ONE PIECE [LC] | ナノ


悪魔のむとこに命中する

午前10時、場所甲板。
ここに来る前、シンとエアは姐さんたちに預けた。マルコが「作戦を練る」って言ったから二人は邪魔になるかもしれないという俺の判断だったが...ドアを開けた瞬間、二人を連れて来なかったことを後悔する。全く以って癒されねえ。目を閉じて深呼吸して...そのまま何も無かったことにして部屋に帰ろうかとも考えた。

「おいおい、来た早々逃げるヤツがあるか」
「賞金首のオッサン多すぎ。普通に逃げるわ、死ぬから」
「......誰もお前のタマ取ったりしないよい」

1から16までの隊長が雁首揃えて仁王立ちしてる。しかも全員武器持ってる。
これが数日前なら確実に、全力で、一心不乱に逃げてたと思う。どう考えても勝てる気がしねえ。

「よーし、セトも来たことだし作戦会議に移るよい」

移るよいって...出来れば一旦武器は仕舞ってもらえないだろうか。チラチラ動いてるのが非常に気になる。
特にイゾウ、銃をクルクル回すのは構わないが途中で止めないで欲しい。いつ発砲されるのかと思うとビクビクする。

「唐突だがお前、能力以外に何かあるか?」
「.........手と足、頭などがある」
「んなことは知ってるよい。そうじゃなくて武器、何か使ってた試しはあるのかい?」

剣だとか銃だとか槍だとか...そういうのを使ったことがあるか無いかと言えば、ない。

「.........無さそうだな」
「あ、弓を教わったことがある」

結構昔の話になるけど1年、くらいだろうか。弓を使ったことがあった。

「弓?荷物に無かったぞ」
「随分昔に折れたから捨てた」
「捨てんな、修理しとけ」
「そこは大人の事情があったんだ」
「てめェはガキだ!」

だって矢はすぐ無くなるし折れるし、とりあえず経費が掛かるから捨てたんだが。
はあ、と溜め息を吐いたマルコが武器庫から弓を持って来るようビスタに指示した。まだ一度も入ったことはなかったがそんなものまであるんだ...と感心する。大体自分の武器は自己管理するわけだから大砲クラスのものは準備してても小さなものはないと思ってた。
......それこそ手入れとかしてるんだろうか。してなかったらまた折ることになるが、仕方ないか。

「で、誰に教わったんだ?」

誰に、か...もう随分昔になるから生きてんのかな。アレ。

「当時、100は軽く越えてるだろうバアさん」
「.........嘘は止めろい」
「いやマジで。昔は戦士だったらしくて凄かったぞ。あのババア」

俺の倍とかじゃなく生きたヨボヨボかつボロボロのバアさんだったけど動きは結構俊敏で体力もババアとは思えないほど凄かった。ただ何を言ってんのか分かりづらかったから「きちんと歯を入れろ」とは言ったが...アレできちんと歯があったことにも驚いたよな。
そんなバアさんに1年ほど教わって、色々あって別れて、すぐにその弓は折れた。よく考えたら使い方は教わったが手入れを教わった覚えがなかったんだ。それが一番の問題だった。

「ババアは分かった。で、今も出来そうか?」
「さあ。別にソレなくても稼げることが分かったから捨てた後は使ったことがない」
「......自過剰にも程があるよい。まァ、やってみせろい」
「的は?射るだけなら誰でも...そこにいる自過剰エースでも出来るぜ」
「さり気に話題にも登ってない俺の悪口言うな」

ビスタが持って来た弓を受け取って、目の前にガンッと置かれた樽いっぱいの矢を手に取りつつ的探しを始める。
矢を放つくらいなら数分もあれば誰でも出来る。ただ的には当たらないかもしれないし意味不明な方向にも行くかもしれないけどな。あくまで「武器」としてどう使えるかを見たいなら的は必要になる。まあ刺されば何でも構わない。

「............ジョズに打て」
「了解。ジョズ、甲板端まで移動」
「ちょっと待て!何気に心の準備を要する!!」
「ならさっさと準備してくれ。それと...刺さると痛いから注意」
「刺す気マンマンじゃねェか!」
「当たり前だろ。お前の役目は的だぞ」
「役目じゃねェよ!」

あー...朝のサッチ並みにうっとおしい。さっさと移動すればいいのに。
渡された弓の弦を弾けばそこそこ手入れされてるらしくよく伸びそうだ。多分、前に使ってた人が居たんだろう、引きも悪くない。

「.........刺さったらダイヤモンド・ジョズじゃなくなるよい」
「あ、そういうこと」
「理由もなくお前を指名してないやい!さっさと移動しろ!」

渋々、嫌々ながらに移動するジョズを見ながら今度は矢を確認する。こっちも...折れそうにはしてない。

「おい、何本も一気に打つのか?」
「一回に付き7本射る。うち6本は必ず命中する...予定だ」
「予定は未定な」

うっさい、笑うなビスタ。

「準備は出来た。ジョズ、死ぬ準備は出来たか?」
「刺すどころか殺す気か!危うかったら逃げるからとっととやれ!」

ああ、ジョズもうっさい。6本当たると思え。

手の中に収まった弓が懐かしい。束ねて持つ矢が、懐かしい。風がほのかに吹いてるから丁度いい。
目指す的は甲板端のダイヤモンド・ジョズ。風も距離も何となく確認した。後は...この懐かしい感覚に任せて天に射抜くだけ。


「"破魔...乱れ撃ち"!」





.........良かった。ちゃんと刺さった。



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