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Happy birthday to you.

私の誕生日はいつも雨だ。
特別な意味も時期も何も関係なく、ただただ偶然に私の誕生日はいつも雨なだけ。それは何処に居ても、何をしてても。きっとそれがプレゼントなんだと思う。

「それにしてもツイてないわよねェアンタ」
「そう?私は雨、好き」

皆が私の誕生日だと宴をやってくれてて私のテーブルには大好物がいっぱい。勿論、サンジのはからいってやつ。でも結構ルフィとかブルックの胃袋に消えたけど。
本当なら外で大宴会してるんだろうけど雨の所為で室内で。それがどうも皆には不服らしい。

「そう言うと思ったわ」

ほら、と手渡されたのは真っ赤な傘。

「毎回毎回ずぶ濡れだと困るからね。皆で買ったのよ」

と、ナミは大袈裟なジェスチャー付きで説明してくれた。
傘、傘かあ。正直、あんまり好きじゃないけど好意は好意。つまりは雨の日に自分から甲板に出ても良いってことだ(雨の日に甲板に出ようとするとナミから説教喰らう)。これは大事にしなければ。そんな気持ちで受け取った。

「有難う」
「言っとくけど!風が強い日はダメだからね!」

.........ちっ。やっぱダメか。
一瞬脳内で傘で風を受け止めて甲板を物凄い勢いで滑ってくビジョンが浮かんだのになあ。
まあ、そんなことしたら折角の傘がボロボロになっちまうからしないけど、それでも何か残念だ。

「今日は風無いよな?」
「ええ。でもまァ、今日はあと数時間もすれば雨も止むわ」
「ゲッ、なら早速使ってくる!!」

真っ赤な傘を片手にダッシュする。
いつもだったら「ちょっと待て」の一言が入るのに今日は誰も止めたりしなかった。
これぞ誕生日マジックってやつ。皆が「仕方ないわねェ」と苦笑しているけど私は気にせずにこにこで「行って来ます」と甲板へと飛び出した。

私は、空から降りて来るものが好き。
雨も雪も雷も風も好きで、皆は外に出られないと憂鬱な気持ちなるけど私はそんなことなんてない。むしろ、それはそれで楽しんで進んで外へ出る。今だってそう。真っ赤な傘の上に落ちて来る雨の音が楽しい。

「.........オイ」

雨音の中、人の声がした。
傘を片手にぼんやりと甲板のど真ん中で突っ立っていた私の真横、無理やり傘の中に誰かが入って来た。

「お前なァ、もっと入口近くにいろよ」
「.........ゾロ?」

ゾロだ。少し濡れてる。
えっと...何しに来たんだろ。そんなに大きな傘じゃないから入って来ても結局半分は雨に降られているけど。また見張りってやつかな。よくゾロが監視役に回されてるんだよね。

「今日も見張り?」
「あァ。馬鹿は見張らねェと海に落ちるからな」
「仮に私が海に落ちたとして、迷子馬鹿が助けられるとは思えないね」
「んだと、このアマ、」
「ああ?フッ掛けたのはそっちだろ?」

決して大きくない傘で聞く雨音の中、見上げて睨んだ顔はいつもより近い。

「.........無駄に背デカいな」
「ばァか、おめェがちっちゃいんだろ。ほら!」

ゾロの投げやりな言葉と同じくらい投げやりに突き出されたのは真っ赤な靴。

「レインブーツだとよ」
「.........くれるの?」
「傘やってもどうせ靴濡らすだろ?だから、やる」

赤い傘と赤いレインブーツ。

「.........ありがと」
「3倍にして返せよ」
「ナミか!!むかつくから死ぬほど腹巻き買うからな!!」
「死ぬほどはいらねェよ!!」

狭い傘の中でいつものやり取り。
お互いに馬鹿馬鹿言い終えた後、ゾロが小さな声で「誕生日おめでとう」と呟いた。




Happy birthday to you.




「ところで、何で赤なんだ?」
「馬鹿が何処に居ても目立つように、だろ?」
「.........」
「見つけたらおれはまた見張りだ。だったら先に見つけてやるさ」
「.........アンタ見張り好きなの?」
「誰もんなこと言ってねェよ、ばァか」

マイペースなゾロ
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