ONE PIECE [LONG] | ナノ

#02

翌朝、何故かクルーたちが全招集されて甲板にズラリと人が並べられた。
勿論おれもマルコに叩き起こされて半ば不機嫌に出て来たわけだが...まさかこんなに集められているとは思わず驚いた。で、

「.........むさ苦しい」
「オイオイ、その内の一人に過ぎねェってことを忘れんな」

口元押さえて呟けばサッチにしばかれた。
色事で寝不足なヤツもいれば飲み過ぎで二日酔いのヤツもいるってのになんでこんなことになってんだ?滅多にない大集合っぷりだ。マジで男ばっかで見るに堪えねェ。マジで気持ち悪ィ。

「で、なんでこんなことになってんだ?」

船内への扉に近いところ、集うオッサンたちを眺めながらサッチに聞いてみた。

「予防接種だって。あー...注射だ注射」
「.........はァ?」
「先の島でヤバイ病気が流行ってるらしくて先以っての予防と対策をするんだと」

ってことは、この大量のオッサンたちを船医たちがてんてこ舞いで診てるってわけか。で、ブスブス注射しまくってるとは大変だ。
いくら丈夫なおれらでもヤバイ病気にならねェ保証も、それで死なねェ保証もねェし。いや待て、むしろ...何かそのテの話を最近聞いたような...あァ、アイツだ。アイツが病気になっちまうヤツを持ってるんだっけか。

「出来れば注射は勘弁なんだがなァ」
「何だサッチ、お前注射とか怖ェのか?」
「射されるより刺すタイプなんだ」
「あー...ハイハイ」

下ネタかよ朝から。そこら辺はまァ適当にあしらって放置。
どうも順番待ちをしている風でもないこの状況下でバタバタしてるのはやっぱ船医とナースらしい。ちょいちょい見える第1から第16までの全医療班の姿、これを見るとかそれこそ珍しい光景だ。基本引きこもり集団だし、何してるか分からねェ団体だし。

「あ、サッチ隊長!エース隊長!」
「ベレッタ」

強いて言うなら、コイツだけは言うほど引きこもりじゃなかったか。

「ごめんなさい。隊長たちは先行して診てたんですけど見落としてました。本当にすみません」

纏められた髪、白衣に手袋にマスク...今のコイツは完全に医者モード。普段はおどおどしてることの方が多いのに今は少なからずとも声もデカくて通る。目しか見えねェ状態だけど分かる気迫。有無言わせない、引いたりもしない医者モードだ。

「頑張ってるねェ。で、おれらどうしたらいいんだ?」
「あ、そのまま待って頂けますか?こちらで準備しますから」
「オーケー」
「エース隊長も、そのまま待って頂けますか?」

医者モードと猟奇モードの矛盾。
此処でなければ...持った銃の引き金を何の躊躇もなく、微塵の後悔もなく引ける。一切の慈悲もなく手に掛けれる医者。

「あー...」

見てくれが見てくれなだけにタチが悪ィ。

「アンタに診て欲しくねェな」
「え?」

矛盾をさておいて見るにはあまりにもタチが悪ィ。

「だってサイキンカンセンってヤツで殺されそうだし」
「お、おいエースっ、」

サッチが慌てておれを制しようとするけどもう口にしたもんは消せねェ。
でも間違ったことは言ってねェつもりだ。そのサイキンカンセンとやらの死体をもう何度となく触れた体で病死する可能性のあるものに触れたヤツだってのは本人に聞いたわけだし。それでおれらが死なねェってわけじゃない。勿論、死ぬってわけでもねェけど。

「.........分かりました。別の船医さん呼んで来ます」
「あ、ベレッタっ、」
「すぐお連れしますから」


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