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さやかと杏子

 ちゅ、ちゅ。何度も何度も触れるだけのそれを繰り返して、少ないボキャブラリーで誘って焦らして誘ってを交互に繰り出す。漸くして折れたと思ったら、やっぱり恥ずかしいって耳まで真っ赤なあんたが愛しくて。大丈夫よ、なんて気休めで騙して、赤を纏める髪留めを解く。持ち上げられていた髪がふわりと舞う。白い柔らかい肌色に映える赤がきれいでちょっと羨ましく思うときがある。
「おい、さやか」
「脱がすよ?」
「え、いや、話聞けよ」
「脱がすから」
水色のパーカーの下はほとんどが肌色で、たまにパーカーから覗く薄いお腹とか、おへそがかわいいんだけれど、同時に心配になる。例えば性欲をもて余した暴漢が杏子に………なんて、魔法少女になっちゃえば普通の人間なんて簡単に振り払えちゃうけどさ。暴漢だって同じ、子供と大人がケンカするみたいに呆気ない終わり。むしろ杏子はあたしが暴漢みたいだって、意味わかんない。こんなに可愛い子捕まえて何言ってるの。本当に失礼よね。
ゆっくりと杏子の身体をを包んでいたパーカーを取り払う、黒のインナーは咄嗟の杏子の二の腕ガードに阻まれ脱衣は失敗。ここで引き下がるあたしじゃない。インナーまでは取られまいと警戒する杏子の胸にガードを強行突破で潜り込む。ちゅ、と触れるだけの物足りないキスを杏子の頬に落とせたらあたしの勝ちは決まったも同然。あとはこの言葉を撃ち込むだけ。
「やめよっか?」
「うそ、え、さやか…!」
「杏子がそこまで嫌がるんだったら、あたしは無理強い出来ないし」
どこかの白い魔物みたいな台詞。難しい言葉なんて捻り出せる頭もないから、つい最近聞いた台詞を丸々拝借した。それに引っ掛かる杏子だってあたしと同レベルな脳みそしかないの。バカなあたしたちの騙し合いごっこ、今日はあたしが詐欺師役。
「いいよ」
「ん?なにが?」
「っんとに性格悪いな」
「お互い様だと思うけど?」
「ああもう!いいから、続き!」
くどい言い合いに痺れを切らした杏子があたしの唇に噛みつくように重ね合わせる。下手くそすぎて思わず苦い笑みを溢せば、何笑ってんだと杏子はふてくされて唇を尖らせる。あんたの唇は忙しいね。

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