#05
「意外と世間って狭いんだな」と彼が言った翌週のこと。
世界はとてつもなく広いのに世間は、いや、巷はとても狭いものだと知った。
「「「.........あっ、」」」
ドアを開けて暖簾をくぐったすぐ先、視界に入ったのは見覚えのある女の子。当然、向こうもチラリとこっちを見た途端、声を挙げた。ついでに宍戸っちも。
「ビビちゃん!?」
「お、いらっしゃい」
「本当に来たわ!」
「だから言ったじゃん。毎週この時間に来るんだって」
何、何の話?
凄く嬉しそうにしてる彼と手招きをするビビちゃん。まるで私たちと待ち合わせしたみたい。やっぱり可愛いなあビビちゃん...って、宍戸っちが微妙に硬直してる!ヤバイ、笑える。
「この間は有難う。とても楽しかったわ」
「私もすっごく楽しかった!また行こうよ!」
「ええ!是非また行きましょう!」
とか言いながらも気になるのは...
ビビちゃんの横にいるひたすらご飯を食べてる男子。いや、それ以上に気になるのはその横にいるコワモテなお兄様方...もしや彼らが噂のSPってやつ?この間のショッピングに行った時は居なかった、はず、だけど。
「あ、彼はルフィさん。此処に来たら偶然居たの。友達よ」
先客が友達だったのね...って全くこっち見てくれないけどどうよ。
「この人は宍戸っち。腐れ幼馴染み」
「.........ども」
うーわー緊張してるし気取ってるよ宍戸っち。顔面白すぎでしょ!
「初めまして。エースさんから話は聞いてます」
「え?」
「テニス、お強いんですよね」
「あー...違う違う。周りが強いの。ま・わ・り」
とか言ってもいつもの調子で怒鳴ったりしないとかどんだけ緊張してんのよ。笑える。
まあ、此処まではいいんだけど...うん、そろそろ触れさせてもらおうかな。
「で、あの、そちらの、御仁方、は」
「えっと...私のボディガード、なの」
.........う、嘘じゃなかった!!!
「ごめんなさい。でも、彼らは邪魔しないから」
そういう問題じゃないよビビちゃん!!!
と、叫びたい気持ちは山々だったけど、無言でお辞儀をされて引き攣って笑みを浮かべてお辞儀をし返すくらいしか出来ず(多分宍戸も)...その光景を見た彼が影でクスクス笑っていたことに気付かなかった。
2013/06/29 17:28
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