ONE PIECE [LC] | ナノ




「グラララララ!!そうだな。おめェらから見ればおれはジジイだなァ!!」
「うん、おじーちゃん」
「おっきいおじーちゃん」
「今まで生きて来て"おじーちゃん"と呼ばれたこたァねェ」

......そうだろうと思う。命知らずな子供ゆえの暴言だ。

「それも悪かねェな"息子"よ」
「......」
「おい、お前に言ってんだぞセト」
「はっ?俺かよ!」

ダイナミックに笑って小さく手招きをしてるのに気付いたシンとエアが俺の足元を離れて一斉に走り出す。

「お、おい!」
「「しろいおヒゲのおじーちゃん!」」

キャーキャー騒ぐ二人が白ひげの元に走ったと思えば遠慮もクソもねえ、白ひげの足によじ登って遊ぼうとしてやがる。
たまったモンじゃねえ!そのまま捻り殺されても俺はどうにも出来ねえぞ!と言ってやりたかったが、そんな二人を抱き上げて膝に座らせた白ひげは...驚くほど優しい顔を見せた。子を持つ親の、顔だ。

「孫も悪かない」
「おじーちゃん」
「おヒゲのおじーちゃん」

......気付けば腰を抜かしてる自分が居た。

白ひげは仲間を何よりも大事にしてると聞いていた。仲間を想い、仲間の死を許さない。何かあれば5万もの兵力が一気に襲いかかる。だから弱い者は手を出さない。仲間は...仲間であって家族、白ひげは...親、なんだ。

「さっきの戦い、窓から見てたぜェ」
「みてたの?」
「おお。危うくこの船が沈没しちまうとこだったなァ」
「ちんぼつ、てなあに?」
「船が沈んで無くなっちまうことだ」
「......わるいこと、した?」
「いいや。沈んだら沈んだで新しいのを作ってただけだ。悪くないさグララララ!」

すっかり白ひげに懐く二人。腰を抜かした俺の代わりに回収したのはエースだった。

「おじーちゃんはセトとも話があるからエースちゃんと遊びに行くぞ!」
「「えー」」
「またサッチおじさんに馬になってもらおうな」
「「ならいく!」」

そう言うと腕を広げたエースの方へと二人が飛び移った。何処まで懐いてんだコイツら...
ここに連れ出された時のようにエースの腕の中、にこにこしながら俺の横を通り抜けようとする二人は、楽しそうで。

「ちょっと待ってくれ」

聞かなければいけない、そう思った。

「シン、エア。この船が気に入ったか?」
「「うん!」」
「お兄ちゃんやおじーちゃんと一緒に居てみたいか?」
「「うん!」」
「そうか...」

ズキリ、痛むものがあった。

二人は笑って肯定、それだけで十分だった。だから...「また遊んでもらって来い」とだけ言った。
エースが「よーし行くぞ」という声と共に騒ぐ二人が遠のいてバタンと音がして、しばらくすると静かな空気が部屋全体に流れた。

部屋に残ってるのは俺と白ひげと不死鳥だけになった。

「セト、だったなァ」
「......ああ」

重い空気、何とも言えない圧力...今にも潰されそうだ。

「おめェも含め全員が自然系の能力者らしいな」
「そう、らしい。あいつらは数年前に拾った子でその時から能力はあった」
「孤児か...おめェは?」
「俺も...気付いた時にはあった。孤児だ」

だから賞金稼ぎをやってるんだ。他に生活の手立てがねえ。
運がいいことに全員能力者で全員自然系で相性も悪くなかった。ただ惨事が起きれば大事になるがそれでも、生きてくのに必要だった。

「そうか。なら余計だな。おれの家族になれ」
「......」
「不満か?」

でも正直、分からない。

「まァ、どうせ船は出ちまったんだ。次の島までに考えるがいい」
「......いや、シンとエアはあんたの"孫"にしてもらいたい」
「あ?」
「あの二人には"家族"は必要だと前から思ってた」

独りで、生きて来た。そんな俺はどうでもいい。
あの二人は幼すぎた。独りではないけど二人だけで生きていくには...辛すぎる。だから一緒に生きた。だけど、あんな子供のうちから賞金稼ぎをさせて、意味も分からぬままに人を傷付けさせて......人として、このままでいいのか悪いのか。何も分からないからこそ出来れば、温かいところで生きて欲しいと思ってた。

「あの二人は力になる。だから家族として迎えて欲しい」
「おめェはどうするんだ?」
「俺は...俺だ。どうするも何もない」

とても大きな場所で沢山の人と共に笑って、生きて欲しいと思ってた。

「あいつらの答えは"一緒に居てみたい"だ」
「あァ、そう言ったな」
「まだ子供だけど、頼む」

無邪気に笑う子供たちと同じようになれずに二人で手を繋いで我慢を続けて来た。
そんな姿を俺は見ているしか出来なかった。出来る限りのことをしたつもりでも、結局は俺と同じものを育てているだけだと本当は知っていた。押し寄せる孤独、迫り来る苦しみ、信じるものは自分しかない。

子供は子供。俺みたいにならずに笑って生きて、人を信じて生きて欲しい。でも、どうしていいか分からないんだ。


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