ONE PIECE [LC] | ナノ


初めましてから違和感



「行くぞエリス!」
「はい!」

と、ウチの若い二人が奇襲を掛けて来た敵船に乗り込む姿をただおれらは見ていた。
隊長たちにも勝るとも劣らない戦力。だが見た目が見た目なだけに毎度毎度、不要かつ無駄な心配をしちまう。
クルーは仲間であり家族だ。出来れば怪我なんかされたかねェし、させたくねェ。死なれても困る。けどあの二人ときたら他のクルーを頼ることなく突進しては大暴れして来る。本当にエース以来だ。見ていてハラハラするのは。

大きく振り回される"ハルバード"と援護する竜巻にも似た"風"―――...仕掛けて来た船はこの二人によって完全に沈められた。





ほんの数週間前、「彼女が"白兵"だ」とセトは顔色一つ変えずに彼女を紹介した。
例によって例の如く、ウチの戦闘力拡大のために強いやつを"勧誘"して引っ張って来る作業でまた......誰もが度肝を抜かれただろう。

「エリスです。よろしくお願いします」

まただ、また若ェのが来た。それも女。何でまた"白兵"ってのに細っこいヒョロヒョロした女がソレなんだ、と思うほどの。
近接戦闘のプロで槍とも斧とも取れる何とも言えない武器を使い、少し前まで一国の護衛隊長をやってた"白兵"ってのがめっぽう強い、と確かな筋から聞いて、わざわざセトに"勧誘"に向かわせたんだが...まだ若い娘とは聞いてない。そう、"賞金稼ぎ"をしてたセトを勧誘した時と同じ感想だ。"護衛隊長"なら少なくともジョズくらい体でゴツくイカついオッサンであって欲しかった。こんな何処ぞのお嬢様みたいな綺麗どころとは...

「.........また見た目で判断すんのか?」
「え?」
「ああ、気にしないでくれ。こっちの話だから。で、どうなんだ?」

.........セトの目はマジだった。それもそうだろう、自分たちも強引に"勧誘"されたもののおれらに歓迎されず逆に小馬鹿にされて...という過去がある。それも今の状況と同じ、セトの言う通りで「見た目で判断した」結果、おれらが「ごめんなさい」と謝ることとなった。
だが仕方ねェってもんだろうよい。おめェらは完全に子供だった。チビでガリ、特にセトは男のなりしてたからガキにしか見えなかった。それからすればセトの連れて来た"白兵"はまだアレだ、子供子供してねェからそういう扱いにゃならんがお嬢様風なのは否定出来ないだろ。お前も「は?」くらいは思っただろうが。そう考えりゃ疑うもんは疑う。

「いや......けど間違いねェのかい?」
「ああ。一戦交えて来た。確実に本物」

交えて来た、とか恐ろしいことサラリと言ったよい。それに笑顔で頷くヤツもそれなりに恐ろしい。

「.........で、馬鹿でけェって噂の得物は?」

どう見ても身軽で武器の類は見当たらねェのが気になる。
そう思って聞けばセトが「エリス」と声を掛け、彼女は「はい」と返事をしてズボンのポケットから何かを手にした。棒のようなものにも見えたが...それは武器とも言えねェもんに見えた。が、その「何か」は次の瞬間にカタチを変えた。

「"ハルバード"です」
「.........槍、か?」
「そうとも言えますし違うとも言えます。槍型ですが穂先に斧と爪が付いてます」
「ほォ......で、どんな仕組みで出て来たんだい?」
「節目が取れるんです。そこに強力なゴムが仕込んであって解放すると瞬時に合体するようになってます」

と、立派な得物の説明してるが見た目は本当にただの娘で何とも言い難い。これだけ立派なのを振り回すかと出来るのかい?と聞きたいとこだがセトの目が心底怖い。疑うならブッ飛ばすくらいの目をしてるんだよなァ。これじゃ色々聞き辛ェよい。

「あー...セト」
「何だ?」
「直接話したいから外してくれ」
「.........分かった」

席を外したのを確認しておれは彼女、エリスと話を始めた。

"白兵"はその名の通り、近接戦闘用武器を使った戦闘のことでエリスはそれを最も得意としていた。
母国で先代より受け継いだ"ハルバード"を手に国の護衛に努めていたが国の体制に反感を持ち、護衛隊長まで登り詰めるもある日を境に辞めてしまったという。それ以来、国からの弾圧と迫害、元部下たちからの攻撃で色々疲れたと話す。そんな生活にうんざりしていたところにおれらがやって来て...二つ返事でここまでやって来たとのこと。

「苦労人だねい...」
「そうですね。そこそこ苦労してます」
「.........それにしちゃ明るすぎだろい」

不思議な空気を持つ、女。それがおれの最初の印象だった。
エリスはそのままオヤジの"娘"となり、セトが連れて来たことから二番隊に配属された。



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