兄さんズ卒業おめでとう





『実理くん、南くん、卒業おめでと〜!』

「………」

「………」

『あ、やり直すよ。コホン。…卒業、おめでとう。』

「………」

「………」

『え、今のいい声でもダメ?じゃあもう一度言います。卒業!おめでとうっ!ございまーす!』

「…やかぁしい!聞こえとるわボケ!」

『なんだー、だったらなんで無視するの?』


ちゃうねん、ちゃうちゃう!俺らがポカンとしてもうたのはそこやないねん!そらいきなり連絡もせんと卒業式になまえが会いに来てくれたこと自体驚きやねんけど、そうやなくて!お前の「おめでとう」の言い方に文句あるわけやなくて!


「…お前、今なんて言うた?」

『卒業、おめでとう?』

「ちゃうわ、その前や。」

『清田くんと付き合ってます。卒業おめでとう!』

「全く関係ない話繋げんな!繋げて誤魔化そうとすな!バレとるわ!」


そこやねん、問題は!何?!清田と付き合い始めた?そりゃめでたいわ〜、なんなん、赤飯でも炊きますか?…って、!


「おまっ、ようそんなサラッと流れで言うたな!」

『だってー、どうせ黙っててもバレるし。』

「開き直んな!つーか、お前…お前…!」


先程から青ざめた顔で固まる南はもうこの際どうでもええ。お前、鏡見たか?!ほんまに俺この場に清田がいたら犯罪者になっとったとこやわ……


『?…なに?』

「なに?やない!」


おまっ、首元にえらいデカい赤い印つけて、それもそれをそんなに見せびらかしてよう俺らに堂々と会いに来れたな!しまいには付き合い始めたって…


「抱かれてきました!言うとるようなもんやんけ!あほ!隠せ!」

『…え、こんなにあったかいのにマフラー?!』

「天然ボケもええ加減にせえ!!」


ワナワナと震える俺をよそにポカンとしたまま動かない南と暑いだのなんだの文句が止まらないなまえ。


あんの野生猿…次会うたらただじゃ済まへんからなぁ…!何がキスマークじゃ!引っ込んどれ!


『…ま、おめでとう言えて良かった。』

「ほんまにもう……何日居るん?すぐ帰る?」

『明日の夜帰る。今日実理くん家泊まるわ。』

「…なまえ、俺ん家にせえ。」


そしてこんなタイミングでハッと我に返った南がそんなことを言ってなまえを家に連れ込もうとするやん。もうその顔見たらわかるわ、完全に上から上書きしようとしとる。清田のもんや言うてんのに完全になまえに手ぇ出す気満々やんか…こんのどアホが!


「させるわけないやろ、南は引っ込んどれ。」

「…ラストチャンス、くれ。」

「あげるわけないわ、どアホ!頭冷やせ!」


なんやのこいつ…油断も隙もないやん!もうなまえ抱く気満々やん!やめてくれ、ほんまに悪趣味やわ。


「…なまえんとこの卒業式はもう終わったんか?」

『昨日終わったよ、今日は一日休みで明日は休みもらったの。彩子とリョータ達にお土産買わないと。』


…なんかコイツ、すげぇ幸せそうやん…


俺はふとそんなことを思った。なまえの笑顔があまりに可憐で綺麗で美しいからだ。元々よう笑う愉快な子やったけど…なんか、綺麗になったなぁなんて、なんだか悔しくて口にしたくはないけれど。


「…なまえ。」

『なに、実理くん。』

「清田のお土産は俺が選んだる。」

『えぇ〜?実理くんが?』


激辛のお菓子でもプレゼントしてやりたいところやけれど、幸せにしてくれてるのも確かやからな。うんまぁ、悪いやつやないっていうのはわかってるし、キスマークは腹立つけど…


これからもなまえのこの可愛い笑顔を守っていってもらえたらー……そういう男でいてくれたら……


「お前の兄として、贈りたいねん。清田に。」

『…従兄弟でしょ、何よ、兄って。』

「ええやんけ、兄貴ヅラさせろ。」


できることなら守ってやる、今もこれからも。それでも俺の役目はもう終わったらしいから潔く誰にも邪魔させんと清田とやらに引き継いでやるわ。しゃあないから。


「ほんで?付き合うてどれくらい経ったん?」

『一月も経ってないよ。』

「…ひと、つき…?」


…ちょお、待ち。ひとつき経ってへんっちゅーことは、やぞ。随分最近やんなぁ?最近やのに…最近やのに…


「…その、首の痕は…」


………早すぎ、ひん、?


『…何、実理くん怖い顔して。』

「お前らぁぁ、今時の若いもんは何考えとんのじゃぁぁ!」

『…は?』

「何を、何をっ、!何をしとんねん!さっさと別れろ!」


なぁにが引き継いで、や。アホぬかせ!こんな野蛮なやつに任せられるわけないやん、馬鹿タレが!ふざけんなよ、付き合うて数週間で今まで守り抜いてきた綺麗で綺麗で綺麗ななまえが汚された、やと…?


「おい、みなみぃ!黙ってへんとなんか言うたれ!」

「なまえ、俺の家に泊まれ!」

「…それはもう終わった話やろがぁぁ!」










卒業おめでとう!My Brothers!


(俺も神奈川帰るわ!清田に一言言うたる!)
(…なまえん家のなまえの部屋に泊めてくれ。)
(おんのれ南ぃ!この期に及んで抱こうとすな!)





よく考えてみればソッコウで抱かれたことになる…恐ろしや…まぁくっつくまでが長かったので挽回してるということで……!








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