ONE PIECE [LONG] | ナノ

今夜も、一緒にいてイイ?

「大将殴って許されるなんて、ベレッタぐらいだよ」

恨みがましい目で睨まれても私は絶対屈しない。

「殴られただけで済んで良かったじゃないですか。フツーだったらこうも行きませんよ」
「ていうか、おれはちゃんとお泊りの了承得たよ?それに抱き付いて寝たのはベレッタの方」
「引き剥がしてソファーに捨ててもらって良かったんですけど」
「あァ...それが出来たら苦労しなかったねェ」

充電が完了して覚醒した私がまず見たもの、それはソファーの上で私を抱いたまま寝てたこの人。
昨日、私のハンバーグを勝手に平らげて...もう一度調理するハメになった原因を作った男。その途中からあまり意識がなくて気付いたら朝が来たから本当に朝っぱらから叫び倒した。

「ほんと意外な二面性。可愛すぎてビックリ。お嫁さんに欲しい」
「お願いですから黙っててくれませんか?何だったら口に詰めものしてあげますよ」
「でもこっちもアッサリで魅力的。お嫁さんに欲しい」

そして、叫んだついでに殴ったわけだけど...それが今も彼の顔に赤く残されてる。
とっととその変質者を追い出して準備して出勤したわけだけど...まあこんな空気。恨みがましい目で睨まれて、これ見よがしに殴られた頬を冷やしてみたりしてる。さほどダメージでもないくせに。

「.........サカズキ大将に泣きついたら公開処刑になるかしら」
「発想リアルすぎ。マジで処刑されるじゃん」
「それを希望しています」

希望というより熱望に近いかもしれない。本当に、なんであの時ドアを開けてしまったのだろうかと悔やまれる。
手持ちの書類をいつものように片していれば自分の椅子じゃなく私の机に座った彼がいた。

「ねェ、今夜も泊まっててイイ?」

見上げれば気持ち悪いにやにや顔と目が合う。

「二・度・と・来ないで下さい。次は撃ちます。例え殺せなくても」
「じゃ、仕方ない。返事ちょうだいな」
「ですから二度とウチには来ないで下さい」
「違う違う。ソレじゃない」

それは置いといて、とジェスチャーする彼につい合わせて頷いてしまった。
泊まっていいか、二度と来るな、この会話はさておきとしても...何か返事をしなきゃいけないような会話をした覚えがない。というより意識が飛びすぎてて思い出せるのは酷い腹痛くらいしかない。

「お腹いっぱいになったら考えてくれるって言ったでしょ?」
「.........何をですか?」
「おれと、付き合うの。恋人として」

脳内で間抜けな鳥の鳴き声がしたような気がした。

「.........そんな話、しましたっけ?」
「したよ昨日。でも返事もらえなくって。襲わずに我慢出来たおれを褒めて欲しいね」

ガタッと音を立てて机から降りた彼は身を屈めて私の頬を掴んだ。私は机に向かったままで椅子に座ったまま、立ち上がることも出来なくなって...予想もしなかった行動に逃げることも出来ない。

「だって好きなんだもの。そのクールな横顔」
「でも、家での可愛い姿見てますます好きになった」
「はい。返事」

.........軽く、とても軽く面白いことを言う人だ。
それはあまりにも軽すぎて呆れるほど笑えるし笑えない。私をからかうにはネタ的にイマイチだと思う。それに、ノリノリできゃーきゃー言うわけでもないから...便乗もしない。近くで真っ直ぐ見てる彼に私も真っ直ぐ見つめて口を開いた。

「別に誰でもいいんでしょう?」

傍に置く人、付き合う人、遊ぶ人...と言えば何故かザックリ傷付いたような表情を彼が見せた。

「.........何でそう思うの?」
「口説きの名ゼリフ、色んなとこで聞いてますよ」
「あー...まァ、色んなとこで言ったねェ」
「でしょ?皆の大将さん、皆の恋人、皆が恋人ですから私は不要でしょ」

博愛主義者を責めてるわけではないけど、その中に一人でも反した動きをする人が許せなくってこんなことしてるんだったら私は逆にソレを許さない。勝手な博愛主義は勝手にしてもらってて結構だけど便乗するつもりはないしヘラヘラ持ち上げるつもりもない。好きじゃないし。それに私はオンリーワン主義で博愛主義じゃない。結構、堅物なんだ。

「.........あの台詞、ベレッタが見てるとこでしか使ってないって知らないでしょ?」
「はい?」
「ベレッタが靡かないから。ヤキモチ妬かないかなーって」


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