ONE PIECE [LC] | ナノ


いっぱいいっぱいの積

買い物から帰るとシンもエアも姐たちとの買い物を終えたらしく船に戻っていた。
早速、姐さんたちによるお着替えショウが行われたらしく、ついさっき買ったばかりの服を着て見たこともないオモチャで遊んでいた。こう見れば普通の子供で、こうであって欲しいと願う姿でそこに居て...何となく嬉しかった。

「「セトちゃん!!」」
「ただいま。沢山買ってもらったか?」
「「うん!」」
「買い物は楽しかったか?」
「「たのしかった!!」」

ならいい。「良かったな」と二人の頭を撫でて俺も一度荷物を置くべく船内へ。その後を一緒に付いて来るところを見ると、どうやら姐さんたちと買って来たものを俺に見せたいらしい。何も言わず笑ってるだけだが間違いないだろう。
姐さんたちがどの程度の金額を手に出掛けたのは知らないが、少なくとも俺に手渡された資金は1000万ベリー。マルコが更に追加予算で1000万を用意してたがそれを使い切ることはまずないだろうと踏むが......部屋中に死ぬほど物が溢れてたらどうしようか。

広い船内の比較的に広い一室、そこが俺らの部屋。
少し...いや、何か複雑な色をした不安が過ぎる。小さく深呼吸をして部屋の扉を開けた。

「「にもつ、たくさんきたよ!」」

ああ、そうらしい。出掛ける前には無かった代物が置いてあるな。
ただ広かっただけの部屋に揃えられたのはシンとエア用だろう小さな二つの机と椅子、それと俺用と思われる机と椅子がある。それから足りなくなるだろうと踏んでか二人用のタンスが一つずつ並べて置いてある。ご丁寧にネーム入りだから分かりやすい。服とオモチャを買うよう指示があったのは聞いていたが、これは...誰の計らいだろうか。
そのお陰だろう、二人の荷物はきちんと収納されていて二人はそこから色々なものを出してきた。今までに欲しいとは言えなかっただろうオモチャ、ぬいぐるみ、本...それを並べて見せてくれた。

「こんどサッチがよんでくれるって!」
「ボールあそびもサッチがしてくれるって!」

お人形遊びもサッチ、怪獣ごっこもサッチがしてくれると二人は言う。サッチサッチ...出てくる遊び相手が全てサッチっていうのがまた...

「......サッチが言ったのか?」
「「んーん、マルコ!!」」

だよな。本人の意思関係なくサッチに押し付けたとしか言い様がない。だが俺も便乗しておこう。
二人は買ったものを出しては見せて仕舞って、また同じことを繰り返していく。それを見ながら俺は自分のものを片付けていく。適当に買った服、唯一サイズを合わせて買った数足のブーツ、そしてこの先必要なもの。必要最低限は確実に揃った。あとは...残った金を返すだけだ。

「あ、セトちゃんのおようふくカッコいい!」
「ほんとだ!ベルトがいっぱい!」
「......そうだな。金返しついでだ、着替えてオヤジんとこにでも行くか」

初めての仕事がコレだったからな。成果くらいは見せねえと。
今着れそうな服を持って浴室へと入った。今までの服を脱ぎ捨てて新たな服と...馴染みの"片翼"を身に着けると、少しだけ鏡の中の自分が笑ったようにも見えた。



船長室へ行くとオヤジと姐さんたちの姿があった。
どうやらシンとエアの買い物に付き合った姐さんたちはダウンしたらしく、じゃんけんに運良く負けた姐さんたちがオヤジの看護をしていた。

「「おじーちゃん!!」」
「おう、セトが帰って来たようだな」
「「うん!ちゃんとにもつ、みせたよ」」
「そうかそうか。よくやったなァ」

笑ってるところを見ると家具の計らいはオヤジ、か。

「あの家具はオヤジからだったのか?」
「あァ、船大工に作らせた。出来は見ちゃねェがな」
「十分すぎだ。有難う」
「そりゃウチの船大工たちに言ってやれグララララ!」

