学祭編







「お前らも来たのかよ。陵南の学園祭。」


正門を潜ったところで鉢合わせした翔陽と海南。続けて出た藤真の「気が合うなー」なんて言葉に牧は「仙道に誘われたんだ」と答えた。


国体は結局準優勝に終わり中々の好成績を収めた神奈川代表。選抜まで互いに闘志を燃やしているものの国体最終日に「国体が終わったら遊びに来てくださいねー」なんてヘラヘラッとした仙道の言葉につれられて牧は神と清田をつれてやって来たのだった。


「はぁ?俺誘われてねーし。」

「だったらなんで来たんだよお前らは...」

「いいか牧。そこに祭りがあるのなら参加するのが男なんだよ。」


意味不明な説得をしてくる藤真に後ろにいた花形が「俺は仙道に誘われたぞ」なんて言うもんだから藤真は途端に無表情に変わりその後は言わなくともお察しの通りだった。余計なこと言うなぁ、花形は........。牧はため息をついて歩みを進めた。


「.....あ!!仙道の妹!!なまえさん!!」


清田の大きな声に途端に反応したのは神で無言で指差した方向を見る。背の高い男子生徒と話し込んでいるなまえは紺色のワンピースに頭に赤い大きなリボンをつけて箒を片手に持っていた。どうやら魔女かなんかのコスプレらしく丈の短いワンピースから見える綺麗なほっそりとした脚に神はハッとして途端にドロドロと黒い感情が心を支配する。


「あれ....流川じゃないか?」


牧の声にその話し込んでいる男子生徒が流川だと疑い始める海南三人。後ろ姿でよく見えなかったもののパッと横を向いた瞬間その綺麗な整った顔は完全に国体を仲間として戦い抜いた流川楓であり清田は面白くなさそうに「なんで流川がー!」と叫び始めた。











「おい、イモウト。」

『......?あ、流川くんじゃん。ひとりで来たの?』

「...センパイたちとはぐれた。」


湘北の面々で来たものの女に囲まれた流川を舌打ちして放って先に行った三井や宮城。薄情な先輩のせいでひとりぼっちとなった流川はこの学園祭に行く目的でもあった人物に声をかけた。


『あぁーここでもまた女の子に囲まれてたんでしょ。湘北の流川くんですよね?ってさ。』


楽しそうに図星をつくなまえに「ハァ」とため息をつく流川であったが先ほどから全面に出されたその細い脚に眉を寄せて難しい顔をした。


なんだその格好は........どあほう.........。


口に出さずとも察しのいいなまえが「あれ?似合ってない?」なんて聞くものだから色々な意味で「うす」と答えた流川。そんな返答を聞いてそれでも楽しそうに笑って「あちゃー」なんて言うなまえ。ちっとも気にしていないその感じに瞬時に流川は自分は男だと思われていないのかもしれないと思い余計に眉を寄せた。


『流川くんは私のことさえライバルだと思ってるもんね。』


どうやらそうとらえられてしまったらしい。流川は「どあほう...」と呟くとなまえはクスクス笑って「よかったら遊びに来てねー」なんて言ってどこかへと行ってしまったのだった。













『いらっしゃいませー......あ、あれ?』

「よう。仙道とはクラスが違うのか?」


店番の時間になったなまえが「コスプレ喫茶」と書かれた教室で受付をしているとそこにやって来たのは牧神清田の三人であった。


『はい。彰くんは隣ですよ。来てくださってありがとうございます!』


牧にそう言い清田や神に視線を向けるなまえ。牧と比べて国体ではさほど絡みのなかった二人。清田が「ど、ども...」なんて挨拶をすれば隣で神は「こんにちは」と笑う。


『来てくれてありがとう。よかったらゆっくりしていってね。』


ニコッと微笑むそれがどことなく仙道と重なり不思議な感覚になる清田。神は淡々と案内するなまえについていき席に着いた途端「ここに座ってよ」と自分の隣の椅子を引いた。


「おい、神。なまえは仕事中じゃないのか?」

『あー.......平気ですよ。私でいいならお邪魔します。』


神の引いた椅子にゆっくり腰かけるなまえ。いつのまにか手にはたくさんのドリンクを持っていて座ると同時に男たちの前に置いた。いつのまに...と思った牧や清田をよそに神は「やっぱりすごい子だなぁ」と口角を上げた。






どのくらい話し込んだのだろうか。そろそろお邪魔するよと席を立ち、牧たち三人が廊下に出たところで「国体見ました!」と女子たちに囲まれて三人は揉みくちゃにされてしまったのだった。


普段兄がよくやられていて見慣れているなまえは「あーあ」と楽しそうに笑ってその様子を離れたところから見守っていた。写真を頼まれて満更でもなさそうな顔の清田がとても可愛くてなまえはクスクスと笑う。








