テニスの王子様 [DREAM] | ナノ

プレッシャー
(短編シリーズ 幸村)

「同じクラス?」
「うん、同じクラス!」

彼女はあの日に見せた笑顔でそう言った。
付属の子じゃない、外部受験なんだってことはすぐに分かった。休憩時間になっても動かなくて誰かを捜してる様子もない。
たったそれだけのことで判断しちゃったけど後で聞いたらやっぱりそうだったから...声を掛けて良かったと思った。

「良かった。少なくとも知り合いがいて」
「不安だった?」
「うん。情けないけどまた震えちゃうとこだったよ」

そう、あの日の彼女はガチガチに震えてて...顔色は真っ白、唇は真っ青。
そんな彼女を見た瞬間はハラハラした。倒れないかな?とか吐きそうなのかな?とか。でも、周囲は彼女を気にも留めない。それどころじゃなくて。

「大袈裟だなあ」
「そうかな?自分でもこういう一面があったんだって驚いた」
「そうなんだ」

多分、あのまま声を掛けなかったら彼女どころか俺まで気になり過ぎて受験どころじゃなかった気がする。
ああいうのって連鎖するんだ。不安が不安を呼んで...みたいな。だから声を掛けた。

「うん。でも...本当に良かった。幸村くんに会えて」

最初こそ彼女は俺にまで拒絶反応を示したけど、笑ってくれた時は嬉しかった。
勿論、今こうして俺を見つけて声を掛けてくれたことも嬉しい。会えて良かったと言ってもらったことも。

「俺も君に会えて良かったよ」
「私、外部からなの。改めてよろしくね」
「うん。こちらこそよろしく」

差し伸べられた手。握手してみればすぐに分かる。

「また震えてる」
「お互い、ね」

きっと彼女は不安と緊張から震えてるんだろうと思う。でも、俺は少しだけ違う。
緊張と歓喜と...だって俺の方こそまた彼女に会いたいと思ったから、だからまた会えて嬉しいんだ。

「じゃあ一緒に教室行こうか」
「うん!あ、私、方向音痴だから道案内よろしくね」
「ええ?俺もこの校舎初めてなんだけどなあ」
「なら一緒に迷子だね!ばっちこーい!!」

ああ、やっぱりこういうのは連鎖する。
彼女の不安が少し和らいで楽しい気持ちがどんどん溢れて...俺まで笑ってしまう。

「こっちが本物なんだね」

プレッシャーを撥ね退けた本当の君が、桜の花びらのように舞っていた。


※2013年もの、幸村


(3/3)
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