ONE PIECE [SHORT] | ナノ

我儘のレベル

「.........よォ」
「あ、スモーカー。久しぶり」

手直ししたばかりの商品を念入りに検品中に彼はやって来た。
相変わらずの無表情だけどそれにプラスして随分とまあ荒れた御様子。

「十手が折れた。修理しろ」
「.........またあ?」

ああ、原因はコレか。
カウンターにドンと置かれた十手、それは綺麗なまでに真っ二つになっていて何とも言えない。

「あーあー可哀想な十手ちゃん」
「硬度を上げろ」
「馬鹿言わないでよ。現状で最高レベルよ」

そうスモーカーに告げれば「そうか」とだけ呟いて近くの椅子に腰掛けた。
海軍御用達の装備屋で対能力者用装飾品を扱う店は何もウチだけじゃない。正式に軍から指名を受け、海楼石の支給を受ける店はそこそこ存在していて...中でもウチは売り上げは最下級、何故指名されるの?というくらい店。なのに、この人は此処へ好んでやって来る。

「なら少し太くしろ」
「本気?前もそうしたじゃない」
「それが何だ」
「無茶すると十手じゃなくて棍棒になるわよ」
「何だっていい。てめェは言われたようにすればいい」

.........相変わらず横暴だ。何なら持ち手も海楼石にしてやろうか。
私は能力者でも何でもない一般人だから効果がどれほどあるのかは分からない。でも、効果があるからこそ重宝されているということは分かってる。

スモーカーは能力者だ、きっと持ち手を海楼石にしたら私より弱くなっちゃうかもしれない。

「三時間は掛かるわよ」
「構わねェ」

あらあら珍しい。いつもなら時間短縮出来ないのかって睨むのに。
中将ともなれば少しは余裕が...ってわけじゃないだろうけど、とりあえず今日は余裕があるらしい。それはそれで私としては助かる。

「そう。だったらその頃に...」
「此処で待つ」

はっ!?

「連休をもらったんでな」
「.........何も出ないわよ」
「気にすんな。さっさと仕事しろ」
「ハイハイ」

ぽっきり折れた十手を預って、さてさてどうしようと私は悩む。
背中に視線を浴びながらの作業はそこそこプレッシャー。店内に広がりつつある葉巻の煙もそれを後押しするカタチで効率が悪くなりそう...

「オイ」

モゴモゴしてたら野太い声が背を貫く。

「やっぱ二時間で終わらせろ」
「はあ?」
「残り一時間は飲みに付き合え」

彼はそれだけ言うと重い腰を上げてさっさと店を出て行ってしまった。
つべこべ言わずにやれよ、何を言おうが聞く耳は持たないぞ、ってことだろうか。何にせよ去ったプレッシャーのお陰で少しは効率良く仕事が出来る...だろうか。


(6/7)
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