テニスの王子様 [DREAM] | ナノ

ちょっと晴れすぎた空
(短編シリーズ 仁王)

「あの子がフラれた」と、
昔あったヒット曲のようなことが起きた。
それは彼女の胸中とは裏腹にどうしようもなく晴れた日のことで、俺の胸中とよう似た天気の日のこと。
鼻歌混じりに追い掛けてしまったんは、俺があのヒット曲の主人公とは違う性格だからやろうか。

俺はすぐに行動するのが好きじゃき。


「もっ、一人で、泣きたかったのにっ、」
「それをさせとうなかったんじゃ」
「こんな、とこでっ、」

泣くつもりはなかった、らしい。
ボロボロと涙を流す志月を見て、アイツの為の涙だと思えばムカついてゴシゴシ袖で拭いた。
だって悔しかろう?アイツ、俺から比べたらクソじゃ。何も分かっちょらん。彼女のちょっと男前な性格こそ可愛い虚勢じゃて気付いとらんかった。

「だってアイツ...可愛くねえんだもん」

でっかい声で彼女を馬鹿にしたアイツをブン殴るのはあまりにも簡単で、ノすにはあまりにも弱すぎて…多分、明日には真田の耳に入って怒られるんじゃろうなあ。

「い、痛いよ仁王…」
「じゃあ泣き止め」
「な、泣けとか、泣くなとか、意味、分かんないっ」

泣くとこは純粋に見たいと思ったんは事実じゃ。
けどな、失恋でアイツを想って泣くんは嫌じゃ。勿体ない。

「もう、放っといてよ、」
「嫌じゃ」
「泣くの、止めるから、」
「嫌じゃて。俺の目標、達成しちょらん」
「もう、私、泣いたじゃないっ、見た、でしょ?」

しゃっくり混じりに言われてもなあ。
こんな状況下でも頑張って虚勢張る女の子がどうして可愛くないことがあるんか、逆にアイツに聞いてみたいのう。

「泣き顔見るだけが目標じゃなんじゃ」

俺に背を向けたまま、俯いたままの志月がピクリと動く。
本当はもう、気付いとるはずじゃ。何を思って何を考えてこんなことをしてるか、なんて。

「泣き顔見て、泣き止ませて、」

くるりと反転させて俯いたままの志月の顔を持ち上げる。

「俺の方を向かせるんが目標じゃ」
「に、お…」
「アレより俺はイイ男じゃ。色んな意味で」

上辺しか知らんかったアイツは何も知らずに終わらせてしまって馬鹿なことをしたと思えばいいんじゃ。
俺は、等身大の志月を知っとるから…簡単に諦めたりしない。

「泣き止んだらちゃんとコッチ向いて?」
「……仁王」
「そのままの志月が好きじゃけ、俺の方向いて?」

知っとるよ。ワガママ言うのが恥ずかしゅうてグッと堪えてたんも、甘えたいのにうまく言えんと俯いとったんも。
俺じゃったら気付く、絶対。だから、そのままでええよ。

ハイ返事!とパシーンと頬を叩いて彼女に言うたら少しだけ顔を歪めて、でも少しだけ困った顔して「うん」と小さく答えた。
それに対して「よし、捕まえた」と言えば彼女はまた少し涙ぐんで「馬鹿」と言ったから…抱き締めた。


※2012年新規、仁王


(3/3)
[ 戻る付箋 ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -