まだ肌寒い夜は寄り添って
珍しく窓から光が射す前に目覚めた。
一度寝たら最低でも6時間は経たないと目を覚まさない私が何故目を開けたか...起きた瞬間は分からなかった。だけど右半身に感じる熱が何となく原因だとぼんやりした脳で考えた。
「.........?」
布団と共に寝返りを打とうとしても布団が引っ張れない。
重い。熱持った右側に掛かる布団が重い。ついでに瞼もまだ重い。
「な、に...」
「.........起きたのか?」
「ん...」
「だったら入れろ。おれもこのままじゃ風邪をひく」
風邪は良くない。風邪は...他の人まで巻き込むから良くない。
「.........風邪、」
「医者でも風邪はひく。だから入れろ」
「.........医者、」
うん、医者だって人だから風邪はひく。医者の風邪...良くない。けど、この船の医者は風邪とかひきそうもない。風邪がわざわざ寄って来そうもない人...
「.........ん?」
もう一度、重すぎる瞼を持ち上げて、今もまだ重い右側に目を向ける。
すると随分と顔色の悪そうな人がジッとこっちを見ていることに気付いた。見覚えある仏頂面...
「.........キャプテン?」
「寒いから入れろ。何度も言わせるな」
「.........何、してるんですか?」
そう、この仏頂面はこの船の船医で船長だ。
「って、本当に何してるんですか!?」
「ぎゃあぎゃあ喚くな。寒いから来ただけだ」
「はいい?寒いからって...ベポのとこに行って下さい!」
「もう此処に来たから無理だ。黙って入れろ。命令だ」
「命令って、」
「別に襲ったりしねェ。暖取らせろ」
大きな欠伸をしながら勝手に布団の中へと彼が入って来てベッドがギシッと鳴った。
私の真横、わざわざ私の方を向いたまま目を閉じた彼はゆっくりと呼吸してる。どうやら本気で暖を取るつもりらしい。
「.........信じられないっ」
「.........それはお前を襲わずに寝るおれに対しての言葉か?」
「違います!」
「だったらこのまま寝かせろ。おれが風邪ひく」
知るか!と怒鳴り散らしたかったけど、私もそれなりに眠い。でも横には理解不能なキャプテンがいる。
「置き物だと思え。おれもそうする」
「.........ほんと、信じられない!」
私がそう思う分にはいいけど、キャプテンに言われたくない。
本当にどうしようもなく非常識な人に背を向けて布団の端をぎゅっと握り締めて目を閉じる。
明日、ペンギンにきちんとキャプテンの管理をするように頼んでやる。
title by シュガーロマンス
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