国体編
陵南の美人マネージャーを見る度になんとなく既視感があって、どこかで見たような雰囲気だなぁ...なんて思ってはいたけれどその謎がたった今解けた。
「セ、センドーと双子.......」
『あれ?知らなかったんだね?』
花道の信じられない...といった呟きにヘラヘラッと笑って「そっくりでしょ?」なんて言うなまえちゃん。確かにこの既視感は完全にその通りだし仙道の双子の妹と言われ妙に納得したのは俺だけじゃないはずだ。
「なまえちゃんも東京から来たってこと?」
『そうだよ。宮城くんよく知ってるね。彰くんが神奈川行くって言うから楽しそうだなと思ってさー?』
俺の問いについてきて正解だったーと笑う楽しそうな表情があまりに可愛くてゴクッと息を飲めば隣からもまた同じような音が聞こえてきた。あ、三井さん。貴方も不意打ちにやられたんですね。
『おかげでみんなにも会えたしね。ねー桜木くん!』
「は、はいっ......!!」
慌てて返事をした花道の頭を「気持ちいいねー」なんて何度もなでるなまえちゃん。デレッデレな花道だけれどどこか緊張した面持ちは崩れなくていかになまえちゃんの美貌がすごいか思い知らされる。
「なまえちゃん、何してるの?」
『あれっ、彰くんお風呂入ったの?』
「今からやるから大丈夫だよー。」
どこからともなく現れた仙道の問いに質問で返しそして会話だけ聞けば「は?」となるのだけれど二人の中では成立しているらしくなまえちゃんは「風邪ひいてからじゃ遅いよー?」なんてやっぱり笑っている。
あ、なるほど。髪の毛乾かせってことだったのか。言葉がなくとも互いの考えを理解できるらしくその後も聞いてるだけでは意味不明なことも二人はそれが普通だと言わんばかりに以心伝心していた。すごいな、双子ってのは。
『湘北のみんな私と彰くんが双子だって知らなかったんだよ。』
「え、そうなのか...似てるからわかるかと思ってた。」
『私も。』
相変わらずヘラヘラと笑い合う二人に「オメーら笑った顔もそっくりで気持ち悪ぃなー」なんて割って入ってきたのは翔陽の藤真だった。
「見た目も中身もそっくりって嫌になんねーの?」
『便利ですよ。自分が二人いるみたい。』
いひひっと笑うなまえちゃんに「仙道女版」なんて呟いた藤真。仙道の女バージョンと言われてどんな反応をするのかと思いきやなまえちゃんは楽しそうに笑いながら「藤真さんの方がよっぽど女の子みたいですよ」なんてどういう意味なのか気になるセリフを吐く。
「...どういう意味?場合によってはシメる。」
『私よりも可愛いってことです。』
「...そのまんまじゃねぇかよお前...。」
だってー女やめたくなるくらいには藤真さん綺麗だもんーなんて間延びしたセリフにもはや怒りを通り越したらしい藤真はニコッと笑ってよくわからない感情でなまえちゃんの頭を撫でていた。
「なまえは本当に度胸があるな...あの藤真にそんなこと言えるなんて...」
恐ろしいといった顔で藤真となまえちゃんを見つめる海南の牧。隣の神は「仙道の妹ですからね」なんて言いながら呆れたように笑っている。
「神さんの苦手な仙道!」
「ノブ、声が大きいよ。」
「だってー!神さんと真逆じゃないっすかー!」
天才的な仙道と地道な努力を積み重ねてきた神。その違いを説明する清田の言葉に俺はなるほど...と勝手に納得した。どうやら神は仙道に対してどうも苦手意識があるらしくそれは妹のなまえちゃんに対しても同じであるようで.....。神はなまえちゃんに視線を向けると「仙道にそっくり」と呟いてどこかへ行ってしまった。
『三井さんの顎の傷、不良の時の名残ですか?』
なんだその質問は!と思い俺がハッと顔をあげればすでになまえちゃんは俺ら湘北の輪の中に戻ってきていて三井さんの顎を至近距離でまじまじと見つめていた。あーあ...またそんなことしてるし...三井さんはそりゃもう顔は真っ赤でゆでだこ状態。無理もねーけど。
「....ま、まぁそうだよ、なんだよ...悪いか...」
『とってもいいと思います!』
「........は?」
喧嘩が強い人とか守ってくれそうで...と柔らかい笑顔で言うなまえちゃんに一瞬怯んだ三井さんが途端に「そ、そうかよ」なんて照れ臭そうに呟く。
はぁ?!そうかよじゃねーし!!アンタなんかただ不良ぶってたってだけのスポーツマンにも不良にもなりきれねーチンピラだったじゃねーか!!人相の悪さからは喧嘩強そうに見えるけどちっとも強かねーし....!
つーかなんで俺が必死になってこんなこと...でもこのまま三井さんがいいように勘違いされたままじゃ面白くねーしな、なんて葛藤していれば既に隣で花道が「そりゃ誤解っすよ」なんて笑っていた。でかしたぞ、花道。
「ミッチーは相手になんねーくらい弱いっすよ、元が男女っすから!」
「んだと桜木!!」
『へぇ〜そうなんだぁ〜!見た目強そうなのに...』
クククっと笑うなまえちゃんに三井さんは違う意味で顔を真っ赤にして爆発しそうになっていた。花道に対して暴力的に八つ当たりしに行ってたし。んなことしたらまた大好きな安西先生が悲しむぜ、学習しねーなぁ、ほんっとに。
『まぁでも、三井さんは今が似合ってますよ。』
バスケットマンって感じがね、なんて笑ってふらふらっとどこかへ行ってしまうなまえちゃん。取り残された三井さんは花道にどついてる途中でピタッと固まってやっぱり真っ赤に顔を染めていたのだった。
「......よかったっすね、センパイ。」
それを静かに見守っていた流川が三井さんの肩に手を置いてそう呟けばハッと我に帰った三井さんが「うるせーなーー!!」なんて再び暴れ始めた。
女版仙道に気を付けろ!!(油断してっとやられるわ...)
(三井さん、何ボソボソ呟いてんの?)
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