ONE PIECE [LC] | ナノ


海賊になっても姐さんが怖いのです



ミネ姐さんが言った「セトちゃんってば男装止めないの?」→別に男装してるつもりはない。
ディア姐さんが続けて「ねえねえお化粧とかしてみない?」→嫌だからお断りしました。
ケレス姐さんが「ついでに私たちの服とか着てみない?」→心底嫌だからお断りしました。
ユノ姐さんが「あ、その前にブラを新調――...」→全力で逃走しました。

なんたってあの人たちはいつもこうなんだ?
あれから特に変わりない日常が始まって誰も何も気にした様子もなくいる。まあ、強いて言うなら「本当に女か?」くらいの視線は感じるが取り立てて気にしてない。そんな中で唯一、彼女たちだけがこうして俺を追い回してはオモチャにしようとしている。

「セトちゃーん。イイ子だから出ておいでー」

.........全力で断る。




船内をウロウロする姐さんたちの目を掻い潜って俺は静かに物置の中で息を顰めた。
多少埃っぽいが小窓から入る光があり、物も多いから隠れるのに最適だと気付いたのはちょっと前のこと。その時は軽く掃除した程度に終わったが、こんなことになるのなら今後は入念に掃除しておく必要があるな...なんて、そんなこと考えながらただ膝を抱えた。

この立ち振る舞いは...わざとでも意図的でもない俺の自然体だ。それの何がおかしいのか。
無理もしてなきゃ自分的に違和感もない。おそらく他の連中も違和感を感じてない。だったらこれでいいはずなのに...何故、姐さんたちはあんなにキラキラしながら俺を追いかけて来るんだろうか。いつぞやは寝込みも襲われたし。

「.........はあ」

参った。正直、参ってる。相手は姐さんたちだから怖くて手も出せないし。

「いっそ観念して従がってやれば?」
「んなの死んでもお断りだ」

化粧されてぴらぴらした服着せられて?想像しただけでゾッとする。

「だったらそう言ったらいいんじゃね?」
「言って聞くような人たちじゃないのをお前も......って!」
「ん?」

ハッと横を見ればいつの間にかエースがいた。どうやらこの場で寝てたらしく、その髪はうっすら白い埃が付いている。

「お、驚かすなよ」
「んだよ、フツーに返事しときながら」
「まあ...確かに」
「ハハッ。素直になって来たなァお前」

お前みたいに馬鹿正直じゃないだけで俺は元から素直な方だ馬鹿。と、溜め息。
一方、溜め息を吐かれたエースはというと気にした様子もなく大きな欠伸をしてバリバリ頭を掻いていた。付いてた埃がふわり、飛ぶ。エースも転がるんだったらやっぱり掃除しといた方がいいのかもしれない。この埃一つで姐さんたちが勘付きそうだ。

「つーか、ディアナたち相当しつこいぜ?一回くらいスカートくらい穿いてやったら?」
「嫌だ」
「即答かよ。別に減るもんじゃねェだろ?」

減る減らないじゃない。嫌なもんは嫌だの世界だ。
そりゃ昔は穿いたこともあったが今となっては"風使い"なんだ。自分の起こした風であんなもんがふわふわした日には...だ。そっちに自分が気を取られちまう可能性だって否定出来ない。それに化粧だって同じだ。俺は戦闘員でゴツイのと混じって動くんだからそんなもんしなくていい。戦うのにソレは必要ないんだ。まあ...イゾウは別格で趣味だから何とも言わないが。

「だったらお前が代わりに穿けよ」

姐さんにもそう言って突き出してやる。

「あー...おれ一回穿いたことあるから」
「え?」
「ディナたちに捕まっちまって無理やり穿かされた。アレ、気持ち悪ィよな」

.........全力で逃げる方法をマジで考えねえとマズそうだ。
このエースにスカート穿かせるとかあの団体の考えてることが全く分からねえ。そりゃ面白いだろうが余興にもなんねえはずだ。それはエースでなく俺でも同じだ。その瞬間だけは面白いかもしれないが...

「.........意味分かんねえ」
「あ?ディナたちか?」
「まあそれもあるけど、わざわざそんなもん着せてどうするんだろう」

俺がこうでなければ普通に着てただろう服。俺がこうだから意固地になって着せたがっているだけ...という風にはあまり見えない。ただ着せ替えごっこがしたいだけならそれこそ仲間内でやればいいだけの話で俺は全く関係ないと考えてる。

「はァ?フツーに可愛いセトが見てェんだろ」
「.........見てどうするんだ?」

可愛い...見てくれ変えても俺は言うほど可愛いもんじゃない。その自覚は存分にある。
仮に、俺が諦めて彼女たちに従って...その後何になる。自分の意思と異なるものを着て晒した後、それがどうなる。その答えを求めてエースに尋ねてみれば即答でこんな返事が返って来た。

「萌える」
「.........それこそ迷惑だな」
「おれもイイと思うんだけどなァ。花柄ワンピースのセト」
「せめてそこは無地にしとけよ!」






海賊になっても姐さんが怖いのです



「あーもういっそ鍛えに鍛えたらジョズとかになんねェかな」
「.........何故ジョズ」
「あそこまでいけば姐さんたちも諦めるだろ」
「まァ...確かに」


BACK


(9/22)
[ 戻る付箋 ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -