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#03

しまった、としか言いようがない。
ちょっとコンビニへ行こうかなーと思って扉を開けたら、何やら今にもインターフォンを押そうとしている勧誘の人と出くわした。これって運命ね!と言わんばかりのマシンガントークが始まってすでに10分は経過している。当然、話は一つも聞いていない。

(.........本格的にヤバイなあ)

開かれたパンフレット、ゴージャスな指先がとっっっても素敵な見出しを指している。

【幸せになるための三ヶ条】

いやいやいや、こう見えて私はこれで十分幸せですけど?
とか言えない空気。でも、話を真面目に聞く気はないから言葉はどんどん右から左へ。頷くことも出来ない状況だ。

「失礼だけど、貴女学生さん?」
「.........いや、」
「あらお仕事されてるのね。お給料はいかほど?」

しがないアルバイトの給料を聞いてどうする!!
にっこにこしながらトンデモないこと聞いてくるとは...てか、どうしよう。正直、もうヤバすぎて死にそうなんですけど。誰でもいいからヘルプ!!

「.........あれ?」

神様キター!!!
ゴージャス指先から目を離して声のした方向を見れば......あの人だ。
例のお隣さん。神様は意地悪ですね...彼は彼でちょっと、ねえ。
物凄く警戒している危険人物だけど今日だけはちょっとすがりたい。お願いです助けて下さい、と。
そんな目線を送ってくればゴージャス指先が気付いたらしく、彼女もまた振り返った。

「.........あらぁ?」
「あらら、今日はお出迎えしてくれたんだね。ただいま〜」
「もしかして...旦那様?」

違います!!けど今はそれでもいいです!!!

「お、かえり、なさい」
「お土産買って来たよ〜」

.........何か悟って下さったらしい。

ゴージャス指先を無視して私と彼女の間に入り込んだ彼。やっぱり...デカい。

「で、どういったご用件で?」

彼の大きな背中で全く彼女が見えなくなってホッとしたのも束の間、どういう経緯か何があったのかも分からないけどゴージャス指先が小さな悲鳴を上げた...気がする。

でも何でだ?おっかない顔でもして威嚇したのだろうか。

「.........もう大丈夫だよ」
「へ?」
「帰っちゃった」

そんなことをぼんやり考えてる間にどうやら彼女は去ったらしかった。

「あ、ありがとうございました」
「いやいや、偶然戻って来ただけだから」
「でも助かりました。話がすっごく長くて...嫌になってたんです」
「だろうねェ。もう次からは来ないから心配しなくていいよ」

え?ど、どういうこと?

「あらら、そろそろ行かねェと。またね〜」

ひらひら大きな掌を振って、ダッシュで部屋に戻ってく彼。
私が呆然としてる間に今度は部屋から出て再度ひらひら手を振って行ってしまった。彼は一体何者なのか。

「.........」

もうコンビニに行く気分じゃなくなって私は部屋へと戻った。

2015/02/25 17:32
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