足元に攀じ登る二人を抱えながらオヤジは豪快に笑い、俺の姿をただ見る。新調して来た服を見てるんだろうが...まあ想像とは違うもので多少は驚いてるんだろう。姐さんたちは多少どころではなかったらしくまだ何も言葉を発して来ない。
今まで着ていた服はあくまで適当で好きも嫌いもない服、島にソレしか無かったから着ていただけのもので今のは同じ適当に選んだとはいえ、結構好きな物を選んだつもりだ。ただ、少し派手な気もしないでもないが悪くは無いと思ってる。黒のジャケット、白無地のインナー、黒のスボン、黒のブーツ...うん、色だけで言えば地味で問題ない。まあ...後は服の装飾だから仕方ねえ。

「マルコから預かった金...使い切れなかったから返すよ」
「グララララ!アレだけあって使い切れたら大物だ」

だろうと思う。姐さんたちもきっと使い切れてないだろうな。
とりあえず残った金を置いて改めて頭を下げれば「気にすんな」と笑われ、「それが出来たら苦労はしねえ」と溜め息を吐く。本当は、自分たちの稼ぎで買うことが出来たんだ。少なくともそれでやっていこうと思っていたが叶わず、かといって俺たちの稼ぎを手にしようとしないオヤジが居て...何かこう、モヤモヤする。要は、きっとまだ色々と慣れてねえんだと思う。こういうカンジ、こういう雰囲気に。

「さァて、孫も可愛くなったし息子もマシになった。この島でのおれから仕事は以上だ」
「「おじーちゃん、ありがとう!!」」
「おめェらの笑った顔が一番の褒美になったぞ、グララララ!」

溺愛にも程があるな。けどオヤジがそれで良くて、シンとエアも嬉しいならそれでいい。
と、少し安堵していれば...強烈な殺気が背後から迫って来る感覚にゾッとして振り返った。いつ復活したのか、ディア姐とミネ姐だ。形相が鬼だ、折角の美人が台無しになるくらいの表情とか今だけにしとかないとクルーの連中が泣く、絶対泣く。

「セトちゃんカッコ良くなったけど可愛くないじゃない」
「やっはりエース隊長じゃダメだったのね。もう一回私たちと行きましょうよ」
「......断る」

もう十分すぎるくらい買ったし、姐さんたちとは出掛けたくない。

「オヤジはもう仕事は"以上だ"と言った。姐さんたちがもがっても行かねえから」

フン、と顔を背ければブーイングだ。そうまでして俺の服装を可愛くしたいのかと思うとゾッとする。そのうちに薬とか盛られて寝込んだところを襲われて人形のように着せ替えられるんじゃないかと心配になる。そういうことをし兼ねないんだよな、この人たち。
と、いうよりもそもそも俺がそうであることは「隠しておきたいこと」だということを把握してるんだろうか。そこんとこをフォローするどころかクルー全員に曝け出そうとしてる節の方が断然強い気がしてならねえんだが。

「セトちゃんのケチー」
「何とでも。俺はサッチじゃねえからオモチャにはなんねえよ」

もう、誰かに遊ばれて踊らされて苦しい目に遭うのは御免なんだ。例えそれに死ぬほどの悪意が無いとしても、だ。

「じゃあ俺は船大工に礼を言ってエースたちの仕事手伝うから。シンとエアを頼んだ」

色々言われる前に退散してしまえ。俺は二人を置いて部屋を出た。
部屋を出たと同時に聞こえるナースたちのブーイングとオヤジの笑い声...大方「逃げられたな」くらいの会話をしてのことだろう。思いっきり溜め息が出る。まあ...隠すより曝せよ、と言いたいのは分からなくもないがもうコッチの方が長い。今更という気持ちの方が俺にはデカい。
少なくとも、女より男の方が生きやすい世界だ。それは、ここでもきっと変わりはない。



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