ONE PIECE [LONG] | ナノ

真夜中におやすみを...

「ではおやすみなさい」という合図と共に消灯、彼女の気配はリビングから消える。
静まり返ったリビングは毎回虚しい気持ちになるが、見える景色の違いに心音は高鳴る。それに...借りてる掛け布団から彼女の香りがして一層気持ちが高ぶる。だけど、そんなこと彼女には関係ないらしい。今、彼女の部屋のライトが落ちた。

彼女が言うとおり、今の状況が嫌なら帰ればいいんだろう。
帰る家がないわけじゃないし、泊まれる職場だってある。一人で眠れない子供でもない。気に入らなければ...どうにでも出来る。
でもそれをやっちゃったら今以上に虚しくなりそうな気がして怖いんだ。そこそこ年取ったオッサンなのにさ、情けない。

ソファーに腰掛けたまま、ぼんやりと暗がりを眺めて考える。
彼女にとってのおれという存在について。どういう意味を含んだ好意を持ち合わせているのか。
おれはアレよ。物凄い邪な感情で押さえ付けたいくらい愛しちゃってると思うのよ。でも、その位置にまで彼女の感情が達していないことくらい分かってる。そもそも一方通行から始まってるわけだから今の状況は少なくともマシな方。向こうには間違いなくおれの気持ちは伝わっている、はず。

「.........はァ」

虚しいのか切ないのか。こんな感情忘れたもんだと思ってた。
年を取ってもこの感情だけは変わらないとか...情けないとはちょっと違うけど何とも言えねェ。

「眠れないんですか?」
「.........ベレッタ?」

暗がりに見える、パジャマ姿の彼女。暗いのに慣れちゃってるからハッキリと見える。

「私も、何処ぞの大将さんの所為で眠れないんです」
「え?それって夜の色々を期待し―...」
「違います。普通に人の気配で寝れないだけです」

いつも通りの彼女が何事もなかったかのようにスッとおれの横に座った。
静かな闇の中、隣同士、お互いのぬくもりを感じる位置。

「大将さん、質問いいですか?」
「その前に名前で呼んで欲しいんだけど」
「却下します」
「そこを却下するとは...で、何?」
「なんで私なんですか?」

ハッキリと告げた言葉。驚いて彼女を見た時...おれの方を見ることなく彼女は自分を守るように膝を抱えていた。
まるで子供のように、口調とは裏腹に自分を小さく見せるような行動に少しだけ驚いた。

「なんで、かァ...」
「雑な扱い受けてますよね。マゾですか?」
「いやいや、それはないない。どちらかと言えば―...」
「それ以上は結構」
「.........はい」

なんで、なんでかァ。
一目惚れには違いない。見た目と言動のギャップに惹かれた。次に会った時はクールなもんだったけど。
またあの笑顔みたいなァ、とか、懐いてくれねェかなァ、とか考えてたっけ。もう一度、あの日の彼女に会いたいとずっと見てた。ずっとずっと見てるうちに、あの日の彼女じゃない君にも惹かれてることに気付いた。手厳しいけど優しい、冷たいけど温かい、そんな君に。

「理屈じゃないね」
「.........そう、ですか」
「気付いたら愛おしくて仕方ない。どうしても傍に居たくなる」

そんなガキみてェな恋を今更するとはおれにだって予想出来なかったんだ。

続く沈黙の中、不意におれの肩に彼女がもたれかかった。ぽすん、と、まァ背中だったけど。
何も言わずに彼女がおれと接触するのは初めてだと思う。それに心臓が酷く、恐ろしく反応した。

「しばらくこのままで居てもいいですか?」
「.........あァ」





真夜中におやすみを...



このまま彼女を抱き締めようかどうかを悩んだ腕が宙を舞う。
気付いた彼女が右手だけを掴んでぬいぐるみを持つように抱えた。それが合図、それが起爆スイッチとなって無理やり彼女に口付けた。
その時気付いた。照れて恥ずかしがる彼女の顔に。それが更に新たなスイッチを押すことになるとも知らずに。

... title by 超絶頭突き式新企画
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