EVENT | ナノ

の世界

Ubrall sonst die Raserei.
――それ以外は、狂気の沙汰。



.........君は、悪い事をしたんだよ。


「わ、私は、そんな事してません!」
「んー...君も君の義父も軍はずーっと警戒してたんだよ少佐」
「何故です!私たちはずっと人のために...っ」
「スパイとして働いてた?そうだね海賊もまた人だと君たちは言っていた」
「.........っ」

極秘書類が一冊、軍の監視下にありながら消えた。
それは...おれたちも内容を知らされる事の無い重要な資料で昔から存在している閲覧禁止の書類。目を通せた者は僅かと聞く代物。それが先日...忽然と姿を消した。

年寄り共は慌てた。だが公にする事も出来ない。
誰にも知らせられないその書類はその存在自体が極秘で、有る筈の無いモノとして存在していた。一介の海兵には知らせていない、知られる事は無い、知る筈の無い書類だった。

「ねェベレッタ少佐。人を裏切るってどんなカンジ?」
「私は軍を裏切ってなんかいません!」

それが消えた。それは...全てを混乱させた。

「だったら義父が裏切ったって事?」
「有り得ません!義父は間違いなど犯さない!」

混乱は、人々の平常心を簡単に打ち砕く。
疑心暗鬼になり、全てが疑わしくなる。真っ直ぐな忠誠心でさえ、偽りに見えてしまう。

「.........その義父も幽閉されたよ?」
「なっ、」
「インペルダウン。LEVELはいくつだったかなァ」
「何故です!私たちは何もしていない!」

疑わしきは罰せない...なんて嘘。疑わしきはこうして拘束される。

「.........証拠がある」
「証拠...?」
「君たちが書類を盗んだ」

それの真偽は関係なく拘束される。
勿論、それが冤罪であっても揉み消すだけの力を持つ者の指示なのだからどうしようも無い。

「書類...?何の事です?」
「極秘書類。中を見たかい?」
「そんなもの知りません!何ですかその書類!」
「軍の全てが記されている。全てを揺るがす軍の全て」

なーんて、言われているだけでおれも見た事が無い。
大体想像は出来てるけど見たところで脅されても脅しにもならない。そんなもの見たくも無い。

「そんなものが......」
「あるよ。で、君たちが隠した。何処にあるの?」
「私たちではありません!」

拘束されて尚、無罪を主張する。
当然だろう。やっていないのであれば。それが君の正義。

「.........君の父上は処刑されるだろう」
「え......」
「彼もね、書類を知らないと話してる。だけど証拠がある。免れないよ」

白い壁に映し出されたのは、とある場所のとある廊下。
日付はつい最近のもの。そこには...一人の中年男性が映っている。海軍服に身を包んだ...一人の男性。

「監視電伝虫が捉えた映像。義父が書類を持ち去った証拠」

その手には大きく「極秘情報」と記されたケースがある。
大まかに段階はあるけど、少なくともこのケースに入っている情報は極めて重要な物。簡単に持ち運ばれては困る。だから敢えて大きく記されてる「極秘情報」と。

「.........それは、」
「ん?」
「貴方が義父に頼んで運ばせた...G5エリアでの失踪事件の資料じゃ...」
「あらら。君たちは親子は緘口令も守れないの?」

ぐぐっと唇を噛む君。それは賢い選択。
如何なる関係においても重要な業務内容に関しては口外しないのが軍の決まり。罰金なんか無いけど...その分痛いお叱りを受ける事になる。そう、最初に手渡された書類にも書いてあった筈だ。

「まァ確かに。おれが頼んだ仕事。でもこの後に無くなったんだよねェ」
「冤罪です!この資料は貴方の元へ確かに渡されている!」
「うん。確かに貰ったよ」
「ならば違うと分かっているはずっ」

真剣に、涙を零さぬよう我慢して訴える君は...美しくてソソられる。真面目な分、悔しい。悲しい。辛い。色んな感情が入り混じってるのが分かる。だけどその感情は全て...義父の汚名返上の為のもの。

それが、どうしようも無くおれを苛立たせる。

「......君は何も聞いてないんだね」
「......何を、」
「君の義父は話の分からない人だった」

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