03





「なまえちゃん、そういえば言い忘れてた。タピオカ、美味しかったよ。」


神さんのセリフになまえは両手を頬に当てて照れながら「よかった...」なんて安心したように呟いた。


『お口に合いましたか...よかった......買いに来てくれてありがとうございました!』

「いやいや、本当にごめんね。せっかく俺のクラスまで来てくれたのに、接客出来なくて.......」


海南祭から数日、ある日の昼休み。屋上でなまえと飯を食っていたら「見つけた」とやって来た神さん。慌てて身なりを整えるなまえをよそに神さんはプリント片手に俺に用があるんだと言った。それは部活関係のことであったが話が終わると「そういえば」と思い出したようになまえに話しかけるではないか。


聞くところによると、あの後なまえは神さんのクラスに行ったらしいけれどあの行列のせいで神さんが店番の間にカフェにたどり着けなかったらしい。なまえが店内に案内された頃には神さんの姿はなく、結局後夜祭の少し前に神さんがなまえの為に特別にエプロンをつけてくれたらしい。なんだそれ、意味不明もいいとこだ。


しかも目の前で自分の為だけにエプロンをつけてくれた神さんが「どう?」となまえに問えば「世の中の何よりも美しいです」と答えたらしい。マジで必死すぎて引くわ。自分の彼女だけれど。


『いえいえ!とっても美しいエプロン姿、ありがとうございました...!接客されるより幸せでした...!』

「あんなのでよかったらいつでも見せるよ。」


パチッとウインクして「またね」と屋上を出ていく神さん。あまりのスマートさにいくら大先輩でも少しだけイラッとして...。なまえを見やれば安定の目がハート状態で「撃ち抜かれた...」なんて呟いている。ったく....!!!!


「おい、帰ってこい。」

『痛っ.....!』


無理矢理頬っぺたを引っ張れば途端に顔が歪み「何すんのー!」なんて怒るなまえ。ったく...そういうとこだけは可愛くねーな!神さん神さんって!!

つーか結局、あの後カフェ並んだらしいしエプロン姿だって拝んだんじゃねーか...あん時の幸せだった俺がかわいそうだろ...。ま、でもなまえが俺を優先したことにかわりはねーもんな...やべ、俺愛されてる?やばい、あん時の幸せが蘇って...


『神さんはちゃんとタピオカ入りで買ってくれたんだよ。誰かと違って。』


.......こない。蘇ってこねーわ!!なんだよ、だってあのモチモチッとしたのが苦手なんだよ。仕方ねーだろ。でもなまえが売るっていうんなら買う以外選択肢ねーし。


「悪かったな!つーか神さん買いに来たのかよ...」

『うん。店番して一発目のお客さん、神さん。』

「は?」


なに?!店員モードのなまえの初客が神さんだと...?!なんだそれは...!しかもオススメした抹茶タピオカを「なまえちゃんのオススメならそれにする」って買ってくれただって?!


「どこまで完璧なんだ...隙がねえな...」

『それが神さんなの。ふふっ......』


にやにやし始めるなまえに軽く舌打ちすれば途端に怪訝そうな顔に変わり「なによー」とぷんすか怒ってくる。


「...ったく、なまえの馬鹿め。」

『何!何でよ!もー!』


俺に向かって口をへの字にして「文句あります!」的な顔をするなまえがどうにもこうにも可愛くて誰もいないのをいいことにキスを落とせばビックリしたような顔で固まるなまえ。


『.....、一応学校だよ.....!』

「だから何。可愛いなまえが悪い。」


俺の言葉にふいっと顔を逸らすなまえ。耳が少しだけ赤くなっていて照れているのがわかる。マジでこういうとこずるいよな......神さん神さん言うくせに、俺のこと眼中にないそぶり見せるくせに、ちゃんと俺の気持ちには答えてくれるもんな.......


ああぁぁぁ!可愛い........!!!!


「こっち見ろよ。」

『い、嫌っ......。見たもん、信長のこと、見たもん。』

「は?」


見た?何の話だとなまえの顔を覗き込む俺と目が合うと「見たんだよ」と照れながらも怒るなまえ。


『私がちゃんと言ったのに。デレデレしないで接客してって。』

「.....学祭の時?」

『そうだよ、なのに........』


なまえは真っ直ぐ前を見たまま頬っぺたを膨らませた。


『...あの後、信長ずっとニヤニヤしてた。』


えっ........と俺がなまえを凝視すれば真っ直ぐ前を見て視線を合わせないまま「見てたから誤魔化せないよ」と言うなまえ。


.......これは、その.......嫉妬したってことで、合ってるよな.......?


いやいや待って、待とう。待ってくれ。


可愛くて俺どうにかなりそうなんだけど.......。つーかそれ絶対なまえのせいだよ。俺あの後確かにずっとにやけてたよ?でもそれはなまえがあんなこと言い逃げするからであって...思い出してはニヤニヤしてたけどさ...たまたま客も女の子ばっかだったけどさ...


「...マジでどうしてくれんの。」

『えっ?何が?私怒ってるんだよ?』

「俺のことどうしたいんだよ、なまえは....。」


馬鹿。本当に本当に馬鹿め。このおバカ!!


可愛くてたまんなくって、俺もう頭爆発する寸前なんだけど.....!!


『どうって........、私だけ見てればいいの!』

「....それお前が言うのか....。」












可愛いが度を越して収拾がつきません


(なまえって嫉妬するタイプだった?)
(わかんないけど...女の子と話してる信長見たらモヤモヤしたの。)
(...俺今までなまえの前でなまえ以外の女子と話したことなかったんだな...なんていい彼氏なんだ...)










Modoru Susumu
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