」
「実行する時はヒソカも手伝ってね。どうせ暇でしょ?」
「暇じゃないよ。忙しくもないケド」
「手伝ってくれる?」
「もちろん」
「クロロ、ほら、黙ってないで教えてよ。どうやって攫われたの?」
「……」







2012/05/06 pixiv掲載
2012/11/06 加筆
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