さて、仕事に戻るか。

練習はよく兄とサボったり遅刻魔だったりするなまえだがクラスのみんなと共に協力することで成り立つこの学園祭は別であった。やる時はやるんだとクラスに戻ろうとした時、一瞬で誰かに腕を引っ張られ連れて行かれる。それはまるで風のようにほんの一瞬で。たどり着いたのは人気のない校舎裏。ようやく腕を解放され、さすがのなまえも少し慌てたようにその人物を確認する。











『....神くん?』

「...ごめんね、急に...」


ふぅ、と息を吐いた神がなまえに向き合ってそう呟く。二人で話したことなど数え切れるくらいにしかなかったためなまえはとっても不思議に思い「いいけどどうしたの?」なんて神に問う。


「二人になれたら言いたいと思ってたんだけど。」


神の言葉になまえは何を言われるのだろうと身構えた。何を隠そうこの神宗一郎という人物に好かれている気がしなかったなまえ。国体でも距離を感じずにいられなくて、自分に興味のない人相手に普段なら「どうしてだろう」なんて考えて必要ならばその距離を埋めるなまえではあったがなんとなく神相手にはそれは通用しない気がして触らぬ神に祟りなしなんてシャレにもならないことを考えそのままにしておいたのだった。


「...なまえちゃんのこと気になるんだよ。」

『.........えっと.........、』

「自分でもわかんないけど、すごく気になる。」


神はそう言うとなまえに問う。


「その理由がわかるまでそばにいてもいいかな。」


本当はそんなのとっくにわかっている。流川と二人でいたのを見た時もその惜しみなく出された細い脚を見た時も自分の心の中には常に黒いものがドロドロと溢れていたから。けれども神はあえてそう問うのだ。策略家だと言われるのかもしれない。けれどもそれは彼女には通用しないことを知っている。


『その理由がわかったら...もういいの?』

「いいや。.....わかってからも、隣にいたい。」


ほらね。彼女の前では策略家でもなんでもない。ただそのわかりきった駆け引きが面白くて、心の内を見透かされてるのがとても新鮮で、この子の掌の上で転がされたいなんて生まれて初めての感情を神はぶつけてみたのだった。


『神くんって...不思議な人だね。』


なまえは全てを理解してクスクスと笑った。「誤解していたかもしれない」なんて言いながら神を見ている。そんな言葉に神は心が満たされて「これからもっと知っていってくれたらいいよ」なんて返事をする。その時だった。











『.....おわっ、?』


神と向かい合っていたなまえは一瞬にしてバランスを崩し後ろに引っ張られる形で倒れ込む。驚いて顔をあげればそこには無愛想に神を見る流川がいてなまえは目を丸くして「どうしたの?」と問う。


『流川くん...?』

「...どあほうめ...」


チッと神に向けて舌打ちするとなまえの腕を取り歩き出す流川。それを追いかけた神が引き止めてなまえは二人から腕を引っ張られその場に立ち止まった。


『うっ....痛い...!』

「イモウトに手ぇ出すな」

「別に流川の妹じゃないでしょ。」

「チッ...」


燃え上がる二人の間に板挟みとなったなまえが「ちょっとー!」と声を上げた時どこからともなくフラフラとやってきた男がなまえを二人から引き裂き自分の背中へと隠す。


「....困るなぁ、俺の大事な妹にこんなことされたら。」

『彰くん...。』

「なまえちゃんに触らないでもらっていいかな?」


仙道はそう言うとにっこり二人に笑いかける。


「俺よりバスケの下手な奴はお断りなんだ。」


顔は笑っているのに全然笑えないそのセリフに真の敵はここにいたのだと神と流川は目を見開いたのだ。












兄の愛を侮るなかれ!


(で?1on1でもやる?それとも練習してからまた来る?)

((.....本気なのかよ.....))










ゆかりん様 (*^_^*)


遅くなってしまい申し訳ありませんでした( ;_; )仙道くんの双子の妹は描いたことがなくてどれが正解か悩み何度も描いては消してを繰り返していました( ;_; )すみませんでした( ;_; )!結局なんだかんだ妹大好きなんだろうなぁという所にたどり着いたのですが、どうなんだろう........(T_T)!

宗ちゃんは仙道くんと真反対で彼と妹を苦手だと思っていたらいいなと思いましたし流川くんはライバルの妹として特別な感情を持ったらいいなと思いこの二人をメインにさせてもらいました!しかし仙道くんの妹たる人が簡単に恋に落ちるとは考えづらくてほんの少しだけ神くん寄りって感じで終わりにしました( ;_; )思ってたのと違ったら本当にごめんなさい( ;_; )!いつもありがとうございます。日々の癒しになれるようこれからも努力を続けていきますのでまた遊びに来て下さいね(^o^)v!





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