テニスの王子様 [DREAM] | ナノ

プレッシャー
(短編シリーズ 幸村)

正直、こんなにガタガタしたことはなかったと思う。
心なしかお腹も痛いし、背骨も嫌がらせのように痛んでる気がする。心拍数は徐々に、そして過激にも上昇していくばかり。
こんな状況下に置かれている自分とは裏腹に他の人たちは余裕そうで...

(イカン...予想以上に弱気になってきた)

平均より少し上の成績、日々の素行、3年間での内申書は完璧だと思う。
だからこそ"此処"にいるわけで滑り止めなんかも用意していない。でも、教師も自分も見抜けなかったこの心の弱さは...コレは何?
ちょっと吐いちゃいたい気分。軽い人酔いちっくな目眩...

(保健室...行くべき?)

いやいや、緊張のあまりに保健室で試験受けましたーなんて、ちょっと嫌かも。いや、別にそれ自体が悪いとかじゃないけどさ。
でも、マンツーマンで教師に監視されるのも嫌すぎ。誰かが近場に居たりしたら、余計に集中力が切れちゃうわ。

ガタガタガタガタ、机に付いた手が震えているのが見たらすぐに分かる。
馬鹿みたいに緊張しちゃっている自分が情けなくて、だけど具合が悪くて......

「.........君、平気?」
「え?」
「随分、顔色が悪そうだけど...」

隣の席に座っていた男の子が参考書を片手にこちらを見ていた。
「あらやだ、綺麗な顔の男の子ね」とか、普段ならそう言えただろうけど...今は余裕ナシ。全然ナシ。
声も出ないし、ガチガチになった体の首だけしか動かすことが出来ない。
数回頷くだけの私に、見知らぬ彼はまだ心配そうな顔をしてる。

「保健室に連れて行こうか?」
「いえ...大丈夫、です」

緊張してるからこうなんです、なんて本当に格好悪くて言えない。
体はガチガチ、手はプルプルしちゃって...うん、心配されても仕方ないとは思うけど。
冷静に、冷静に...と思えば思うほどに増す心拍数は抑えられない。ついでに震えも止められない。

「もしかして極度の緊張状態からきてる、とか?」

何だろう...まだ言葉を続けますか?ちょっと本気でそれどころでなくなって来ているのに...

「実は、俺がそう」
「え?」
「今、誰かと話してないとダメみたい。迷惑だったらごめん」

私の手は今も震えている、だけど同じくらい彼の手も震えている。
ガタガタ。私は体全体的に。彼は足だけ。ぷるぷる。手は同じように震えていて......少し笑えた。

「ぷッ」
「あ、笑ったね」
「だって...ッ」

なんだ。皆、自分自身と戦っているんだ。
私だけじゃなくて皆も同じように戦っている。戦ってるんだ。

「ねえ、君の名前聞いてもいい?俺は――...」




合格発表の日、その子の姿は見つけられなかった。
だけど入学式の日、同じクラスの中で見つけられた彼の名前。

「幸村くん!」
「あ、志月さん」



――立海大付属中に入学おめでとう!


※2006年もの、幸村


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