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帰り際、気付いていたが敢えて触れなかった件に触れてみた。
触れてみたら触れてみたでムカッとしたのか、跡部の表情は一層険しさを増した。
なんでそんなにキレてんだよ!と突っ込みたくなったが…そうする前に跡部が続く言葉を吐いていた。




それでもそれはいつものこと




「まず朝の出来事を思い出せ」

まるで落雷をバックにしたような跡部の一言。
どうやら不機嫌の基は朝の出来事から始まるようなんだが…

「朝、は…別にフツーに学校来たぜ」

練習のない日だったから普通に登校した、はず。
あーでも珍しくジローが起きて歩いてたからジローと途中から一緒だったな。ある意味ではフツーじゃねえか。
そん時に突然「おめでとー」ってジローがはしゃいだお陰で自分の誕生日を思い出したっけか。
すっかり忘れてたんだよな、自分の誕生日とか。あー10月来るからテスト近くなんなーとは思ったけど。

と、総合して考えても跡部がキレてる原因に思い当たるものはなく、もう一度「朝はフツーに来た」と念を押した。
すると、その返答もまた気に喰わなかったのか、ピクピクッと口の端が揺れたのに気付いた。

「な、なんだよ…」
「……分かった。なら昼休みを思い出せ」
「昼休み。昼休み、なあ…」

屋上で弁当食ったな。いつも通り仲間で食ってた。
で、岳人から「俺のおかずがプレゼントだー」とか言われて弁当箱に無理やり唐揚げ投げ込まれたな。
便乗して忍足や長太郎たちも投げ込んで来て…何もかも一緒くた、味までごっちゃになっちまった。
そんな弁当の上にジローのヤツがチョコを乗っけようとして、それは流石に全力で止めた。
ご飯の上にチョコとか有り得ねえだろ!って。その怒鳴った瞬間に口の中にチョコ突っ込まれたけど。

……って、この一連の流れは跡部も知ってるだろ。その場に居たんだから。
「敢えて思い出す必要もなくないか?」と返答すれば今度はピキピキッと額に青筋が浮かんだ。

「だからよ、何キレてんだお前…」
「次だ次!てめえ、午後の授業サボったろうが!」
「は?何で知ってんだ!?」
「俺様の眼力なめんな!席から裏庭が丸見えなんだよ!!」
「……どんな視力だお前」
「授業サボって何してやがったんだ!」
「あー…昼寝、した」

弁当のおかずが増えすぎた所為か、すっげえ眠くって授業どころじゃなくて昼寝した。跡部の見たっていう裏庭で。
そこはジローのテリトリーで当然、ジローもまたその辺でサボると決まっていて…昼休みから継続して一緒だったな。
「せんせーに見つからない場所知ってるよー」って言ってた割に跡部に見つかるような場所だったとは…
今度は上からの死角も考えろって教えてやらねえとマズそうだ。

「つーか、跡部だって時々サボってんじゃねえか。説教する気か?」
「説教じゃねえよ」
「じゃあ何なんだよ…」
「次だ次!てめえには思い出させたいことが山ほどある」
「ゲッ、まだあんのかよ…」
「練習中を思い出せ」

練習中…ってコレも跡部の視野内で動いてっから少なくとも行動は分かってるはず…
そう思いながら跡部の顔を見ればガッツリ怒りが全面に押し出されてるもんだから何も言えなかった。

練習といえば…普通にダブルス練習してたよな。
ただ、岳人たちが調子悪いとか何とか言って相手がジローと若っていう異様なペアとだったけど。
これがまあ本当に気の合わない二人で30分も経たないうちにコンビ解散。で、監督の指示からペア交替になった。
「パートナーの弱点を指摘し合うのもまた必要なことだ」とか何とか言って指示通り、ジローと組んだ。
滅多にタブルスでは動かねえヤツだけどジローと組むのもまあ悪くなかった。何だかんだでフォローに動いてたしな。

と、脳をフル回転させてとりあえず思い出してみた。

「思い出したけど?」
「分かったか?」
「は?」
「ここまで思い出させて何も分かんねえのかよ!」

……だから、お前がキレてんのと俺の一日の行動と何の関係ある。

「分かんねえよ!」
「分かれよ!」
「つーか、お前こそ"おめでとう"の一言くらい言っとけよ」
「言いに朝行ってみりゃジローとイチャこいてたんじゃねえか!」
「別にイチャこいてねえし!」
「昼は昼でチョコを"あーん"とかしてもらってやがったろ!」
「記憶捏造すんな!ニュアンスちげえよ!」
「その後、裏庭の死角にシケ込みやがって!」
「シケ込んでねえ!!」
「その後もイッチャイチャイッチャイチャしやがって…!」
「だからイチャこいてねえし!」
「ああん?アレが素だってのか?日常だってのか?」

日常だとか非日常だとかそんなん関係ない。まず、解釈自体が間違ってんだよお前!
ジロージローって、お前もアイツがどんなヤツなのか知ってるだろうが。普段通りだったじゃねえか。アイツ。

「そんな甘々な友情あってたまるか!」
「甘々とか言うなフツーだフツー!」
「アレが普通だって言うんだあればヤツを沈めてやろうか?」
「沈めんな!何嫉妬してんだ。とりあえず"おめでとう"くらい言え!」
「言わねえよバーカ!」

ぶりぶり子供みたく文句を言う跡部にでっかい溜め息が出る。
嫉妬、か…どうしようもねえもんをよくもまあぶつけてくれるもんだぜ。と、少しだけ呆れて…少しだけ苦笑する。

「あー…」
「何だあ?」
「まあ、アレだ」
「アーン?」
「俺が悪かった」

少しだけ苦笑して、目の前でムキになってる跡部を見てたら…苦笑がカタチを変えてることに気付いた。
大人ぶって上から目線で文句ばっかのどうしようもない俺様のくせに、今日だけは何かいつもと違う跡部が見れた。

「てめえ…"仕方ねえから俺が折れてやるよ"な顔してやがる…っ」
「別に。ただ今まで一番のプレゼント貰った気がするぜ?」


――プレゼントは間違った嫉妬。
だけど、それが俺だけに向けられるのであれば、それでいい。



Let's congratulate it by the best!
主要メンツ誕生祭2011

2011.10.04. 杜山さまへ捧げます。

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