ONE PIECE [LONG] | ナノ

#03

「カシ状態?何だそりゃ」

てか、死んでねェってどういうことだ?生きてるって...アイツ、銃乱射してんだぞ?
撃たれたヤツは大体倒れちまってピクリともしなくなる光景をおれは見て来たんだ。アレを死んでねェって言うのは絶対おかしい。つーか、足で蹴って確認したこともあんだぞ。それでも撃たれたヤツは何も言わなかった。動くこともなかった。声一つ上げずにただ転がってた。

「仮死状態ってのは見た目は死んでる状態のことだ」
「見た目は、」
「ベレッタはそういう状態にすることでおれらもソイツらも怪我しねェようにしてるんだよい」

.........何だソレ。

「なんで?」
「医者だからだろうねい」

アバウトな返答だ。それに...マジで言ってんのかよ。

「アイツが銃をあんだけブッ放して何故流血しねェか考えたことねェだろ」
「まァ...疑問には思ったことあるけど」
「殺傷能力ゼロの麻酔銃だからだ。但し、その麻酔は強烈だけどねい」

麻酔銃...そういやアイツの銃は何かおかしかった。カタチも変わってんなァとは思ったけど他にも音とか匂いとか弾、とか。
派手な音を出してブッ放つのが銃使いの醍醐味だってイゾウは言ってたが、アイツのは随分と静かだったのも思い出した。いつ撃ったのか、近くに居ても分からねェ時だってあるくらい...だから相手が倒れて「ヤラレタ」っていつも思ってたんだ。

「じゃあ死体の確認してんのは...」
「生存確認と処置のため。人によっちゃショック死する可能性もあるらしい」

一人ずつ、診て回ってんのは死の確認だとばかり思ってたが...生存の確認だったのか。

「なんで、言わなかったんだ?」

人殺しを簡単にやって退ける医者だとおれは思ってた。平気な顔して人殺しといて...医者だと言ったアイツに酷く矛盾を感じていた。
もっと言えば、恐怖すら感じてた。平気な顔してたから...いつかはソレがおれらの方に向けられて、でもおれらは医者だと思ってるからそうなっていたとしても気付きゃしねェんじゃないかって。

「海賊の船医、だからだろ」
「それって、どういう...」
「おれらは海賊だ。来る者、引かねェ者には容赦しねェ。アイツはそういうのの中に居る医者だ」

あァ...それを船医って言うんだろ?んなことくらい分かってる。

「海賊団の船医っつーのは所属してるヤツを助けるのが仕事だ」
「まァ、な」
「けど時には"助かるのに助けれねェヤツ"が出て来る。"見捨てなければいけねェ患者"が出て来る」

それは...相手のことを指してるってことくらい、おれにも分かった。
馬鹿がオヤジに向かって来ておれらに向かって来て返り打ちにされるなんざ日常茶飯事で当たり前みてェなこと。そりゃ...そういうのが目の前に居てもおかしくない。傘下に下れば手当はしてもらえるだろう、おれみたいに。けど、そうもしない、オヤジも気に入らないとなれば...そのまま海に放り出される。

「海賊の船医だからな、そこは冷酷になりゃいいんだが...それをアイツだけが出来ねェって言い張った」

おれらも助けたい、だけど傷付いた相手も...見過ごせない、か。

「だから殺したフリをして助けてたってわけだ。勿論、オヤジやおれらは黙認してる」
「.........それで"邪魔するな"か」

それで...何の躊躇もなく微塵の迷いもなく表に出す感情もなく引き金が引けたのか。
一歩間違えば自分が撃たれてしまう現場で、相手は殺すつもりで来ているにも関わらずアイツは一人で、命懸けで人を守ろうとしていたのか。

いつだってそんな顔...一度もしてなかった癖に。


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