テニスの王子様 [DREAM] | ナノ

アイツ、裁判かけて死刑執行。




生意気な彼女 〜才能




殴っても殴っても気が済むはずがない。あれほど言うなって言ったのに…!
この年で同級生の甥っ子が居るとか絶対知られたくなかったってのもあるけどさ。
よりによって木手にバラすとかどうよ!自慢の毛引っこ抜いたとしてもまだ足りないわ!
「え…?」って顔した木手見るのも悪かないかもしれなかったけど、こっちはそれどころじゃない。
くそう、口止めするヤツがもう一人増えた。よりによってあの木手、か…

「おはようございます志月さん」

平古場くらいなら実力行使で口止めは出来てもあの木手じゃ力及ばず、よね。
武術に一番長けてるのは木手だって話は平古場だけじゃなく甲斐にも知念にも聞いたことあるし…
ましてやあだ名は「殺し屋」でしょ。死人に口なし、死して屍拾うものなし、そんな言葉が浮かぶ。

「無視、ですか?」

いざとなれば刺し違える覚悟でも構いはしない、って言いたいところだけど木手と死ぬ気はないし。
死ぬんだったらもう少し長く生きたいし、親より先には死にたくないし…って、そもそも兄貴が悪いんだよ!
何駆け落ちしときながら島出なかったんだって話。勘当されてるとか言いながら顔出してるし!
「あーおっきくなったなあ」じゃない!アンタの息子と同い年だし!

「……平古場くんのオバサン」
「誰がオバサンだ!!」
「おや、聞こえてましたか」
「……木手」

いつの間に湧いて出た。今、アンタを真っ二つにするかどうかを思案してたとこよ。
そう思いながら睨めば木手は特に気にした様子もなく私の顔を見てる。つーか不思議そうに見てる。
前にも言ったけど減るから見んな。減らせる肉もあるかもしれないけど減らす理由ないから見んな。

「似てなくもないんですねえ」
「は?」
「貴女と平古場くんですよ」
「似てないわよ!」

あーんな軽薄根性ナシと似てるとか有り得ないんだから!
確かに…遺伝子的に言うならば髪質だとか色素具合だとかは似てるらしいけど中身は別よ別!
顔だって似てるなんて言う人少ないのよ。親族くらいのもんだわ。全否定するけどね!

「完全に似てるとは言ってませんよ」
「言ってたらフルボッコにしてるわよ」
「……もっと似ていたなら、」

何よ。似てたら何だって言うのよ。

「いや、似てても一緒ですね」
「何がよ」
「中身が貴女だから触れたくなる」

すんなり伸びた手。私の横髪に触れて耳に掛けた。
笑いながら、随分手馴れた手つきで触れてそのまま頬に触れたもんだから、思いっきり後退りした。

「な…っ」
「たまには平古場くんも役立ちますね」
「な、何よ急に…」

くすりと不敵に笑う木手に、当然のように立つ鳥肌。

「君の弱み、最大限に利用させて頂きますよ?」



……登校後、
当然行くべき先は平古場の教室。甲斐がいようが知念がいようが知ったこっちゃない。

「ちょっ…待て!志月落ち着け!」
「落ち着けるか!止めんな甲斐!」
「何だばあ?凛は何したさ」
「木手に弱み握られた!お前の所為だぞ凛!」
「しょーがないさ!言わなきゃ殺されてたさ」
「なら代わりに私が殺してやる!離せ甲斐!」

あんだけ脅して、あれほどまでに口止めしたってのにコイツは…木手と私を秤に掛けて木手を取りやがって!
木手に殺される?殺されとけよ!まだ手加減があったかもしれないだろうが。私は、絶対手加減しない。

「つーか、昨日のでお前…っ」
「ああ?昨日ので足りるか!」

どっかの骨折ったわけでもなければ至って綺麗な顔をしたままの平古場のくせに!
足りるか足りないかで言えば全然足りないっつーの!その私にはない兄貴譲りの高い鼻折らせろ!
そんな野蛮なことを考えるも甲斐が私を押さえるわ平古場が知念の後ろに隠れるわで何も出来やしない。
手、手さえ離してくれたなら振り切って知念も押し退けてぶちのめしに行けるのに…何て握力だ。
そこまでして庇うようなヤツじゃないぞソレ。そう叫んでやろうかと思った時、不意に自分の重心が傾くのを感じた。
明らかに甲斐と力比べしてるから前に重心はあるのに後ろにって…貧血?血が上りすぎた、か?

「甲斐くん、彼女の手を離してくれませんか」
「……なら代わりに捕まえとけよ木手。ソレ暴れるから」
「はっ?」
「ええ。それにしても平古場くんにも才はあったようですね」
「な、何の」
「彼女を怒らせる才。お陰で彼女は無防備になる」
「……もー勘弁さ永四郎」
「え、何、後ろ、木手?」

手は、すぐに自由になった。けど、二の腕を押さえる手があるのに気付いた。
さっきの会話から振り返るには多少の勇気が必要で、腕に感じる手を振り払うにはどうも力不足で。
後ろのが居るお陰か、平古場が知念の後ろから出てきやがったけど、どう足掻いても私はヤツの方向へは向かえない。

「そろそろホームルームが始まりますので引き取っていきますね」
「おーもう永四郎にやるさ」
「平古場くんに言われずとも彼女は頂いてきますよ」
「え?ちょっ、私、まだ用が…っ」

物凄い力で腕を引かれ、間間にある机にぶつかりつつも力を入れて抵抗する。それでもやっぱり力不足らしい。
どんどん出口が近づいてく、あいつらは小さくなってく、思いっきし手を引くも余計に力を込められた。

「離してよ木手!」
「嫌です」

腕がジンジン痺れ始めた頃、私はもう教室から引き離されてそれでフッと力が抜けて諦めた。
それに気付いた木手も力を緩めはしたけど、腕を離すということはしないまま教室、自分の席まで歩いた。



御題配布元 taskmaster
選択式311〜410より 「才能」

2010.01.21.


(7/10)
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