テニスの王子様 [DREAM] | ナノ

Valentine

綺麗な手から出来る綺麗なデコレーション。神経質かつ几帳面なだけあってそれはもうアートだ。

「お店、開けちゃいそうだね。パティスリー観月、みたいな」
「.........どうでもいいですから片付けて下さい」
「へーい」

折角、皆ノリノリでチョコレートケーキを作ってるのに何で観月だけは冷静なんだろう。
クラスの女子なんて「よっしゃコレで買う手間省ける」とか「わざわざ家で作る手間も省けるわ授業も潰されるわで最高」とか言っちゃってるのに。因みに男子も...「これで今年はゼロじゃないって言えるぞ」とか言ってるのも聞いたんですが。

「ほんと、今、このクラスで浮いてないのは観月くらいだよ」
「訂正しますよ。僕と貴女くらいです」
「あー...確かに」

そういえば私も浮いてなかった。うん、ぶっちゃけ興味ない。
と、デコレーションする観月の横で私はガシャガシャと洗い物をする。水が相当冷たくてしんどい。
てか、そのケーキって私のなんだよね。とりあえず適当に犬か何かホワイトチョコで描いてたら「ヘタクソですね」と観月が言うもんだから「じゃよろしくー」と冗談で丸投げしたら意外と本気になってくれたとこ。

「嫌いなんだよね。チョコ。だから興味なくって」
「.........そんなの人にあげれば済む事では?」
「うん、それは一理ありだよ。でもさ、誰にやるんだよって話」
「好きな人にでも差し上げればいいでしょう?」

.........それもまたいないから浮足立たないってことくらい分かって頂きたい。

「まあ...そこはさておき。パティスリー観月がデコってくれてるから人にはあげれないよ」
「それはそれは。市販チョコを手渡す人に聞かせておやりなさい」
「.........随分と突っかかるなあ」
「僕も嫌いなんですよ。バレンタインなんて」
「ほほう」

意外...ではないな。思ったよりモテる人なんだけど後々面倒なのが好きじゃないもんで出来れば避けて通りたい、みたいな。
だったら受け取らなきゃいいじゃん、と思いはするけどやっぱ血の通った人間だから邪険にも出来ないわけで......うん、すっごい顔して受け取ったりするんだろうなあとか思う。勿論、コレは憶測に過ぎないんだけどさ。

「見ず知らずの女性からチョコを貰うのが好きじゃないでしょ」
「.........向こうは知ってるんだよ色々」
「学校中浮足立ってるのも気に入らない」
「.........たまにはイイと思うけど」
「最終的に"好きです"なんて..."僕は貴女なんて知らない"と言ってやりたいくらいです」
「それは酷いな!勉強しろよ繊細な乙女心!」

憶測を越えた兵だよ。考えとか色々酷過ぎるよ。でもまあ...何か観月らしいような気もするけど。

「その繊細な乙女心を持ち合わせていない女性が好きなので必要ないです」
「あー...なるほど、で、済むか!絶対勉強しといた方がいいよ!」
「では志月さんも勉強されたらいかがですか?」
「そこ転嫁なの!?」

確かに私は繊細な乙女心を現状では持ち合わせちゃないけど、今後勉強するかもしれない...かもしれない(するとは断言出来ない)けど、今スパーンと言われても困るよ。本気で返答に困るよ私。

「.........なかなか兵ですね」
「失礼な!ソレ観月に言われたくないよ!」

ガッシャガシャ道具に八つ当たりしてたら巡回していた先生に怒られた。
その間に観月はしれっと私の分のチョコレートケーキをわざわざ箱に入れて「パティスリー観月がデコってあげましたからご自分で食べるように」とだけ言って今度は自分の使った道具を片付け始めた。





の駆け引き

2013.02.14.
title by 超絶頭突き式新企画


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